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七夕

玉峰は夜空を見上げた。天気が良いためか銀河水(天の川)がはっきりと見える。
「今年は牽牛と織女が会えるわね」
彼らは一年に一度しか会うことが出来ない、運悪く雨が降ってしまったらその年は会えないのだ。世間の人々は二人を気の毒がる。
だけど彼らには無限に時がある。今年が駄目でも来年、再来年があるではないか。そして、銀河水を挟んで互いを思いやることも出来る。
だけど私は‥。
自分が撒いた種とはいえ、愛しい人の側から追われてしまった。思いを断ち切ることが出来ず、かつて暮らしていたあの人の家の近くに住居を得て、毎日、その姿を見つめている。だが、先方は私の姿など視界に入っていないだろう。
それでも私は今日もその姿を求めている。

無窮會合豈愁思、不比浮生有別離
天上却成朝暮會、人間謾作一年期


朝鮮時代の女性詩人 玉峰李氏の作品をもとに書いた物語です。

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