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おもしろ新書①ー『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

はじめに

新書は、いい。色々な方面の専門家が、一般の人向けに、専門的な内容を分かりやすく説明しているからだ。最近では、時折胡散臭い新書もあるけれど、総じて情報の確度は悪くないと思う。
というわけで、最近面白かったと感じた新書の感想を書いていきたい。

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

この新書は、文芸評論家の三宅香帆さんによって書かれている。そして、新書らしく、題名がそのまま本のテーマとなっており、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」ということを明らかにする本である。簡単にその答えをまとめるなら、読書とは自分にとっての「ノイズ」を取り入れることであり、現代人は働きすぎなので、その「ノイズ」を取り入れる余裕がなくなっているからだと言えるだろう。そして、三宅さんは、その対策として、働きすぎない「半身」の生き方を提案する。
ここで面白いのは、たんに働きすぎで時間がないから本が読めないとするのではなく、働きすぎで心の余裕がなくなっていることに着目する点である。ここは、私もとても共感できた。家に帰って、スマホをいじることは出来ても、本を読むことは出来ないことについて、時間の観点から説明することは難しいからだ。本書では、このことについて、映画「花束みたいな恋をした」を素材として述べられるが、私はこの映画を見ていなかったので、今度見てみたいと思う。有村架純可愛いし。

面白かったところ1ー答える方法のユニークさ

この新書の面白さは、その答えにもあるのだけれど、答える方法のユニークさにも、私は惹かれた。どういうことかというと、「読書史」と「労働史」の観点から、この本は「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という問いに答えているのである。率直に言って、「そうきたか」とワクワクしながら読み進めることが出来た。私は、歴史的手法の専門家ではないので、分析がどれくらいクリアなのかは分からないけれど、素人の私にとっては十分興味深く読むことが出来た。その分析からは、三宅さんの豊富な読書量も垣間見ることができて、流石だと感じた。

面白かったところ2ー読みやすさへの配慮

なかなか現状では、本が読みづらいという事情を踏まえて、この本は読者が読みやすいように配慮されていると感じたところも、素晴らしいと感じた部分である。1章の長さがコンパクトにまとめられていたり、三宅さんのジョーク的な部分があいだ間に挟まってくるのが、いい。確かに、これは、売れる本だと思った。

おわりに

多分この本は、三宅さんの本丸の仕事から少しズレた本だと思うので、今度は『娘が母を殺すには?』あたりをがっつり、読ませてもらいたいと感じた。最後まで、読んでくださり、ありがとうございました。


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