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2020年のプロ野球特例まとめ

 7/10から観客を入れての試合が始まった2020年のプロ野球ですが、例年とは異なる形式で運営されることになっています。わかりやすいところでは試合数が120試合とか、延長が10回までとか。ところが、NPBのWebには「主な特例事項」しか掲載してくれていません。細部や背景は、各種媒体にバラバラと記事になっているだけで、網羅的にまとめてくれていない。ならば私がまとめてあげましょう、というのがこの記事であります。

NPB「2020年シーズンの特例事項について」
このNPBのWebサイトに掲載されているのは下記の内容です;

・ レギュラーシーズンは6球団24回戦総当たりの各球団120試合とする。
クライマックスシリーズは、パ・リーグは1位球団と2位球団の対戦、セ・リーグは開催しない。
・ 延長回は10回までとし、10回を終わってなお同点の場合は引き分け試合とする。(イースタン、ウエスタンも同様)
・ 出場選手登録は1球団31名まで、ベンチ入りは26名まで。(うち外国人選手は出場選手登録5名以内、ベンチ入り4名以内)
・ 「勝率第一位投手賞」の表彰は10勝以上を規定とする。(従来は13勝以上)
・ 新型コロナウイルス感染拡大を防止し、シーズンを最後まで継続することを目的に「感染拡大防止特例2020」を新設。本人や家族の感染疑いや体調不良の症状が発生した場合、選手異動手続き(出場選手登録、登録抹消)に特例を適用することができる。

 NPBはかな~りシンプルに書いてくださっていますが、実はもっと細かい特例があることが各種媒体で報じられています。それらに載っていたものをまとめたものがこちら。

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 「特例2020」は新型コロナウイルス感染症にり患した場合の特例で、上記に書いてあることがすべてかと思います。
 これから先は、上の表(2020年NPB特例)の内容の背景・意味を、筆者の分かる限りで、ダラダラと長ったらしく書き連ねますので、ご承知おきください。(間違っていたり、よりよい説明があればコメントで教えていただけると幸いです)。なお、この先の文章はダラダラと長いですので、ご了承を。

①開始時期が遅れたことによる措置
試合数の削減
 例年ですと各球団143試合が行われますが、今年は120試合です。開幕時期が遅れたのなら、閉幕時期も遅らせて143試合やればいい、という考え方もありますが、実はプロ野球の試合は、11月30日以降は原則として開催できないことが、野球協約で定められています。

第173条(抄)
 球団又は選手は、毎年12月1日から翌年1月31日までの期間においては、いかなる野球試合又は合同練習あるいは野球指導も行うことはできない。ただし、コミッショナーが特に許可した場合はこの限りではない。

 コミッショナーが許可すればいい、という話ではありますが、仮に12月まで行うことになると、選手が体を休める期間が短くなりますし、会場の確保もできないかもしれない。このため試合数が削減されることは、やむを得ない選択と言えます。
 今年の試合数である「120試合」にも根拠があります。「野球協約」の第158・159条に、試合数についての定めがあります。

第158条(ホーム・ゲームとロード・ゲーム)
 年度連盟選手権試合は、同数のホーム・ゲームとロード・ゲームによって編成されることを原則とする。
第159条(ホーム・ゲームの最低数)
 球団が行う年度連盟選手権試合のホーム・ゲームの数は、60試合を最低数とする。

 ※「年度連盟選手権試合」というのは通常のペナントレースのこと
 試合数として「ホームゲームは最低でも60試合」であり、「ホームとロードの試合は同じ数が原則」ということで、60 x 2で120試合となっています。120試合を挙行しなければ、ペナントレースが成立しない、ということになります。
 シーズン終了日程の制約と、シーズン成立の2つの条件を満たす解が120試合だったということです。とはいえ、野球協約はあくまでNPBという団体の内規でしかないので、特例を作ればいくらでも変えられるんですけどね。

クライマックスシリーズ
 セ・リーグは、2020年はクライマックスシリーズを実施せず、またパ・リーグはファイナルのみ4試合で行われます。シーズンの最終試合が11/7まで予定されているうえ、11/21からは日本シリーズが予定されています。日程が過密で予備日の確保もギリギリ。ということで、セ・リーグは不開催、パ・リーグはファイナルのみという結論になった模様です。
 パ・リーグのCS出場チームの決定は、11/12時点の順位で決めることになっていますが、(かなり稀な可能性ではあるものの)面白い特例が出ています。
 現在の日程でのパ・リーグの最終試合は11/6のオリックスー日本ハム戦ですが、中止試合の振替試合が11/6よりも後に設定されることもあり得ます。仮に、中止試合があまりに多く、振替試合が11/12よりも後に設定せざるを得ない場合でも、11/12時点での順位で1位・2位のチームで11/14からクライマックスを行います。例えば11/13に、前日の順位表で2位に0.5ゲーム差の3位のチームと他のチームが対戦して3位のチームが勝ったら、順位が入れ替わり、前日3位だったチームが2位になるわけですが、CSには出場できません。120試合を対戦したトータルの結果ではなく、11/12までの順位で足切りされてしまいます。パ・リーグはドーム球場が多いので、振替試合が11/12以降に設定される可能性は低いと思いますが、こんな残念な結果になる可能性をもNPBは見据えていると理解しています。

選手獲得期限の延長
 例年は、トレードでの選手獲得や新外国人の獲得、育成選手の支配下への移行は7月31日が期限ですが、開幕が遅れたことに伴い、9月30日まで延期されています。

連盟管理節 
 今年は試合挙行可否をすべてNPBが判断します。過密日程により、日本シリーズの時期までにシーズンを終わらせるための措置です。細かい話なのですが、ちょっと前提から説明しますね。
 例年ですと、試合開始前に雨天のために開始時間を遅らせたり、もしくは中止したりという試合挙行の可否判断は、その試合のホームの球団が行うことになっています。しかし年度の途中からその判断を連盟、すなわちNPBが行うことが各リーグの「アグリーメント」というリーグ・試合運営に関するルール集で規定されています(この非公開の規程集については別に長々とかつネチネチと書くつもりです)。具体的には、NPBの日程カレンダの第4クール20節以降(2019年の場合は8月27日以降)の日程は「連盟管理節」と呼ばれ、試合挙行の可否判断をすべてNPBが行うことが定められています。各球団に試合挙行可否判断を任せていると、邪な理由で試合を挙行しない判断をするかもしれず、そうなるとペナントレースの日程を完了できない可能性も生じます。そこで、ある一時期から挙行可否判断の権限をNPBに移します、という規定です。
 2020年については、試合挙行可否判断を全日程でNPBがやることになりました。今年は各球団の権限よりも、日程を順当に消化させることを優先するという判断と考えられます。雨天中止になると、Twitterでは主催球団をののしるようなつぶやきを目にすることがありますが、今年はそれ違いますので、お気をつけあそばせ。

②選手の負担軽減を目的とした措置
 今年は日程が過密です。例年は約190日間で143試合を行いますが、今年は約140日間で120試合を消化する必要があり、選手への負担が増すことが想定されます。負担軽減を目的とした、下記の措置が取られます。

延長回
 (例年)12回まで
 (2020)10回までに制限
出場選手登録・ベンチ入り人数の拡大
1軍の試合に出場できる登録人数を拡大して選手交代の選択肢を増やし、選手の負担軽減を図るものです。
 (例年)登録:最大29人
     ベンチ入り:最大25人
 (2020)登録:最大31人
     ベンチ入り:最大26人
外国人枠の拡大
1軍登録・ベンチ入りできる外国人選手の人数を拡大します。
 (例年)登録:最大4人
 (2020)登録:最大5人
     ベンチ入り:最大4人
 ※野手と・投手の人数の組み合わせに制限があります。この特例の詳細は別記事に書きましたので、よろしければこちらも是非


③試合数削減に伴う措置
勝率第1位投手の表彰条件
 例年は13勝以上の投手が、勝率第1位投手の対象となるための条件ですが、今年は試合数が削減されたことにより、「10勝以上」が条件となります。

出場選手登録日数の扱い
 これは主にフリーエージェント(FA)資格の獲得に絡むものです。
FA資格を得るには、一定以上の期間、一軍選手として出場選手登録されていることが要件となっています。必要な期間は下記の通り:

 国内FA:合計8シーズン 
(2007年以降のドラフトで入団した大学生・社会人選手は7シーズン)

 海外FA:合計9シーズン

この「シーズン」という単位をどう数えるかが、今回の特例のポイントになっています。
 例年は、ペナントレースの期間中(CS・日本シリーズ期間は含まれない)に「145日以上」登録されていたシーズンを「1シーズン」と数えます。ペナントレースは例年約190日間行われますので、期間中に最大で45日登録を抹消されていた日があっても、1シーズンとして数えてもらえます。
 ところで2020年は、120試合を最大で142日間(球団によって差異があるものの最大は142日)で消化するシーズンとなるため、上記の「145日間」を達成することは当然、不可能です。
 そこでNPBとプロ野球選手会は、2020年の登録日数を「みなし」で計算することを協議した結果、2020年に登録された日数を「1.3倍」することになりました。(この経緯については、新聞に詳しく出ていましたので、興味があればおググりください)
 これにより、2020年はシーズン約140日のうち、「112日」一軍登録されていれば、「1シーズン」登録されていたものとみなされることになります(112 X 1.3 = 145.6)。

以上、特段の結語はありません。

<参考資料>





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