16「孤独な職業人」

 長編小説の大きな直しを、ようやく終えた。執筆と直しに三年かけた。書き始めた頃は、売れない小説家として東京郊外に買ったマンションで一人くすぶっていて、芥川賞等大きな文学賞の受賞や映像化等には期待しない前提の作品にしようと思いとりくんだ。だからエンターテインメント要素も含んだ長編小説という、純文学文芸誌の編集者が戸惑うような変な作品となり、僕と編集部による直しについての議論は何度も繰り返された。

ここから先は

1,158字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?