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「JAMPの視線」No.9(2020年3月1日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループメールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
③JAMP活動日記
④メディア掲載情報
⑤インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2020年3月1日

農林中金バリューインベストメンツが完全成功報酬制を採用した投資信託設定を発表したかと思うと、野村アセットが受託銀行・販売会社取り分も含めて完全ゼロ報酬の投資信託をつみたてNISA向けに設定することを発表する等、従来型の資産運用サービスの代表商品である投資信託で「無料化」の動きが始まったように見受けられます。
Twitter等では、ブロガー投資家を中心に、主にサービス利用者である投資家の立場からこうした動きを歓迎する声も少なからず見られますが、私は個人的にこのような動きが資産運用ビジネスを不健全なものにし、長期的にはサービス品質にも悪影響を及ぼすリスクがあるように懸念しています。
弊社は、個人向け投資・資産運用サービスの世界において、ブローカレッジ及びアセマネ領域からサービス付加価値と事業利潤が消失しつつあり、今後は資産運用アドバイス領域がサービス・ビジネスともに主戦場になるという予想を以前より発信してきました。
ただ、昨秋からの主要オンライン証券の動きをみるに、米国証券業界とは異なり、収益源の分散が十分にできていないにも関わらず、外形だけ「無料化」を模倣し、自らの首を絞めているように感じる証券会社が少なからず存在することを懸念しています。
一方、アセマネ業界の状況は、こうした証券業界以上に深刻であり、オンライン証券の登場から約20年かけてブローカレッジ事業利潤が消失しつつあるのに対し、アセマネ事業利潤は同様に自らの首を絞めるチキンゲームでより速いスピードで利潤を放棄しつつあるように思われます。
リスク管理等システム提供・運用や商品プラットフォーム運営、ファンド内株式のレンディング等の他の収益源を確保したうえでアセマネ事業での投資運用付加価値に対する利潤の低減を進める米国とは異なり、純粋な運用報酬に依存するしか手段を持たない日本の運用会社が、その唯一の収益源を細める動きを加速する判断をいかに正当化すべきでしょうか。
確かに、投資信託の数が6,000本を超えるまで飽和しており、類似の投資運用戦略が複数本ある状況においては、サービス利用者にとってコスト水準が重要な判断材料となり、報酬率の低下圧力の発生は避けられません。但し、そのことと自ら無思考・無戦略に報酬を非合理的な水準にまで切り下げる行動とは全く別の意味合いを持ちます。
そもそも、投資信託というサービスの提供付加価値は、結果としてのリターンのみならず、ベンチマークとする金融商品市場指数の設計・運営やそれに基づく等の投資運用判断、金融原資産売買執行、リスク管理、投信というビークル組成・運営・販売に関わる法規制対応等、一連のプロセスから構成されているもので、コモディティ化の流れのなか、水準の低減や利潤の消失はあり得ても、報酬ゼロ(無料化)というのは、他に隠れた収益源や長期的視野に立った戦略を潜ませていない限り、論理的に正当化することは困難です。
業界全体への影響を考えた場合、「現在も投信事業収入の多くは運用報酬が厚いアクティブ投信であり、一部のインデックス商品の運用報酬引き下げの影響は限定的」という意見は決して間違いではなく、一部で報酬切り上げや無料化が進んだところで、全体に対する影響は確かにまだ大きくないのでしょう。
ただ、残念なことに、全体の収益源やパイを拡大し、そのなかでシェアを確保するという長期的な戦略性がそこには見えず、限られたパイをどのように奪い合うか、更に低次元なうがった見方をすると、経営視点ではなく、部門や担当者の評価向上の最適化を優先する判断のように思えてなりません。
加えて、「報酬引き下げをすることで顧客である個人ユーザーの利用意欲が沸き、裾野や全体のパイが拡大する」という見立てに至っては、資産運用サービスが普及しない本質的な理由や顧客課題等から目を背け、「コストさえ下げれば、顧客も利用するだろう」という安直な姿勢がうかがわれます。
繰返しになりますが、投資信託の運用報酬切り下げや無料化の動きそのものの影響は、確かに足もともしくは当面の間は限定的に留まるのかもしれません。ただ、その背景に垣間見える「戦略性の無さ」や「顧客課題等を直視しようとしない姿勢」がアセマネ業界の先行きの暗さを示唆するように思われ、絶望的な気持ちで目の前で進むチキンゲームを観察しています。

NewsPicksダイジェスト(2020年2月24日~2020年3月1日)

2020年2月24日
【スタートアップ 投資家1人が決める企業価値】
大原コメント→
本記事の主な論点は非上場企業の株価算定の困難に関するものですが、私は記事後半で言及されている非上場企業の投資家と上場企業の投資家の断絶に問題意識を持っています。
米国においては、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/4660824?ref=user_121187

2020年2月25日
【野村アセット、信託報酬ゼロ%の先進国株式投信を設定】
大原コメント→
金商ブローカレッジ事業から利潤が消失しつつあるなか、次はアセマネ事業からの利潤消失を予想していますが、日本では一部の資産運用会社が主導する自己目的化した報酬切り下げの「チキンゲーム」がそのスピードに拍車をかけているように懸念します。
投資運用付加価値以外に・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/4664332?ref=user_121187

2020年2月28日
【英規制当局、4大会計事務所の解体計画を提示】
大原コメント→
経営戦略・管理をサポートするコンサルティング事業と監査事業を同じ主体が営むことが利益相反リスクが濃いのは言うまでも無く、日本でも大手監査法人は殆ど(デロイトトーマツ以外)は別法人に分けていると認識しています。
ただ、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/4676421?ref=user_121187

2020年2月29日
【NY株コロナショック 週間最大の下落、恐怖指数も急騰】
大原コメント→
リーマンショック時を超える過去最大と表現される程の株式市場の大幅下落を受け、投資信託やロボアドバイザーサービス等、既存の資産運用サービスのパフォーマンス悪化を懸念し、利用継続の是非を検討する意見がTwitter上でも少なからず散見されます。
ただ、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/4679188?ref=user_121187

JAMP活動日記

日本資産運用基盤の今月を振り返る「JAMP活動日記(2020年2月)」を公開しました。
日本全国でコロナウィルス感染リスクに対する懸念が高まるなか、弊社でも3月に予定していたセミナー開催を中止する判断をする等の対応を迫られました。一方、引き続き新興・海外金融機関の事業立上げ支援や金融機関の資産運用アドバイス事業転換のソリューション提供を行なうことに加え、新しく地域銀行等向けのクラウドコンサルティングサービスを立ち上げる等の新しい事業の種まきもはじめています。https://www.jamplatform.com/news/2020/02/29/1104/

メディア掲載情報          

■コラム・論考寄稿
2020年2月25日 弊社代表の大原が「IFAナビ」に寄稿しました。
「IFAにとっての「I」の必要性・重要性に関する考察」
https://www.jamplatform.com/news/2020/02/25/1076/

■インタビュー記事掲載
「金融ビジネス 最前線の変革者達」
第3回 Japan Asset Management・堀江智生代表取締役
https://www.jamplatform.com/news/2020/02/27/1079/

■メディア掲載 :「ファンド情報」での連載開始
代表の大原が資産運用業界誌「ファンド情報」で3月23日号から毎月1回の全4回で「従来型資産運用ビジネスの終焉 ~『利潤消失』チキンレースをどう生き残るか~」という連載を寄稿させて頂くことになりました。楽しみにお待ち頂ければ幸いです

インフォメーション       

■個別無料相談会
個別のご質問・ご相談会を無料で定期的に開いています。お気軽にお申し込みください。
https://www.jamplatform.com/consultation/

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