見出し画像

パワーデバイスを用いたPWM整流器を対象とした初期充電回路


論文タイトル

Overvoltage Suppression in Initial Charge Control for DC Capacitor Using Multiple Leg Short-Circuits With SiC-MOSFETs in Power Converters

雑誌名,発行年,巻,号,ページ番号

IEEE Open Journal of Power Electronics, 2023年8月, Volume 4, Pages 703-715

著者氏名,所属

  • Tomoyuki Mannen, University of Tsukuba

  • Keiji Wada, Tokyo Metropolitan University, Japan

論文概要

本論文は、PWMコンバータ(整流器)を対象とした初期充電時におけるDCコンデンサの過電圧を抑制するための新しい方法を提案している。この方法は、コンバータ内の複数の短絡を利用してDCコンデンサを放電し、初期充電時の共振効果による過電圧を抑制する。複数回の短絡を各レグに短時間で行うことにより、パワーデバイスの消費電力を削減し、デバイスのピーク温度を低減する。200V, 5kVAの三相PWMコンバータを用いた実験により、提案した複数短絡法が従来の単一短絡法に比べて消費電力を6%削減し、デバイスの劣化を40倍以上抑制することが確認された。

論文の主張点

提案された複数短絡法により、DCコンデンサの過電圧を効果的に抑制し、パワーデバイスの劣化を最小限に抑え、PWMコンバータの寿命を延ばすことができる。

背景

近年、パワーコンバータの高出力密度化が進んでおり、パワー半導体デバイスの改良とワイドバンドギャップ(WBG)デバイスの採用により、デバイス損失の削減とヒートシンクの小型化が実現されている。しかし、従来の電解コンデンサは短寿命であり、フィルムやセラミックコンデンサが使用されることが増えている。これに伴い、初期充電回路の小型化とコスト削減が課題となっている。既存の初期充電回路は,機械式ブレーカと抵抗による方法が使用されるが,その体積が課題であった。そこで,従来の手法ではなくあらたな手法が求められている。

研究の手法

提案された方法は、PWMコンバータ内のパワーデバイスを用いて各レグに複数回の短絡を行い、DCコンデンサの電圧を抑制するものである。この方法により、各短絡の持続時間を短くし、短絡期間の間にインターバルを設けることでデバイスの温度上昇を抑える。

実験またはシミュレーション結果

200V, 5kVAの三相PWMコンバータを用いた実験により、提案した複数短絡法が消費電力を6%削減し、デバイスの劣化を40倍以上抑制することが確認された。また、シミュレーション結果により、ピーク接合温度が従来の378°Cから180°Cに低減することが示された。

結論

提案された複数短絡法により、初期充電回路を省略し、PWMコンバータのサイズとコストを削減することができる。この方法は、特にPWM整流器において有用であり、コンバータの寿命を延ばし、コスト削減に寄与する。

パワーエレクトロニクス分野におけるこの論文の位置づけ

この論文は、初期充電時の過電圧抑制に関する新しいアプローチを提案しており、PWMコンバータの効率と信頼性を向上させるための重要な研究である。特に、SiC-MOSFETsを用いた複数短絡法は、デバイスの劣化を最小限に抑え、長寿命化に貢献する技術として評価される。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?