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山のむこう

山の向こうはシリア。その手前に、インフォーマルキャンプやテントがある。

シリア難民、パレスチナ難民を多く抱えるベカーなど、シリアとの国境地域。レバノン政府とシリア政府の調整のもとで、今月もシリア難民の帰還が実施され、レバノン政府は、今後ロシアとも協力していく姿勢を明らかにしている。シリア政府は、帰還民の受入るための、センターをシリア国内に設置し、シリア周辺国やドイツなどの難民に対して、帰還を呼びかけている。一方、レバノン政府は、シリアからの不法入国の取り締まりを強化している。電子鉄線を設置し、これ以上のシリア難民の入国と、帰還民の再入国を防ぎたい思惑が伺える。そうした思惑は、シリア難民に対し、帰還後のレバノン再入国について、条件を課していることからも、よくわかる(http://www.dailystar.com.lb/News/Lebanon-News/2018/Aug-07/459337-general-security-sets-refugee-return-rules.ashx#.W2nuM4eC4GQ.twitter)。レバノンでの避難生活が過酷のため、保護の保障がないが一抹の希望を持って帰還を選ぶ、シリア難民。しかし、違法に、そしてUNHCRの難民登録を受けずにレバノンに滞在しているシリア難民は、帰還した後、レバノンに再入国することはできなくなる。彼らにとって、帰還を選択することは、危険な賭けでしかなく、そしてきっと、その“賭け”に負けることも見越して、覚悟を決めた決断かもしれない。異国の土地であるレバノンより、自分の故郷である、シリアの土地での死を選ぶ。

写真:いずれも2018年撮影。難民の暮らすテントが、畑の奥に。

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