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上巳の風景

 久しぶりに都に来た秋江(추강)はいつになく賑わっていることに少し戸惑った。
 射亭を見ると射客が命中させるたびに、後に控える妓女たちが
「大当たり」
と歓声を上げていた。
ーそうか、今日は上巳の日なのだなぁ
 改めて周囲を見回すと城壁内外には紅い杏の花が咲き誇っている。
 その西側から日が差して東側に花影をつくる。
 馬に乗った老人が通り過ぎると風が女墻より吹き込んでくる。
 秋江はさっそくこの光景を詠じたのだった。

朝鮮時代の文人 南孝温の詩をもとに書きました。上巳すなわち三月三日、日本では桃の花が思い浮かびますが朝鮮では杏のようです。そういえば、中国朝鮮族の昔のヒット曲に「杏の木」という歌がありましたね。

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