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会蘇曲

新羅のある王様の時代のことです。
その頃、新羅では中秋の日、機織りを競う行事がありました。全国から我こそはという機織り名人の女性たちが王宮に集まって来ました。
機織りは日の出と共に始まり日が沈んだ時点で終了です。
夜明け前の薄暗い中、王宮の庭にはたくさんの織り機が並べられ、その前には織姫たちが待機しています。
太陽が顔を出すと同時に女性たちはいっせいに織り始めました。皆真剣な表情で手を動かしていますが、中でも近郊の村から参加している娘は必死でした。
実は今年に限り二番目の王子の配偶者選びを兼ねているのです。娘と王子は既に知り合っていて互いに好意を抱いていました。娘は機織りが苦手でしたが、王子と一緒になりたい一心でその間努力し、この日を迎えました。
太陽が中天に来た頃、娘の横には布の小山が出来ていました。他の人々は一、二枚程度でしたのでので圧倒的な速さです。
日が地平線に落ちたところで競技は終わりました。周囲を見渡した娘は自身の勝利を確信しました。
ところが審査官の口から出たのは山の村出身の少女の名前でした。
失意に陥った娘は悲しさのあまり嘆きの歌が出てきました。悲壮な調べに周囲の人々は涙を流しました。
優勝した山の村の娘は審査官に言いました。
「あたしは王宮の窮屈な暮らしより山で自由に生活したいから王子様との結婚は辞退いたします」
このため次点だった娘が王子と結婚することになりました。
相思相愛だった二人が一緒になれたことに周囲の人々は皆祝賀したのでした。

新羅の物語“会蘇曲”を少しアレンジしました。

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