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ボウショ。

6,7年くらい前だったでしょうか。
その頃は、自分が暮らす豊田市の山村地域で、住民のみなさんを巻き込んたアートプロジェクト企画を立ち上げたばかり。充実はしつつも、ちょっぴり疲れてもいました。

そんなある日、ふと美味しい珈琲でも飲みたいと思い、検索。それは初めて目にするお店の名前で、なんとなく駅からも遠い。でも狭そうな路地をクルマで辿り着く自信はなかったので、駅の駐車場に愛車を停めて歩いていくことにしました。陽も暮れはじめていた逢魔が時ということもあり、心の内には不安な気持ちが忍び込んできます。私はちょっぴり挙動不審な人のように、見知らぬ狭い路地を進んでいきました。

辿りついたのは、一見すると倉庫のような外観で、入口にカフェの案内と灯りが灯っていなければ、気が付かずに行く過ぎてしまいそうなお店。すっかり日も暮れて、辺りは暗くなっていました。

ドアを開けると店内には常連らしい男性客がひとり。静かに本を読んでいました。とても音質の良い音楽が空間を満たしていて、穏やかな静けさと独特な世界観が漂っている。キッチンから出てきた店主はとても優しく温かな声で私を迎えて下さいました。いくつか会話をした後は、ただただ静かに音楽に耳を傾け、珈琲の味を楽しむ時間を過ごせましたし、それは、とても癒されたと感じる時間でもありました。

それからずいぶん時間が経過して、そのカフェのことはずっと気になりつつも、どこにあったのか記憶も曖昧なまま。もしかしたらもう無くなったりしていないだろうか(失礼;)と思ったり。ところが、ふと昨日の夜にSNSでこのお店の投稿を目にしました。『ああよかった、まだあったんだ。』(ホントに失礼;)と嬉しくなりました。

そして今日。なぜか予定を大幅に勘違いしてしまい、ポッカリと時間が空いてしまったので、思い切ってそのカフェに行ってみることにしました。昼間に辿るカフェへの道は明るく、狭い路地も一部は切り拓かれて新築の家々が建てられていました。

やっぱり秘密基地のようなドアを開けると、今日は何組ものお客がいましたが、穏やかな静けさや独自な世界観はあの時のまま。出迎えて下さった店主は『ああ、そうだ、こんな声だった。あったかくて優しい声だ。』とほっこり。カウンターのような席に座ると、吹き抜けの天井の上に設置されたスピーカーから、あの良質な音がそっと降り注ぐように聴こえてくる。『いい音だなぁ。空間と音楽がひとつになってるみたいだ・・・。』          珈琲と、店主が焼いたベイクドレモンチーズケーキで小休止。やっぱりめちゃくちゃ癒されました。・・・ん?もしかして私、疲れてた(笑)?

過去と現在とがふと交錯する、そんな時間の不思議な狭間を感じた土曜日。
みなさんも、ぜひお気に入りだったカフェにまた出かけてみてはいかがでしょうか?

■Vousho Coffee Factory:https://www.vousho.com/

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