某村のおもてなし

 鶴、雉子、玉子、魚類、野菜、果物‥。
 名主の家には、様々な食材が運び込まれた。
 近日、朝鮮からの一行が近辺の寺院に宿泊する。その食糧の買取に請負人がやって来るのである。
 一行の人数は数百名になるらしい。それゆえ、この村だけでなく他の村でも買い付けしているだろう。
 また近くの川には一行のために舟橋も作られるらしい。材木が大量に運ばれている。
 数十年に一度の大イベントにお城の方々は四苦八苦しているらしいが、百姓たちにとっては大変だが、稼ぎ期でもあった。
 請負人が品物を運び出した後、納品した農民たちに代金が支払われた。予想外の額にみんな喜色を浮かべた。
 まもなく街道に朝鮮通信使の行列がやってくる。豪華な衣装に賑やかな音楽が奏でられるパレードは一生に一度見られるかどうかの貴重なものだ。
 懐が温かくなった人々はその日を楽しみに待つのだった。


#歴創版日本史ワンドロワンライ  2019年12月14日 お題:旅
朝鮮通信使の「おもてなし」に庶民たちも関わりました。


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