「JAMPの視線」No.242(2024年8月18日配信)
目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③インフォメーション
昨日は小学校4年生の長男が参加している野球チームのコーチ陣の集まりがあり、この秋からの大会参加の準備や今後のチーム編成等の話し合いが行われました。私自身は野球経験がないのですが、保護者が監督やコーチも務める手づくりの野球チームなので、週末に仕事がないときにコーチ見習い的なお手伝いをさせて頂いたり、大人チームの草野球の試合に参加させて頂いたりしています。昨夜も話し合いが終わった後、いつも通り会場の区民センターでそのまま夜中までお酒を飲むことになり、今日は二日酔いで少し辛いです。でも、子どもたちの活動を通じ、私自身も地元で横のつながりができ、一緒に野球を楽しんだり、お酒を飲んだりできるというのは楽しいなあと感じる今日この頃です。
さて、ここ数か月ほどの間にメディア等でも取り上げて頂いていますが、弊社がご支援させて頂いているゴールベース型ラップサービスをお取り扱いされる地域金融機関が増えてきたり、ご支援残高が増加してきたり(5月に100億円に到達しましたが、もう少しで200億円に到達する見込みです)と、ゴールベース型ラップサービスがようやく日本でも広がり始めている手ごたえを感じています。特に、私たちが以前から思い描いていた通り、最も親和性が高いと思われる地域銀行や信用金庫等の地域金融機関での広がりが顕著なことを感慨深く感じます。
振り返ってみると、地域金融機関と連携したゴールベース型ラップサービスの事業モデルを構想し、取り組み始めたのは私がマネックス・セゾン・バンガード投資顧問(現マネックスアセット)を立ち上げた頃からですので、もう10年弱前にもなります。当時は想い描いていたこの構想を話すと、「ファンドラップは大手証券会社がやるもの」「中堅証券会社やましてや資産運用会社がやるわけがない」「地銀がファンドラップなんて取り扱わない」「何もわかってない素人は引っ込んでいろ」等、かなり強い勢いで反対意見やアドバイスを方々から頂きました。
でも、当時から私は時間はかかるかもしれないけれど、間違いなく地域金融機関を通じたゴールベース型ラップサービスの広がりが証券・資産運用業界を襲うパラダイムシフトのひとつの表れとして現実のものになるという確信を持っていました。それは、「証券・資産運用業界での手数料の消失」と「販売バリューチェーンのガラガラポン(バリューポイントの移動/パワーバランスの変化)」という未曽有の現象が証券・資産運用業界のあり方を根本からひっくり返し、これまで常識とされてきたサービス・事業モデルがもはや成り立たない世界が来るということを予想していたためです。従来のサービス・事業モデルが破壊されるとともに、これまでなかった新たなサービス・事業モデルが登場する。そのひとつがまさにゴールベース型ラップサービスを根幹とする証券・資産運用会社等のプラットフォーム金融機関と地域金融機関等のアドバイザー機関との新しい事業連携モデルだと考えていたのです。
このような世界観が少しずつ世の中的にも認知されるようになり、業界の動きが具体化し始めたのは、2019年夏だったように思います。2019年8月26日に野村證券が山陰合同銀行と包括的業務提携を発表し、翌週の9月3日にSBIグループが「第4のメガバンク構想」を発表した2019年のあの夏です。
野村證券と山陰合同銀行の包括的業務提携の発表を目にしたとき、私は「ついに証券・資産運用業界の終わりが始まった」と腰が抜けそうなほどに衝撃を受け、それからの数日は興奮でほとんど眠れなかったことを覚えています。金融財政事情の編集部にお願いし、「地域銀行に迫られる事業モデル改革の方向性 - 従来型の事業モデルは限界、野村・山陰合銀の連携が改革の嚆矢に-」という論考を緊急寄稿させて頂いたりしました。振り返ってみると、2019年夏を転換期とし、証券・資産運用業界のパラダイムシフトの具体化が加速したのは間違いないように思います。
ただ、ゴールベース型ラップサービス・事業モデルの広がりということでいうと、大きな流れのなかに漫然と立っているだけではなかなか進みませんでした。パラダイムシフトの流れが動きつつあることやその流れが大きく、強くなっていることは顕わになり、その方向性のひとつに地域金融機関と連携したゴールベース型ラップサービスの事業モデルがあることは間違いないと思われるにも関わらず、そのサービス・事業モデルを具体化する動きにはなかなかつながらなかったのです。
今になって感じるのは、やはり人間はまだ実際に見聞きしたことが無いものをひとつのあり方として認識するのはできないということです。最近よく例に用いるのですが、例えば、iPhoneが登場する前にiPhoneの説明を口頭でしたとしても、なかなかその付加価値を理解してもらうのは容易ではなかったと思います。「長方形の平べったい携帯電話がベースになっていて、その携帯電話の片面の殆どが液晶パネルで、そこに『アプリ』と呼ばれる多くのボタンが並んでいて、用途に応じてその『アプリ』を押してサービスを利用するんだ」と熱っぽく話しても、正確にそれを理解するのはほとんど不可能でしょう。そうであるならば、実際にそのものをゼロから形づくり、目の前の具体として見て、触って、試して、認識してもらう以外にやり方はありません。
そのため、弊社・日本資産運用基盤は、2020年頃から事業パートナーであるQUICKと連携し、様々な証券会社や資産運用会社のゴールベース型ラップサービス事業を新しく立ち上げ、ともに地域金融機関でのサービス取り扱いを広げるご支援をするという形で、日本の証券・資産運用業界における「iPhone」の具体化に取り組んでまいりました。この取り組みはまだまだ端緒についたばかりではありますが、「『iPhone』とは何ぞや」という最も困難なフェーズはようやく乗り越えることができたのかなという手ごたえを感じています。
実は、弊社が一昨年から取り組んでいる日本版ファンド・マネジメント・カンパニーも同じ文脈での取り組みです。一昨年に日本版ファンド・マネジメント・カンパニー構想と具体的始動を発表し、昨年秋に三菱UFJ信託銀行とともに九州みらいインベストメンツ様の案件のお手伝いを開始した時も、「結局これっていままで日系運用会社がやってきた『ハコ貸し』だよね」というご意見やアドバイスを多く頂きましたし、今なお同じようなご意見を頂戴することは少なくありません。
当然ながら、私たちは従来からあるサービス・事業モデルの模倣を今さらながらにしたいわけではありません。ゴールベース型ラップサービスと同様、弊社・日本資産運用基盤のこの取り組みの背景には、「証券・資産運用業界での手数料の消失」と「販売バリューチェーンのガラガラポン(バリューポイントの移動/パワーバランスの変化)」という未曽有の現象が証券・資産運用業界のあり方を根本からひっくり返し、これまで常識とされてきたサービス・事業モデルがもはや成り立たない世界が来るという考えが存在します。
従来のサービス・事業モデルが破壊された今後の世界においては、証券会社や資産運用会社、地域銀行等、いずれの金融機関においても、事業運営に係る機能・工程を全てゼロベースでアンバンドルし、自らの存在・競争力を支える源泉である機能・工程に集中し、それ以外の機能・工程は外部の金融機関やサービスプロバイダーと連携することが前提となります。そこで必要とされる機能・工程を資産運用事業支援プラットフォームとして私たち・日本資産運用基盤が提供する。その役割は、ゴールベース型ラップサービスにおいても、日本版ファンド・マネジメント・カンパニーにおいても、同じです。その意味で、日本版ファンド・マネジメント・カンパニーもゴールベース型ラップサービスと一体的に金融機関の資産運用事業をご支援するソリューションであることに変わりはなく、一体的なものだと考えています。
いまになって感じるのは、時代が大きく転換している時は、その転換の事実を等しく認識し、今後進むであろう方向性やあるべきサービス・事業モデルを具体化することは困難極まりないということです。そのような時は、多少強引にでも、まずはざっくりとした形でも、「iPhone」を開発してみせるしかないのだろうと最近改めて感じます。
弊社・日本資産運用基盤は、証券・資産運用業界が大きな転換期を迎えているいま、新しい時代のサービス・事業モデルのあり方を模索し、提示できるよう、これまで誰もやったことがない取組みであっても果敢に挑戦し、今後も様々な「iPhone」をゼロから開発してまいりたいと思います。引き続き金融業界の皆さまのご指導を頂きますようお願いいたします。
【ふくおかFG社長、「現役メジャー級」の人材採用も-市場運用多様化】
大原のコメント→
過去長期的に金融業界が経験していない「金利のある世界」「金利上昇に備える世界」を迎え、様々な強みを持つ投資運用・リスク管理の専門人材への需要は強まっていることは間違いありません。
一方、そのような専門人材の所在はやはり首都圏に偏ってしまっていることは事実であり、巨額の有価証券運用事業を抱える地方銀行の専門人材確保の問題式は強いものがあることはこのインタビュー記事からもうかがわれます。
ただ、「あくまでも目安。本当にレベルの高い人に来てもらえるのならば相応の処遇でお迎えする」とのコメントはあれど、・・・(続きを読む)
【(社説)長期・分散重視の金融教育を - 日本経済新聞】
長澤のコメント→
J-FLECでは、認定アドバイザーがお金に関する知識や判断力を習得できる講義や個別の相談を行うとのことですが、知識を増やすことが金融経済教育のゴールではないと思いますので、得た知識をもとに実際の行動に結びつける判断力までを養うことは重要だと思います。
新NISAを契機とした投資への関心の高まりを受け、様々なセミナーが開催されているが、中には怪しいものも見受けられるそうです。金融経済教育により投資に踏み出すことも当然重要ですが、・・・(続きを読む)
【3メガバンク、リモートで接点強化 三井住友銀は運用提案6万件】
長澤のコメント→
コロナ禍で一気に広まったオンラインでの会議・面談ですが、個人向けの資産運用相談においても、銀行の店頭まで行くのは面倒だが、自宅に訪問されるのはもっと嫌だという顧客も多いと思われ、今後増々増えていくのではないかと思われます。
大手金融機関を中心に決まった担当者がいるような対面営業の軸足を富裕層顧客に移す一方、若年・資産形成層はネット系証券の一人勝ちともいわれる中、中間層、特に中高年層が保有する生活密着度の高い資金(老後資金等)への資産運用アドバイスニーズへの対応が、・・・(続きを読む)
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