モデラー採用の裏側【ゲーム関連】【採用事情】【面接】【大別法、分類法】
採用担当もやっていた経緯を踏まえ、ゲーム関連で、モデラーを志す方々を対象に記載します。雇用形態は問いません。
応募に来るのはどんなひとたちか。
9割は3DCG関連の専門学校を出ており、必然的にMayaや3ds MAXの専攻者が大部分を占めます。1割が異業種からの転身であり、概ねZBrushかBlenderの使用者を名乗ります。
8割がモデラー志願者です。リガー、アニメーター、エフェクト・アーティスト、テクニカル・アーティスト、コンポジッターなどは、トータルしても2割です。更に、モデラー志願者のうち6割がローポリ特化です。
これが業界の縮図となっているならば、Maya専攻でローポリ特化のモデラー採用がもっとも狭き門で、アニメーターやエフェクト・アーティストは慢性的な人材不足ということになります。アニメーターは残業が多くなる傾向にあり、実績を積んだエフェクト・アーティストは大手からオファーを受けることもしばしばあります。
ローポリ「特化」、ハイポリ「特化」という「名乗り」は、不利になってしまうことも。
進んで「○○特化」と名乗り出ることは、それだけで不利な状況を作り出してしまいそうです。ローポリを得意としているが、ハイポリにも対応可能だという方が他に出てくれば、採用者の目はそちらに向いてしまうことでしょう。
プロジェクトは、以下の枠に当てはまる人だけで遂行できそうですが、実力判定だけでなく、期待も込めて広く採用されるのが一般的です。
「特化」だけど、滅茶苦茶うまいんです!
ピンポイントなプロジェクトで活躍できるでしょう。ただ、運や営業力に依存する状態でやっていくことになることが予想されますので、仲違いが起きぬよう注意が必要です。
採用はデザイナーの一存では決まらない。
どんな会社であっても、力関係が「デザイン部門50%」、「人事部門50%」と考えて臨むのが妥当です。人事部門のない会社であっても、面接担当官の頭のなかには、50%の人事部門があることを想定してください。
履歴書、職務経歴書について。
デザイナーの持ち札は、1) 履歴書、2) 職務経歴書、3) ポートフォリオ(デモリール)の三点です。ポートフォリオが重視され、履歴書、職務経歴書の内容云々で加点することはあまりありません。
小さなポイントとして、「誤字」には注意を払いましょう。ゲーム制作の現場は、デザイナーとプログラマーの協力によって成り立つもので、一字のミスでもプログラムが作動しないことにデザイナーが気を配れると大変喜ばれます。わたしの印象では、履歴書、職務経歴書のなかで誤字がもっとも多かったと感じたのは、「Illustrator」というワードでした。無理にタイピングせずに、コピペを使うのが良いと思います。
※ 履歴書、職務経歴書は~:
・誤字に注意。
・読み飛ばせるようなものになっていればそれこそが正解。
モデラーの仕事を理解する。
モデラーは、「期間内に、仕様に則って、最低でも80点のクオリティでモデルを完成させ、納品する」のが仕事です。仮に満点のモデルを用意できたとしても、仕様から大きく外れ、納品できなければ0点と同じということになりかねません(周りの方々が助けてくれますので、普通そんなことにはなりません)。
モデリングの多種多様な案件に対して、コンスタントに80点を叩き出せる人材はそれだけで優秀です。一般に、モデラー志願者は、自身の方向性や得意分野を前面に提示してきますが、提示されていない領分ではまったく仕事ができない、ということならば、モデラーを名乗るには不足と言えます。
大体何でも出来るような人を「ジェネラリスト」と呼称しますが、モデリングでもアニメーションでも80点に届かないようであれば、ジェネラリストとして認知されることは難しいかも知れません。
何処までがモデラーの仕事か。
企業、タイトル、人員により様々です。アルバイトや補佐ならば、テクスチャだけ、ということもあります。
ローポリの場合、キャラクターの全面的なお世話を頼まれる傾向があり、期間がシビアに設定されます。ハイポリの場合、リギングは除外されることも多いのですが、ウエイトペイントは任される傾向があります。
1) 仕様書熟読。
2) 場合によって打ち合わせに赴く(メインキャラともなるとこれが重要)。
3) モデル造形。UV展開。頂点カラーがあることも。
4) テクスチャ作成(凄いときには1キャラで100枚近いことも)。
5) (ジョイント設置)、リギング。
6) ウエイトペイント。
7) シェーダー設定。
8) ゲームエンジン設置。テストプレイまでやったことも。
9) モデルの引き取り、修正対応。外注指示出し。
わたしの印象では、ハイポリ案件の方が楽です。新しいやり方を模索し、失敗してもやり直せるだけの時間的猶予が頂ける印象です。ゲームエンジンで動かせるところまで一通りやっておくのが無難です。
スキル大別 - 造形力 / 操作力 / テクスチャ力
モデラーに必要なスキルの、わたしなりの大別です。
1) 造形力:シルエットを捉える能力、立体的にものを見る能力。
モデル形状の、単純なうまさを表す。
2) 操作力:ソフトウェアの習熟度を表す。
制作速度や、トポロジーに表れやすい。
3) テクスチャ力:ディテールを書き出す能力。
シルエット(外側)と、ディテール(内側)が合わさって、モデルが成り立っていることを表しています。
ローポリモデラー志願者は、操作を疎かにしがちな傾向が見られ(ポリゴン数が少ないため、高度なテクニックを用いなくても完成させられるからです)、ハイポリモデラー志願者は、Substance Painterの基本機能をなぞった程度のテクスチャで終わらせてしまいがちです。
志向性分類 - デフォルメ(抽象) / リアル(具象)
モデラーの志向性を大別する、わたしなりの分類方法です。
1) デフォルメ(抽象):例えば、「山」という漢字は、抽象表現です。
2) リアル(具象):実際的な「あるがままの山」です。
抽象と具象の関係は注目に値します。
「あるがままの山」から抽象化されたはずの「山」という漢字に、いくらディテールを加えていっても「あるがままの山」には戻りません。また、「あるがままの山」の視覚情報を落としていったところで、「山」という漢字にはなってくれません。それぞれの志向性は、まったくの別物であり、得手、不得手として如実に表れます。
要するに、リアル造形はうまいのに、三頭身キャラとなると微妙、というような方がよくいらっしゃるのです。
スキル大別と志向性分類をチャートで表す。
それぞれ平均的な志願者をチャートで表したものです。
1のレベルを2に持っていくのは比較的容易いかも知れません。ですが、4を5にするとなると非常な苦労を要するものです。
あなたに求める価値観。
ゲーム関連会社の採用担当は、タイトルというひとつの世界観を制作するのに、あなたにも手伝って頂きたい、と思って面接に出向いています。あなた独自の世界観をアッピールする場とは少し異なりますので、注意しておきましょう。
このモデル、制作期間はどれくらい?
モデルがうまい=採用、ではありません。クオリティと同じくらい制作期間が重視されます。仮に、作品のクオリティが及第点に届いていなかったとしても、制作スピードが現場と同等であれば、戦力として想定することも出来そうです。わたしなら、半年かけて制作した100点のモデルより、1か月で制作した80点のモデルの方をより高く評価します。
余談ですが、上述はあくまで仕事でのお話です。わたしは、遅筆だったレオナルド・ダ・ヴィンチがとても好きです。80点のモデルより、100点のモデルの方が良いに決まっています。が、ゲーム制作はチームワークで動いていて、モデルの納品が1日遅れれば、受け取り手のアニメーターが1日手持ち無沙汰となり、更にアニメーターは1日分の遅れを取り戻す作業スピードを課せられるかも知れないのです。(これも周りの方々が必ず助けてくれますので、そういうことにはまずなりません。)
アニメーションも好きならば、まずはアニメーターとして従事するなかで、モデラーに転身するチャンスを勝ち取る。
前提として、アニメーションに関心がなく、不誠実なやり方として、このような方法を取り入れようとする方のいないことを、切に願います。
慢性的な人材不足に悩まされるアニメーションの現場は、参入のハードルが比較的低く、まずはここで仕事の流れを掴み、実際的に完成されたモデルに触れるなどして経験も積み、転身するチャンスが到来した際に、モデラーとしての席を勝ち取る、ということは可能かと思います。
チャンスはどういったかたちで到来するか。
モデラー粋に空きが出た場合、新規プロジェクト発足に立ち会うことになった場合、アニメーション作業が捗り十分なスケジュールが確保できた場合など、様々です。普段からディレクターと十分なコミュニケーションを取っておき、加えて、納品できる実力を示しておくことが必要です。
コロナ以前、以後。
ゲーム業界は、コロナをきっかけに大きく変化していく可能性があります。コロナ以前の情報を元にした本記事は既に過去のものとなってしまっている可能性も否定できませんので、過信しないようお願い致します。
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