星雲

 今宵はとりわけ寒いが、その分空は晴れ渡っている。 綿入れ帽子を被り、上着を何枚も着込んで湛軒先生は庭に出て天を仰ぐ。無数の星が闇を照らす。
「あれが北斗星‥、ということは」
 先生は清国の友人が送ってくれた天文書と照らし合わせながら、星々の名称を確認する。地平線に目を移すと淡い光を放つ雲が見えた。
「あれが星雲というものか」
 雲のように集まった星の群れ。“星雲”とは上手く名付けたものだ。彼は一人微笑むのだった。

朝鮮王朝時代後期の実学者・湛軒 洪大容のエピソードです。数学や天文学に関する著作を残しています。

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