10.エレキギター購入。



ラジオ番組SCHOOL OF LOCK!でロックに目覚めた岡本少年であったが、
中学2年生の時、新たな出会いが訪れる。



小学5年生位から母親の勧めで、一駅隣にある武蔵境駅の塾に通っていた。
一駅隣ということもあり、あまり地元の子はおらず、隣の市の子どもたちが多く通っていた。
そんな中でも、人見知りの僕は"時間"というどうにも割り切れない方法で友達を少しずつ作り、中学2年生の頃には塾内でベテランの域にまで達していた。(昔からいるけど、いつからいるんだろうみたいな人。)

(ゲストハウスに泊まった時に、私物の多さや、常駐の管理人さんとのやりとり、あれ?いつからここ住んでます?みたいな雰囲気の醸し出し方がえげつない人みたいな感じ。)


そんな"安定"が漂っている雰囲気の中、
ある日、彼女がやってきた。
学校のクラスとは違うため、特に自己紹介といったイベントはなく、
ずーっと誰の知り合いだ?と言ったような探り合いが行われる授業が終わり、その時はきた。


塾の帰り道、同じ方向の数人で自然とバラバラに別れて帰路に着くのだが、
3人で自転車を走らせる中にその子がいた。
授業中は体験ということで講師から指されることはなかったようで、名前は分からなかった。

そこで初めて彼女の名前を聞いた。
彼女はK(ここでは仮に)と言った。

Kさんはミディアムヘアーが似合う可愛らしい子で、少しだけ掠れた声から出る話題はどれも僕の興味があるもので、すぐに心を奪われた。
ほぼほぼ一目惚れであったように思う。


そんなKさんが唐突に言った。
「岡本くんと小学生2年生くらいの時に、市民大会で試合して負けたことあるんだよ?覚えてる?」

…んなこと覚えてるわけがない。
が、しかしそれを覚えていた彼女にグッと気持ちが引き寄せられた記憶がある。

バキバキの童貞であった僕は、わかりやすく
「この子、俺のこと好きなんじゃ。。。」と思った。

いや、この展開好きになるやろ。


そんなこんなで昔の思い出話を話していると、不意に音楽が好きだという話になった。
しかも音楽の中でもロック、当時でいう"ゴーイングステディ"や"オナニーマシーン"と言った少しばかりネーミングから過激なバンドであった。

こういうのもあるんだよ!と、
彼女がカバンから出してくれたのは"ストリートロックファイル"という、毎月刊行されるCD付きの、かなりアングラなバンドを紹介した雑誌であった。

うわー。。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONやBUMP OF CHICKENで先取りしていた気持ちになっていた僕はぬるかった。

その雑誌には激しいライブの写真や激しいバンドの音源やらを知れる雑誌であり、ロックに片足いや、右足の小指を突っ込んだばかりの僕には刺激的な世界であった。


その時点で少し惚れていた僕は特に断ることもできず、ありがとう!と、その雑誌を受けとり帰路に着いたのであった。

(今となってはびっくりするのだが、
当時インディーズの一枚目のアルバムを出したばかりのRADWIMPSのアルバムも、その頃に彼女から借りた記憶がある。)



そんなことはさておき月日は少し流れ、彼女と僕との間でこれといった進展もなく半年が過ぎ去って行ったころだろう、
彼女の親戚が、誰もが知っている"国民的バンド"のベーシストだったということが判明した。

そういえば苗字一緒だ。。。

気づいた頃には気づいた頃には時すでに遅く、

わたし、ベースやってみたいんだよね。

そんな話をされていた。


そして、そんな言葉に僕は
「じゃあギターやるよ!」

思うより早くそう言っていた。


びっくらこいた。




当時、バンドに何人必要だとか、どのパートがいるだとかそんなことは全く考えていなかった。
とにかくASIAN KUNG-FU GENERATIONのゴッチ(後藤さん)みたいに歌って弾いて、ステージに立ってみたかった。


それと同時に、彼女の気を惹きたいという気持ちがあった。


そうして僕はエレキギターを買う決意をしたのであった。





エレキギターを買う決意をしたものの、何を買っていいか、値段がどのくらいするか全く分からず、
とりあえずネットで"エレキギター 安い"で検索したと思う。


そうして出てきたのは、"サクラ楽器"のオリジナルブランド"SELDER"であった。
(貶める意味はないのでそのまま名前を出します。)


調べてみると今でもある。

そんなサクラ楽器のギターを見てみると、
ほぉほぉ、1万5000円くらいで色々付いているセットが買えるのか。


なになに、初心者にはレスポールよりストラトキャスタータイプがおすすめ?


初心者には3万円くらいのギターを薦めているが、当社のギターは1万5千円で買える!?!?

なんとピックガード部分が鏡仕様になっている!?

などなど、惹かれる要素が多く、
親に土下座をし、お小遣い一年分、そして剣道の大会で上位入賞をすることを約束して親からお金を借りて初心者セットを購入したのであった。



これが、岡本啓太のエレキギターの第一号であった!!


(当時のギターは誰かに貸したままどこかに行ってしまった為、写真はありません。。)



そんなエレキギターを手にした岡本少年は何をするかというと、
①作詞作曲
②コピー

の二択であった。

①に関してはまた、後日記載しよう。


②に関してであるが、、、


皆さん、ゲインという、エレキギターになくてはならない音の要素を知っているだろうか?

通常エレキギターというのは、gainというアンプのつまみを使って音を"歪ませる"必要がある。

簡単に言うと、gainとはアコギみたいな"ペンペン"した音を、
"ジャジャーン"や"ギュイーン"と言う音に変換させる要素である。つまり、ロックンロールに最も必要な要素であったといえる。


そんなこともつゆ知らず、
アンプやら教則本やらを手に入れた岡本少年は、
まずは好きな曲、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの"未来の破片"という曲のイントロを弾こうと試みる。


初心者ギターリストはまずはTAB譜という、ギターの指板上のどこを押さえたらいいか分かる楽譜がありそれを見て練習するのであるが、
TAB譜に指された音を指で押さえているのに全く同じ音が鳴らない。


ちゃんと押さえてるはずなのに。

何度弾いても、
ペンぺぺぺぺん、ぺんぺぺんぺぺん!

と言う音が四畳半の子供部屋になり響く。

んー?

おかしい。

TAB譜が間違っているのか?


CDを聴くとやはり、
"ジャージャジャジャジャジャ、ジャージャジジャージジャ!!!!!"
とかっこよく鳴っている!!


んー、、、、、??





あれだ、無理だ。

俺にはこの音は出せん。

そう感じた。


そう、プロと素人との差だ。



やはり弾き方が桁違いなのであって、私が軽はずみに目指していいものではなかったのだ。




そうしてとうとうエレキギターを購入して、初心者セットを揃えた僕は、
ギター初日にして挫折したのであった…。

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