台北當代藝術館での不思議な時間
あまりにも内容が薄暗いので、入場券やパンフレットの写真をトップに出すことをはばかられて、何の関係もない帰ってから撮った銀杏の木の写真を載せてみました。
ふらりと美術館へ
ホテルで休憩をとった後に向かったのは、重慶南路書店街です。この旅の目的の1つは文具や雑貨をいっぱい買うことでした。台湾の書店の雰囲気も感じてみたいと思っていました。気温が高くて初夏のようだから忘れていましたが、季節は冬です。5時近くなり、徐々に辺りは暗くなってきました。
自転車で通りがかり、入ってみたくなったのは、台北當代藝術館という美術館です。ガイドブックに載っていたミュージアムショップのグッズが可愛かったので、行けたらいいなあと思っていました。
他にガイドブックを見て知っていたのは、日本統治時代の校舎だった建物を使用しているということだけでした。どんな展示をしているのかも知りませんでした。
入口横のスペースで芸大の学生かな?と思うような方々が、ワークショップ的なことをしていました。そういう自由で開かれた雰囲気の場所なんだなと思いながら、入って行きました。
怖い?
すると、お客さんで来ているおじさんが、受付の人に怒鳴っていました。その怒り方が、激しくて、犯罪の香りまでしてきてしまいました。建物も薄暗く、人気も少ない中、あのおじさんと同時に入館し、移動していくペースが同じになってしまったら?
想像すると怖くなってきてしまいました。龍山寺の前の公園で言い争いをしていた夫婦のように、台湾の人は喜怒哀楽がはっきりしているのかな?と感じました。
何かあったら怖いので、先にミュージアムショップに行くことにしました。可愛いマグを見つけて、買おうか迷いました。展示を観てからもう一度ミュージアムショップに行くことにしました。20分くらいはミュージアムショップにいて、怖いおじさんはどこへ行ったのか分からなくなったので、入館することにしました。
入場券は50元(日本円で200円以下)と、とても安いです。日本だったら、どんな展示でも、1000円はしそうです。ミュージアムショップに売っていたマスキングテープが60元~だから、何にどれくらいの値段をつけるかという価値観の違いに驚きます。
シュールすぎる展示に夢中になる
お金を払い、入場券とパンフレットを渡されて、少し驚きました。
↑パンフレット ↓入場券
展示のタイトルは「災難的霊視」
霊という字は何だか怖い字です。そしてシュールな絵が描かれた怖そうなパンフレット。外は薄暗いし、さっきまで怖いおじさんがいたし、建物はきれいにリフォームはしてありますが、古い小学校の木造校舎です。
最初の展示は、災害後のがれきが散りばめられたような部屋でした。そのがれき?の上を歩き、何かを体感することが現代アートだったようです。ここでは「変わった展示だな」という以外、これといった感想もなく、次の部屋に行きました。(これも今思えば、順番の問題で、先に映像を観た後だと、感じることが違ったかもしれません)
ここから先は、ほとんどが映像のアートでした。小学校の教室だったところ1つ1つが暗室になっていました。
次に入った部屋にはいくつかのテレビ画面があり、香港のデモで学生が警察に捕まる様子などが流れていました。日本のニュースで見たよりも、その様子はすざましいものでした。ニュースに流れない現実を伝えてくれているのだなと思いつつ、こんなの流していいの?日本だと問題になるんじゃない?というような、なかなか激しい内容でした。
次の部屋では大きなスクリーンに長めの映画のようなものが流れているのを、椅子に座って見ました。災害後?戦争後?どこの国かも分からないような荒れ果てた場所を1人の人がさまよい続けている映像でした。
世紀末?この世の終わり?もしかして地球外の星?
宗教的な感じもするし、政治的な感じもするし、不思議な世界でした。
私はこの映像にくぎ付けになり、夕暮れの暗室で一人で夢中になって見ていました。私以外には学芸員さんがいただけでした。時間があまりなかったので、しっかり見れたのはこの映像だけになってしまいました。
観終わって、一人そのまま薄暗い階段を上り、2階に行ったら広い部屋になり、少しは人がいました。そこにもたくさんのテレビがあり、本当に災害後の街を映しているものもありました。どれも不思議なんだけど、リアルさもあり、今まで見たことがないようなものばかりでした。
知識があればもっと楽しめたのか?知識がなくてただ感覚で受け取ったから楽しかったのか?きっと言葉で説明されても訳分からなかったと思います。実際にこうやって言葉にしていても訳分かりません。
とってもシュールで不思議で衝撃的な美術館でした。不思議世界に迷い込んでしまったような時間でした。今まで経験した中で唯一無二の体験で、一生忘れられなくなりそうな時間でした。行って良かったです。もっとたくさんの映像をゆっくり観たかったですが、雑貨屋巡りなどをせずに、ここに半日いたら?と思うと、1時間くらいで十分だったのかなとも思います。
明るい雰囲気のミュージアムショップに戻り、やっと普通の世界に戻った気がしました。迷っていたカップを購入して、美術館を後にしました。そのカップはとても気に入って使っていたのですが、ひびが入って使えなくなってしまいました。でも捨てられず、食器棚にしまってあります。
このグラス、中が星型になっています。
最後に
不思議だった、衝撃的だった、シュールだったと連発していましたが、こうやって振り返ってみると、私は意外にもこの場所を楽しんでいました。例えが適切か分かりませんが、ムーミンのお話のような薄暗くて、謎に包まれた不思議世界が意外と私は好きだなと感じました。
あれは未来だったのか?過去だったのか?時と場所を超越するような経験でした。