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Keita's talk その218 HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited というレンズ


 このレンズに出会わなければ、ペンタックスユーザーになるのはもっと遅かったかもしれない。ボクは、このレンズにLimitedの味わいを教えてもらった。

 ちなみに、Limitedレンズとは計測器の数値的な評価だけでなく、写真としてプリントをみたときの官能評価を意識して作られているレンズ。フィルム時代の3本のFAレンズに始まり、デジタル専用のDAレンズでもその思想が引き継がれているというちょっと面白いレンズ。

 デジタル専用レンズは基本的に計測器の数値評価が優先される傾向にある。これはカメラの撮像素子が計測器と同じようなもので、官能評価で捉える味わいが数値的にはマイナス要因になりやすいから。

 このレンズはAPS-C用なので、35mm換算50mm相当の画角のマクロレンズ。と、言ってもただのマクロレンズではない。というより、マクロというよりはしっかり寄れる標準レンズと言った方が正しい。実際にメーカーの元商品開発の方もそのような話をされていて、ボケ味が優しいのが特徴的。

 マクロレンズは接写を目的に作られていて、このレンズも等倍までの接写ができる。細かい文字を接写した時に収差が出ないようにするのが正式なマクロレンズなのだそうだ(そんな話もメーカーの元開発担当の方に教わった)。


 そして、正式なマクロレンズは接写した時に細かいものをシャープに捉えるためにボケが硬いレンズが多い。


 このレンズはその近接撮影時の収差が多少残ってもボケ味が柔らかくなるように設計されている。そして、それはレンズ表記の「Macro」に表れている。ちなみにペンタックスの正式なマクロレンズは大文字の「MACRO」になる。

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ちょっと寄れると気になるものをアップにしやすい

 50mmの画角は35mmのフィルム時代によく使っていたが、変化をつけるために被写体にもう一歩近づきたいと感じることが多かった。35mmフィルム時代は接写リングを使って、ちょっと寄りたいジレンマを解決していたが、接写リングはピントの合う範囲が限られるので、ベストな解決策ではなかった。それならマクロレンズを使えば良いが、それは先に話したようにボケが硬いので気に入らなかった。


 ボクの街角写真の基本はボケ。ボケを使って自分の気になったものを目立たせたり、立体感を出している。そのボケが硬いと残念な気分になる。


 このレンズのボケ味は、前回紹介した Otus や 慣れている DIGITAL ZUIKOレンズとも違う優しさを感じた。トーンも全体的に優しいのも改めて新鮮だった。

 今回の写真は最新の KP で撮影。このレンズを初めて使ったのは K-S2 で、そのときの方が柔らかさを感じたが、Limited 本来の繊細さを見るためにはちょっと力不足だったのを KP になってから知った。

 カメラの画質が進化すると官能評価の奥深さも知ることができる。計測器の絶対評価では得られない人間の感性が作る世界がここにはある。

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ハイライトが入るような条件でもボケが柔らかく、トーンの再現力も高い。繊細さはカメラの進化がLimited本来の力を引き出した結果

 こんなシーンは KP でなければ撮らない。官能評価の難しさは撮影条件によってはマイナス要因が出やすいこと。そのマイナス要因をどう使うかもレンズを楽しむポイント。みんなが同じ評価で使っていたらレンズは面白くない。

 官能評価のレンズを使う時にもう一つ大切なのはできるだけファインダーを使うこと。それもちょっといい感じの光学ファインダーを使うとこのレンズを作った皆さんの思いと自分の気持ちがリンクするように感じられる。

 ちなみに、いい感じのファインダーは人によって好みが分かれると思うが、ボクの絶対条件は視野率が約100%であること、さらに明るいだけでなくピントの山や光の濃淡がわかるファインダーが好み。そんなファインダーを最上位機種だけでなくミドルクラスにも使ってくれるペンタックスはありがたい。

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絞り開放から意外とシャープ(笑)

 このレンズの開放F値は F2.8。これは個人的にはちょっと残念なポイント。本当は F2.5 まで開けたいのが本音。この絞り1/3 段の違いは結構大きい。もっと細かく言えば、 F2.5 で使うレンズは開放F値がもう少し明るくて、2/3 段 から 1 段 絞った状態で使うのがベスト。これがレンズ的には結構いい感じになるので、開放F値 F2.8 のレンズを F2.8 で使うのは初めのうちは少し抵抗があった。使ってみると上の写真のように開放F値から切れ味がありバランスが良いのが分かった。

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絞り開放 F2.8、少し離れた細かい枝にピントを合わせたが、繊細に再現された

 上の写真のように少し離れた被写体で細かい部分にピントを合わせると絞りを少し絞り込んでおかないと繊細さを再現しづらいが、この組み合わせならそんな心配はない。ちなみにピントは AF をつかっている。本当は MF を使いたいところだが、さすがにこの歳になると拡大がない光学ファインダーでの微妙な追い込みが辛くなる(笑)

 ちなみに DA Limitedレンズは AF を使っていても、AF でのピント合焦後にマニュアルでのピント合わせが切り替え操作なしでできる「Quick-Shift Focus System(クイックシフト・フォーカス・システム)」を採用しているので、微調整はしやすい。

 AF でピントをしっかり合わせるコツは「2度合わせ」。AF を使ってピントを合わせたら、そのままの状態でもう一度同じ場所に AF でピントを合わせ直すとピントがシビアになりやすい。これは、AF が大きな範囲で動くより狭い範囲で動いた方がより正確になるのを利用した方法。

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絞りを開けてモノクロにしてジワっとボケていく感じになるのが街角写真には大切

 上の写真のようなジワっとボケていく感じは標準域の単焦点レンズの特権。これにハマるとなかなか抜けられない。そのボケに味わいがプラスされているのが、Limited レンズらしさ。

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F4 最後はおまけのマクロ撮影

 実はマクロは最も苦手な分野。これまでマクロレンズは買っても数えるほどしか使っていない。マクロ域で撮影するときは少し絞った方がピント位置の存在感が強くなる。と、いうぐらいしか書けない。あのじっくり探していくアプローチだけはどうしても克服できない(笑)

 結局は自前のレンズ自慢?そうそうそんなもんですね。


 また、次回


カメラ:KP レンズ:HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited
オリジナル Keita's talk その218 HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited というレンズ 2017年6月15日

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