プログラム05  撮影現場に進んで顔を出しなさい。

今回の講義は、経験則だ。再現性があるか、一般論と言えるかどうか、確信は持てない。共感できなければ、君が採り入れる必要はないが、実験してみる価値は大いにある。少なくても君の世界は広がる。

コピーライターはコピーライターを育てられない

では、始める。コピーライターはコピーライターを育てられない。コピーライターは他のクリエーターによって育てられる。アートディレクター、デザイナー、イラストレーター、カメラマン…。モデル、俳優、女優、声優、照明など職人さんもこの中に入る。同じ作品を一緒につくるこれらのタレントの中の誰かとの出会いが、君を一流のステージに導いてくれる。そして、ここからが本当に個人的な経験なのだが、なかでもカメラマンとの出会いがコピーライターの人生を大きく左右する。

いまの君の近くに一流はおそらくいない

コピーライターからコピーライターへ、コピーライティングの技術は伝承できる。基本的な仕事のすすめ方から、コンセプトのつくり方、切り口の見つけ方、オリエンの受け方、プレゼンテクニック、マーケや営業担当との折衝(戦い方)? 閃いたコピーを後付けで理屈化する方法論なども、先輩コピーライターから学べるだろう、きっと。つまり、一通りのことは先輩から吸収でき、日常生活は困らない。プロのコピーライターとして、無難に、たとえば君が会社員なら安定した月給がもらえる。それはそれで、素晴らしい道だと思う。でも君は、何を血迷ったか、一流のコピーライターを目ざしてしまった。そうなると、話は変わる。ブレークスルーするためには、一流の人との出会いがどうしても不可欠だ。勘違いしないでほしいのは、一流の人は必ずしも有名人とは限らない。名こそ売れていないが、凄い人が広告の世界にはごまんといる。いや本当に凄い人ほど有名になることに興味はないようだ。さらに誤解してほしくないから念のため言うが、有名人が凄くないということではないよ。売名行為なんて一切しないのに、世間が放っておかなくて止むなく有名になってしまった人もいっぱいいる。この人たちも、凄い。要するに有名か無名かは置いておいて、君は一流の人と出会わなければならない。いま君のいる場所に、その人はいるだろうか? いれば、その人に付いていきなさい。その人のエネルギーをシャワーのように浴びなさい。しかし、いまの君の近くに一流はおそらくいないと言わざるを得ない。

一流を求める旅に出る必要

なぜなら、今の君は一流ではないからだ。一流でない人には、一流でない人しか引き寄せられない。君と同レベルのものが君の周りに集まっている。いつか君が一流になれば、黙っていても一流が寄ってくるが、今の君は待っていては駄目だ。一流を求める旅に出る必要がある。では、何処へ向かえばいいか? 撮影スタジオに行くといい。

時がきたら、運命の人と必ず出会える

もちろん、カメラマンもいろいろで、残念な人もたくさんいる。会う人会う人すべて、小さいと感じる人がたとえどんなに続いても、君は時間と理由を無理矢理つくって、スタジオ通いを止めてはならない。時がきたら、運命の人と必ず出会える。その人は、きっとこんな感じの人だろう。穏やかで口数は少ない。過去の実績を語らない。自分の腕を自慢しない。アシスタントを怒鳴らない。大声を出さない。クライアントに媚びない。難しい依頼にもNOを言わない。明らかに間違った撮影方法を指示されても、すぐに否定しない。ADの偏ったこだわりにも、快く対処する。若手のDの意見も丁寧に傾聴する。所作はゆっくりだが、仕事は早い。…いくつか特徴を挙げたが、これらは日本人カメラマン特有のものでなく、外国人にも当てはまる。

その日の撮影が終わり、立会人全員が散会した後、嬉しさと興奮のあまり、そのカメラマンから貰った名刺をなんども見返す君の姿が眼に浮かぶようだ。君は本当のプロの仕事を間近に見た。自分はまだまだだと感じた。早くこの人に追いつけるよう成長しよう。そしてまたいつか、この人と絶対仕事をしよう。いや、この人の方から、仕事を一緒にしたいとオファーが来るくらいのコピーライターになろう。そう心の中で誓うはずだ。

君が一流になる日が、また一歩近づいた。

今日は、ここまで。


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