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2021年 電気学会産業応用部門大会発表内容

 2021年8月に学会発表した内容の研究紹介です。論文発表としての最終目的は学術雑誌(電気学会論文誌や IEEE Transactions)になりますが,学会発表はその途中段階でのアイディアや研究内容の一部を公開するものです。研究室からは7件発表しましたが,そのうちの一部を紹介します

MOSFET の出力容量に起因する等価直列抵抗を考慮したノイズ解析

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 パワーデバイスとして使用されている MOSFET の寄生パラメータとしては,各端子間に存在するキャパシタンスが一般的に知られていて,データシートにも記載されています。また,パッケージングされたモジュールを対象にすると,パッケージ内部の寄生インダクタンスについて議論することが最近はよく見られます。この値もデータシートに記載されるようになってきたと思います。

 本論文では,これらに加えて,出力容量と直列に「抵抗成分」が存在するので,それに対する回路への影響を議論しようとする論文です。海外ではこの抵抗を取り扱った論文が出始めておりますが,一般的にはまだあまり議論されていないように思われます。そのため,実測方法や回路動作への影響(ターンオフ後の振動)についての結果を紹介しました。

 この研究自体は,大学院学生が自身のノイズ研究の一環でその存在に気が付いて,詳細に検討した内容の論文発表になります。

SiC MOSFET の並列接続時のケルビンソース接続ゲート駆動を対象とした電流バランス実験検証

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パワーデバイスの並列接続する目的は,大電流回路を作るためです。パワーデバイスを並列接続して,電流分担を等しくしようとする論文はこれまでにもたくさんあり,また今回の学会発表でも数件発表されていました。

 この論文の発表目的は,TOパッケージと呼ばれる電流容量があまり大きくないパワーデバイスの多並列化を目的にしています。論文や装置分解YouTubeを見ていると,このような実装形態は結構多いようです。アイディアとしてはシンプルで,ゲート駆動回路(ゲート駆動ICと絶縁電源)をパワーデバイス毎に接続しましょうというものです。一般的には,並列接続の場合にはゲート駆動回路を共通化するのですが,その場合はゲート駆動回路間に電流が還流して,スイッチング動作に悪影響を及ぼしてしまう可能性がありますので,その対応策となります。

 まあ,並列接続にも関わらず絶縁されたゲート駆動電源を個別につなげるということが現実的(コスト・体積)な観点から受け入れられるかどうかは不明です。

磁化反転を利用した永久磁石同期モータ駆動用パルス電流発生回路の実機検証

クリップボード一時ファイル03

あるプロジェクトで行っている,Magnet Reversal Motor(MRM)を駆動するための回路技術になります。最近の一般的なモータは,インバータで矩形波または正弦波を出力して回転させます。ここでの対象とするモータはパルス電流を周期的に流すことが目的となります

 この論文の目的としては,1 kW のモータを想定して,インダクタに100A 100 us のパルス電流を流すことを目的としました。そこで,数ある回路方式の中から共振現象を利用した電流を流す方法を採用しました。まだ,実際のモータでは検証できていませんが,実際に回路を設計・製作して検討した内容になります。将来的には,実際の負荷での検証と大容量化の2つを議論する必要があると思っています。

  2020年秋から始まったプロジェクトで,その頃に別テーマに取り組んでいた大学院生にお願いしたところ,回路提案・実験・解析のほぼすべてを実行してもらった内容です。





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