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農民美術の鳩たち。

長野県上田市にあるサント・ミューゼ内にある上田市立美術館。こちらを訪れた際に初めて「農民美術」の存在を知りました。「農民美術」は、版画家で洋画家の山本鼎(やまもと・かなえ)が、欧州留学の帰路で出会ったロシアの児童画や農民の手掛ける工芸品を持ち帰ったことに端を発します。

信州は冬の農閑期が長く、農村での暮らしは厳しかったと言われています。そんな状況を打開し、日本の絵画教育(臨本教育:手本に如何に忠実であるかが評価基準)を「元来美術教育というものは押し付けるものではなく、直接子供の目に映った純粋なものを描くべきだ」との想いから改革しようと立ち上げられたのが「農民美術」でした。

私は以前、デンマークを旅したことがあった(懸賞で当たっちゃいました:笑)のですが、デンマークではフォルケホイスコーレというとてもユニークな教育機関があります。これは農民解放運動の中から生まれたものでしたが、初等教育のみで社会に出た20歳未満の農民を対象に、農閑期に1か月から3か月ほどその学校に寄宿し、歴史教育などを通じてデンマーク人としての教養を身につける国民的啓発の場として機能していたようです。上田の「農民美術」と重なる部分を感じます。

さてさて。私と鳩たちとの出会いはサント・ミューゼのミュージアムショップ。青い鳩の茶筒に一目ぼれしました。その後、新潟の北方文化博物館を訪れた際に何気なく入ったお土産コーナーで割引の値札の付いた赤い鳩の砂糖壺と衝撃的な出会い(笑)。まさかの新潟での再会で恋におち、その後機会を見つけては3羽の鳩たちを迎え入れました。

ここ数年は思うような旅が出来ませんが、旅での出会いはいつも生活を豊かでワクワクしたものに変容してくれますね。また、自由に旅に出られる日を心待ちにしています。

*補足*
先日、あるセミナーでロシア芸術にふれるパートがあり、研究者の方から「戦争によって多くの犠牲者が出ている状況だが、それによってロシア文化が否定されたり、学ぶ人たちが批判を受けたり絶えてしまう状況はあってはいけない」という発言がありました。言葉を選んで大変慎重にお話をされていたのが印象的でした。私もそう考えます。世界はどこかで繋がっていて、互いに影響し合いながら今を築いています。何を批判し、何を大切にしていくかはしっかりと見極めていきたいですね。

■山本鼎:

■誕生から60年。変わらぬデザインで愛されてきた鳩の砂糖壺:https://story.nakagawa-masashichi.jp/83343

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