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3月6日 メッツ千賀滉大投手初登板レポート

大谷翔平選手に、吉田正尚選手、ヌートバー選手といったMLB勢が日本代表デビューを飾る日本代表強化試合に注目が集まる中、アメリカでは同日、前回のWBCで素晴らしい活躍を見せてくれた千賀滉大投手ニューヨーク・メッツでの初登板を迎えました。本稿では、今日の試合の千賀投手の登板シーンを、現地実況席の解説も踏まえつつじっくりと振り返り、また、試合後のショーウォルター監督の会見コメントの翻訳も紹介します。

1. 試合前の千賀投手への注目(実況席のコメント翻訳より)

今日、メッツが対戦したのは、昨シーズンのナショナルリーグ中地区を制した強豪、セントルイス・カージナルスでした。カージナルスのホームゲームで行われた今日の試合は、中継もカージナルス側のもののみ。でしたが、千賀投手MLB初登板ということで、相手側の実況席でもかなりの注目を浴びていました。

解説の方は早速、千賀投手についてこう説明します。「センガは、どこの球団がサインするのか多くの噂がオフシーズンにあった投手です。メッツが最終的にサインしました。185cmで91キロ、30歳になる右腕。直球は90マイル後半で、良いスプリッターもあり、カーブにスライダーも全て投げることができます。今シーズン試されるのは、大リーグでどのような成績を残すかでしょう。日本では素晴らしかったそうですから。」

その後、実況の方も含めて、千賀投手についての話は続きます。
要約すると、5人ローテへの順応が必要だと。日本での6人ローテとは、登板間隔において大きな違いがある。メッツもシーズン中には6人目を一時的に使ったりするつもりだけれど、基本的には5人の予定。さらに、ピッチクロックやピッチコムといった新しいルールだけでなく、言語の壁にも適応しなければいけない。色々とチャレンジになるでしょうとのことでした。

中でも、千賀投手に関する話題の最後に実況の方がおっしゃったこの一言には、力がこもっていました。
『野球では、実力が一番意味がある。プレーこそが、全ての言語を超えて伝わる。』
日本の野球ファンの方も、日本で活躍する外国籍の選手の本人の言葉こそ分からなくても、プレーを見て魅了されたり、好きになったりしますよね。千賀投手も、きっと実力でニューヨークにたくさんのファンを作っていくでしょうし、シーズン終了後にはいったいどんな評価をされているのか、今から楽しみです!


2. ゲーム・フロウ①(初回)[試合の流れ、実況席の反応も踏まえつつ]

さて、上記のような話が実況席で続く中、早速試合が始まりました。千賀投手は初回、先頭打者ドノバンをフルカウントから歩かせてしまいます。次打者、昨シーズン14HRの2番オニールにも粘られて、連続の四球。早速のピンチで、カーディナルスが誇る主砲の二人、ゴールドシュミットとアレナドとの対戦となってしまいました。

3番のゴールドシュミットは、昨シーズンのMVP選手(昨季35HR、115打点)。そんな彼に対しても、ボールが先行し3ボール0ストライクになってしまいます。少し心配になりますが、さすがは経験豊かな千賀投手。開き直った直球勝負で、97マイル(156キロ)の直球を投げ込んで、ショートフライに打ち取ります。

アウトが1つ取れたことで落ち着いたのか、4番アレナド(こちらも昨季30HR、103打点)には、ストライクが先行する形で追い込み、最後は97マイルのストレートで差し込んで、ライトフライに。メジャーが誇る強打者2人をフライで打ち取ります。


そして、2アウトから対するのは、メジャーでの実績こそないものの、ここまでのオープン戦で18打数の9安打、3HRと、打ちまくっている若手の5番打者、ジョーダン・ウォーカー。あまりの調子の良さに、打席に入るだけで大きな拍手と歓声が起こるほどで、196cmの巨体を持ついかにも長打力がありそうな打者ですが、2ストライクに追い込んでから、アメリカでも話題になっている『Ghost Fork(オバケフォーク)』を絶妙な高さから落として、三振に!2残塁で、千賀投手は初回のピンチを無失点に抑えます!


これには解説の方も、「良い修正でした。先頭から2人歩かせて、制球に苦しんでいましたが、調子を取り戻して、ゴールドシュミットとアレナドの素晴らしい打者2人を打ち取りました。ウォーカーからは、話題のスプリットで三振も取りましたね。」と誉めておられました。



3. ゲーム・フロウ②(2回+成績)[試合の流れ、実況席の反応も踏まえつつ]

2回もマウンドに上がった千賀投手。先頭打者でこちらも昨年14HRを記録した若手の6番、ゴーマンとの対戦は、フルカウントまで行くものの、最後はアウトコースにビシッと決まった98マイル(157キロ)の直球で見逃しの三振に仕留めます。



次に、マイナーでの実績のある7番のバールソンは直球で詰まらせて、ボテボテのセカンドゴロに。このまま簡単に3者凡退かと思われたところでしたが、8番のキャッチャー、バレラに、高めに浮いたスライダーを完璧に捉えられ、レフトへのホームランを許してしまいます。まさに伏兵の1発。ですが、千賀投手に動揺は見られません。次打者の9番ウィンに対しては、先ほど打たれたスライダーを今度はきっちりとアウトローに投げ込んで、セカンドフライに打ち取り、千賀投手は2回でマウンドを降りました。


今日の千賀投手の最終的な成績としては、2回を投げて、被安打1、1HRによる1失点。2四球もありましたが、2奪三振も奪っています。先日アスレチックスで初登板だった藤浪投手の2イニング目と同じように、回の頭から連続四球を出してしまうスタートだったので少し心配しましたが、そこから調子を上げて無失点で抑えたのはさすがとしか言いようがありませんでした。ストレートは相変わらず走っていましたし、変化球もここ一番でしっかりとコースに決まっていました。実況席でもたびたび話題に上がっていたように、ピッチクロックやピッチコム、そして言語の壁という新しい環境の中で、十分な調整となった初登板だったと思います。



4. メッツのショーウォルター監督による試合後コメント翻訳紹介

さて、ここではメッツのショーウォルター監督による、千賀投手に関する試合後の会見コメントを紹介します。まず、ショーウォルター監督は、今日の千賀投手のピッチングにとても満足したとのことです。特に、千賀投手が、MLBデビューというキャリアの中で大きな瞬間にも関わらず、感情をうまくコントロールして投げ切ってくれたのが良かったと。具体的なコメントは以下のようなものでした。


「首脳陣の私たちが望んでいるすべてを、センガは見せてくれたよ。良い初登板になったと思うし、彼を誇りに思う。今日の登板は、彼にとってとても大きな瞬間だっただろうからね。変化球は良かったし、ストレートも評判通りだった。良い登板だったし、彼の球種レパートリーも良かったね。今日の登板前から、こういう結果を出してくれると思っていたよ。」

「初回は、マウンドから1度降ろしたりしないといけないかとも考えたけど、最初の数球はピッチクロックにも気を取られていたし、その後は落ち着いていった。良いアスリートで、スマートな選手だから、調整できるよね。日本でも調整していく経験をしているだろうし。開幕に向けて調子を上げていくために、良い登板だった。既に言ったけど、そういう姿が見れて良かったし、メンタル面でも上手く自分をコントロールできていたように見えた。」

ヤンキースにレンジャーズ、オリオールズなど、長い監督歴があり、最優秀監督も何度も受賞している名将、ショーウォルター監督にここまで誉められているのは、純粋に嬉しいですし、誇らしいですね!これから先、投げるイニング数が長くなってきた際に、どのような評価をしてくださるのかには、また注目していきたいところです。


おわりに
千賀投手は「頭の中がピッチクロックでいっぱいだった」とおっしゃっておられましたが、初登板にしては十分すぎる結果だったと思います。新ルールに関しても、ショーウォルター監督がおっしゃるように、これからどんどん調整して、順応されていくことでしょう。とうとうメジャーでのキャリアが始まった千賀投手のこれからが、楽しみですね!KK
*藤浪晋太郎投手、大谷翔平選手の初登板からのレポートはコチラ

参考にした記事
Steve Dorsey記者『Senga debuts for Mets, 'excited to be in a real game'』MLB.com


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