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レンズの浪漫


レンズ評価の表現


 レンズを評価するときにヌケが良いとか深みがある繊細だなどという表現をよく使う。


 実はこれは一般的でないことが最近わかった。


 キレがあってやコントラストが強いという方がわかりやすいのかも。しかし、そのわかりやすい表現はときにはその魅力を伝えきれていないことがある。


 例えばキレがあると繊細さは別。キレがあるはレンズが作る線が太くはっきり見えているだけということがある。

 コントラストが強いというのも色が綺麗になって良いが、強すぎると階調の再現力が落ちる。


 ちょっと表現はよくないがお安レンズはちょっと線を太くしてコントラストを強めて見た目の派手さでごまかしていることがある。このコントラストの問題はいろいろややこしくて、モノクロとカラーでもその相性は違うし好みの問題もある。




 ちなみにヌケレンズを作る素材でほとんど決まる。そして、お高い素材を使っている方が基本的にはヌケが良いので高級レンズはヌケが良い。


ヌケの良し悪し


 ヌケの良し悪しは実はとても簡単に見た目でわかる。レンズのフロントキャップとリアキャップを外してその中を覗いたときに綺麗にレンズを通った先の光が見えればヌケが良いということになる。


 ヌケの良いレンズになると使っているレンズの枚数は関係ない。せっかくいい素材を使っているのにあまり良くない素材と合わせても意味がないのがその理由。

 その印象は水の透明度と同じ感じ。水の透明度が高い場所はまるで水がないような感じでその底や中のものが見えると感じることがあるが、それと同じ。

 ヌケが良ければそれだけ美しい光をセンサーまで届けてくれることになる。だからと言って収差が全てなくなるわけではない。


深みと繊細さ


 深みというのは暗部の階調の豊かさで、モノクロでいえば黒の中の黒という表現があっている。これは最後まで潰れずに黒が深くなっていくことを表現している。とはいえ最後は黒が締まってくれないと具合はよくなく、これもかなりマニアックで個人の思考が影響するポイントだと思う。

 繊細さとは細かいものを分離する力なので、キレや強さとは少し違う。


ヌケと深みと繊細さはセット


 そして、ヌケと深みと繊細さというのはセットになっていることが多い。それは綺麗な光が届いていることがこの3つに必要だからで、基本的にこの三拍子が揃っているレンズはちょっとお高い。


レンズ作りはバランス


 どちらにせよ。レンズ作りはバランスが大事で、最終的には設計者の方のさじ加減でレンズの個性は変わる。今のレンズはコンピューターシミュレーションでそのバランスを膨大な計算ではじきだしている。そして、コストとのバランスも計算できるので、無難な良いレンズが作れる。これはちょっと言い過ぎかも(笑)

 ちなみにある設計者の方に言わせると昔はできなかったことがコンピュターシミュレーションのおかげで可能になったそうだ。オレはこの話には浪漫より現実を感じた。


夢が浪漫


 今時のデジタル用のレンズはそんな数値的な絶対値の性能は確かに良いが昔のレンズの方が個性があった。それは計算できる範囲が限られていたので、最後は設計者の方が想像力を使ってバランスをとっていたから。さらに素材に対する要求も高かったように思う。それは設計者の方の夢がつまっていたから。だからこそ浪漫を感じた。ちなみにそんなことを知ったのはデジタルになってから。

 デジタル世代のレンズでも浪漫を持ったレンズは少なからずある。

 で、いいレンズを使えばみんな同じく良い写真が撮れるかといえばこれもまた別の話になる。ここが悔しいところ(笑)そもそもいいレンズ?や良い写真って?その話も長くなるのでまたいつか。

 レンズの使い方もそれぞれだし、その持ち味のどこを伸ばしていくかは撮影者の使い方次第。結局は知識ではなくその人の経験が試されることになる。それも浪漫かな(笑)。


作例 (調整なし)


Otus 1.4/55 + EOS 5D Mark Ⅲ

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 このレンズは誰がなんと言っても最高峰。使われているのが特殊ガラスのオンパレードでお値段も破格。ヌケと深みと繊細さも見事なバランスで、特にこのレンズの深みはどこまでも深い。ちょっと癖を感じるフォーカスになれるのに苦労させらて、さらにマニュアルフォーカスという修行レンズ。


SIGMA Art50mm F1.4 DG HSM + EOS 5D Mark Ⅲ

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 修行レンズの辛さに耐えかねて追加したレンズ。さすがは Art シリーズ と感心する前にあまりの切れ味に度肝を抜かれ、改めてオートフォーカスは便利だと感じた(笑)ちなみに切れ味が鋭すぎてデジタル処理のジオラマを使っているような錯覚に陥ったがカメラのシャープネスを落とせばいい感じになる。


HD PENTAX-D FA☆50mmF1.4 SDM AW + PENTAX K-1 Mark Ⅱ

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 発売前の写真を見て、そのボケの美しさに惚れて使う前に注文してしまったレンズ。いざ使ってみるとその優しい描写に納得しながらカラーがあっているかもと感じている。さらにピント面の繊細さは超一級品で、このレンズを使って初めてAFの光束の意味と大切さを知った。F2.8光束対応の測距点以外はNGというのが佐々木啓太個人の結論。



 また、次回。

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