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『華清宮』杜牧

今日は5月5日ーー端午の節句ですね。そして、立夏ということで、季節も夏への一歩を踏み出しました。

さて、先月の漢詩講座で取り上げた漢詩をもう一首ご紹介します。

こちらも杜牧の詩ですが、1月の共通テストに出題されました。

「華清宮」というのは、都長安の東に位置する驪山(りざん)にあった温泉地。玄宗皇帝と楊貴妃がたびたび行幸した場所として有名です。

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『華清宮』  『Huá Qīnggōng』

   杜牧   Dù mù

長安回望繍成堆 
 Cháng'ān huíwàng xiù chéng duī  

山頂千門次第開  
 Shāndǐng qiān mén cìdì kāi  

一騎紅塵妃子笑  
 Yì
qí hóngchén fēizi xiào  

無人知是茘枝来  
 Wúrén zhī shì lìzhī lái

【書き下し文】

長安より回望すれば繍堆(しゅうたい)を成す

山頂の千門 次第に開く

一騎紅塵(こうじん)妃子(ひし)笑ふ

人の是れ茘枝(れいし)の来たるを知る無し

詩の形式
*詩の形式:七言絶句
*押韻:堆・開・来

【桂花私訳】

都より顧みすれば 綾絹を重ねしごとき驪山宮

頂(いただき)に至る 数多(あまた)の門 
開く 一つまた一つ

砂煙まき上げし早馬来たりて 楊貴妃ほほ笑む

遠方より茘枝届くを 民(たみ)は皆知る由もなし

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茘枝は楊貴妃の好物だったと言われていますが、1200年以上前の唐代にこの南方の果物を長安の都に運ぶためには想像を絶するような労苦があったことでしょう。

華やかさの陰にあるものが伝わってくるようです。


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