見出し画像

中小企業について、一言で言えますか?~中小企業診断士試験-中小企業経営・中小企業政策-~

このnoteでは中小企業診断士試験の学習法についてお伝えします。

中小企業経営・中小企業政策(以降中小と略させてもらいます)についてお話させてもらいます。
この科目、だいたいどこの受験校や参考書でも7科目目に位置されており、一般的に言われている対策として「本試験一か月前に詰め込み暗記でなんとかなる!」っていうことをよく聞きます。
皆さんも財務会計や経済、運営など他の6科目に手いっぱいで中小にあまり労力をかけることが出来ていないのではないでしょうか?
もしかしたら今年受験される方でまだ中小の学習一度もしていないなんて人いるかも??

…という感じでおざなりになりがちな中小ですが、以外に合格率低いのって皆さん知ってますか?

中小の科目合格率はだいたい10~15%くらいとなり、他の科目と比較しても下から数えた方が早いくらいです。そう、決して簡単ではない科目ということをお忘れなく!
中小に苦手意識を持たれている人の多くが「沢山暗記が必要」ということを壁に感じているようです。
しかし、この科目、わたしの周りにいる合格した人に聞くと必ずしも苦手意識を持つ人が多いわけでもなく、むしろ「あまり勉強しなくても高得点とれた」という人も少なくありませんでした。


苦手な人はとことん苦手、得意な人は難なく合格、

この違いはなんでしょうか?

私の勝手な仮説を前提にこれ以降お話させていただきますが、


中小が得意な人は好奇心旺盛なのでは?


中小の問題って、経済センサスからの統計学情報や中小企業向け支援施策とかを、暗記しないとどうしようもない問題ばかりに思えちゃいますよね。
だけど人によって同じ問題でも受け止め方に違いがあるかもしれません。
例えばこの2つの過去問題


H28年第12問設問2
経済産業省「工業統計」に基づき、従業者数で見た産 業構成比(製造業中分類)の変化を1986 年と2012 年の時点で比較した場合の記述として、最も不適切なものはどれか。なお、ここでは従業者数名以上の事業所を対象としている。
ア 一般機械の構成割合は増加している。
イ 食料品の構成割合は増加している。
ウ 繊維の構成割合は減少している。
エ 電気機械器具の構成割合は減少している。
オ 輸送用機械の構成割合は減少している。


H29年第1問設問1
総務省「2009 年、2014 年経済センサス 安 基礎調査」、総務省・経済産業省「2012 年経済センサス 安 活動調査」に基づき、中小企業数の推移を、2009 年、2012 年、 2014 年の3時点で比較した場合、一貫して A しており、 A のペ ースは、 B 。
文中の空欄AとBに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
ア A:減少 B:拡大している
イ A:減少 B:緩やかになっている
ウ A:増加 B:拡大している
エ A:増加 B:緩やかになっている


…皆さんどうでしたでしょうか。

正解を先に言うと、1問目はオ、2問目はイとなります。

この2つの問題に相対して、
「いやー暗記していないと解けない問題だな…」
と思うか、
「詳しくは知らないけどなんか聞いたことあるな~」とか「まー普通に考えてなんとなくわかるわな」
と思うか、
人によってこんな感じに受け止め方に違いが出てくると思います。
前者の人に比べて後者の人は物事に対する好奇心旺盛な人が多いんだと思います。

日々インプットされる情報に対して咀嚼する癖がある、自分事として受け止める、そんな人なのかなと。
だから、1問目に関して
輸送機器産業の人口増減に関しても肌感覚でわかるんでしょうね、近代日本を支えており、発展している産業である輸送機器産業の人口が減ってるわけないですもんね。

だから、2問目に関して
2009年リーマンショックからは中小企業数増えてはいないだろうーなー、とはいえ2014年とか比較的最近はそんなに減少に歯止めがきかないみたいなニュースも聞かないしな~ということに気付けるんでしょうね。
支援施策に関しても同様のことが言えると思います。
誰に、どんな、どうやって、ここをポイントに覚えていくわけですが、ただ支援内容を暗記するだけでなく、なぜ支援が必要かも知っておくといいかもしれません。
例えばなぜ創業支援が必要かというと、日本は諸外国に比べて非常に起業意識が低く、起業無関心者、起業関心者、起業希望者それぞれに対して起業促進させる支援が必要なことがうかがえます。
こんな風に中小企業がおかれている状況ってこんなんだろうな~、とか思いを馳せることができるかできないかで、単純記憶からエピソード記憶にすることが出来るのでは。
はじめにも申し上げた通り、中小対策は、暗記、更に言うと直前詰め込み対応がよくセオリーとして言われています。
ヘビーな他の6科目があるなかで、二次に直結しない中小対策としてその対策方法は間違っていなとわたしも思います。

しかし

それはあくまで一般的な対策方法であり、先ほど述べたとおり、様々なことに引っかかりを持てる好奇心旺盛な人とそうでない人ではやはり対策は違って当然なのではないでしょうか?
前者の方で且つ他の6科目の進捗まだまだ~という方は、セオリー通りで良いかなと。
一方、

後者の方のように普段の生活と中小学習領域につながりを感じられず、且つ暗記も苦手…という方、

そんな人には、

一案として中小企業白書をパラ見で良いので一読することをお勧めします。

中小企業白書とはは毎年この時期に中小企業庁から発表されるもので、その内容は主に3つに分かれており、
中小企業をとりまく経営環境や企業経営についての分析。
中小企業をそれぞれ産業分野別に分けて将来展望をはかる。
中小企業のための行政施策の分析。
という感じで中小企業の動向を詳細に調査・分析したものです。
もうちょっと詳しく説明すると。
1963年に制定された『中小企業基本法』の第11条第1項には、「政府は毎年国会に、中小企業の動向及び政府が中小企業に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。」と定められており、中小企業白書はこの法律に基づいて毎年出されてきました。
中小企業白書には、具体的な事例やデータを基に、中小企業の動向と政府が行った施策などがまとめられています。
また、今後国が講じることが予定されている中小企業施策についても報告されています。
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。
つまり、日本の中小企業の「現状の姿」と「目指すべき姿」を教えてくれる中小企業白書とは診断士試験の根幹をなすと言っても過言ではないと思います。
とはいえ白書は小規模白書と合わせると1,000ページ近くなる年度もあり、膨大なボリュームですので、一読したくらいで内容覚えきることなんて不可能です。
ではなぜ一読をお勧めするのかというと。

国が求める診断士像へのマインドセットが目的です。

マインドセットとは
経験、教育、先入観などから形成される思考様式、心理状態。暗黙の了解事項、思い込み(パラダイム)、価値観、信念などがこれに含まれる。マインドセットという言い方は、人の意識や心理状態は一面的なとらえ方はできず、多面的に見てセットしたものがマインドの全体像を表しているということから来ている。参照 グロービス経営大学院MBA用語集

診断士試験は国家資格です、国が求める人が診断士に合格出来るんです。

つまり、
日本の中小企業がどのような状況か?
日本の中小企業は何が課題か?
日本の中小企業のために何をすべきか?
以上について国がどう考えているか、そこを掴む事が診断士試験合格には大事となってきます。
白書はあらゆる角度から中小企業の現状を把握分析し、その実像を浮かび上がらせてくれます。
一言で中小企業とは?って言われても答えられませんよね、至極当然だと思います。
規模や業歴、業種、地域…etc.…と中小企業の特徴は千差万別です。
しかし、白書を一読することにより、一言では言い切れませんが、いろんな角度から中小企業について知る事が出来ます。
細かい数字などは白書を読む作業において二の次です。
一読して、今一度ご自身の思い込みとの差や、そもそも今まで気づかなかった一面に気づいて下さい。
このマインドセット作業が本試験時にわからない問題に取り組む際、二択とかまでに選択肢を絞るのに必要だったりします。
試験まで持てばよい期間限定パッチみたいな方法かもしれませんが。


また、二次試験に無関連と言われているこの科目ですが果たして本当にそう言えるでしょうか?
診断士試験、特に二次筆記試験ではみなさん独自のアイディアや経験はむしろ邪魔になってしまう可能性が高いのです。
ですので、
2次筆記試験では経験スキル豊富な40代~が苦戦してしまい、社会人経験の浅いフレッシュな20代がストレート合格してしまうなんてことがあるんですね。
日本全体の中小企業の現状分析、課題抽出、改善提案、とマクロ的な経営診断報告書とも言える白書。
この白書の方向性(国が言いたいこと)と二次筆記試験の解答(受験生に答えてもらいたいこと)の方向性が合致しないはずがありません。
誤解を与えてしまうと困るので、補足させてもらいますが、二次筆記試験では与件文内に記載されている内容が最も優先度の高い根拠であることは疑いようがありませんからね。
とはいえ、二次対策で解答の方向性が定まらない方には白書一読は効果あると思います。


例えば、昨年H29年度の2次筆記試験、事例Ⅰ-第5問は、
「第三の創業期」ともいうべき段階を目前にした、A社の存続にとって懸念すべき組織的課題を分析させる、
という問題で、
与件文では多くの創業メンバーが退職し、社内に残る中核人材は、高齢化しつつある社長、専務以外では不足気味である。
という趣旨が記載されています。
そして、17年発行の白書に目を向けてみると、創業期、成長初期、安定・拡大期と成長段階に応じて必要としている社内人材として、安定・拡大期の企業では後継者候補となる人材を必要としている割合が創業期、成長初期に比べて突出して高くなっています。

この方向性の一致について、こじつけとか結果論だとか思われるかもしれません。
白書なんて読まずに試験本番で与件文しっかり読めば済むことだ、と思われるかもしれません。
おっしゃる通りだと思います。

しかし、

本番の80分の中で与件文内容をつぶさに見逃さず対応することは現実的に非常に難しいことも事実です。

そこで、

国の求める診断士像へのマインドセットすることで、大きな方向性を見誤るという致命的な大事故を引き起こすリスクを抑えることが可能とわたしは考えます。

また、白書にはロールモデルとなる事例企業がわんさか紹介されています。
この辺も方向性を掴むのに結構役立つかもしれません。
と、本来ならこの時期、一次試験に特化してお話するべきだと思いますし、二次筆記試験についてまだその内容について知らない人にとってはあまりピンとこない内容だったかもしれませんが、ご了承下さい。

実は7科目の中で一番重要?かもしれない中小企業経営・中小企業政策。
是非この科目に対する見方を、「ただの暗記科目」から→「診断士試験の根幹をなす科目」に変えてみてはいかがでしょうか?1000ページ近くある白書を読むのは大変だー!と思う方は、要約した書籍等も市販されていますから、ご検討ください。
※白書を読む際に注意してもらいたいのは、今年20年度の一次試験は白書19年度版から出題されるということです。


最後に、
しつこいようですが受験生皆スタートラインが違うので、唯一の試験対策なんてあるはずがありません。
皆さん自信で考えて皆さん独自の学習法、計画を見つけるしかありません。
一生懸命勉強するのも大切ですが、度々自己分析を行っていただき、自分がなぜこの科目が苦手か、なぜあの科目が得意か、そこを考えることの方がもっと大切です。
苦手な理由を短絡的に暗記が苦手だから~で済ましているようではいけませんよ!これは中小以外の他の科目にも言えることです。

以上です!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?