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03.バス停 【沖家室】思い出備忘録


沖家室に電車は走っていない。
電車どころか、信号もない。

そんな島の公共交通といえば、バスだ。
前は町営バスが走っていたけれど、今はスクールバスが走っている。
学生だけでなく、一般の人も乗れるらしい。

周防大島からかかる橋を渡って、バスはゆっくりと島にやってくる。

島に入って一番最初の「州崎」の停留所には、小さな小屋があり、
その前には青いベンチが置いてある。

そのベンチでは、朝に、お昼前に、夕方に、
おじいさんやおばあさんが、のんびりとおしゃべりをしている。
しばらくおしゃべりを楽しむと、
どちらからともなくゆっくりと立ち上がって帰っていく。

バス停の前には道路を隔てて湾があり、
漁船が凪いだ海面に静かに浮かんでいる。
空は広々と拡がっていていて、遮るものは、なにもない。
時折、とんびや海鳥の鳴く声が聞こえる。

バスはゆっくりとバス停を通り過ぎる。
乗っている人はいない。

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