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「JAMPの視線」No.222(2024年3月31日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2024年3月31日

 子供達が春休みということで、今日から私以外の家族は滋賀県にある妻の実家に帰省しています。家族を東京駅まで送り、溜まっていた仕事を片付けた後、1年ぶりくらいに近くの銭湯を訪れ、のんびりと湯船につかってきました。普段の自宅のお風呂だとなんだかんだ仕事関係の本を読みながらなので何も考えずにのんびりするということがないのですが、今日は久しぶりに頭をからっぽにしてリラックスすることができました。弊社は今年から決算月を3月から2月に変更したため、私自身は既に新年度に入っているものの、金融・資産運用業界的には明日から新年度が始まることになりますので、このタイミングで心身を整えることができて良かったです。改めて新しい年度もどうぞよろしくお願いいたします。
 さて、先週3月25日に弊社がご支援するアイザワ証券様と北陸最大の地域証券会社である今村証券様がゴールベース型資産運用サービスの提供で提携することを発表されました。サービスの提供開始は明日4月1日からを予定されています。弊社はゴールベース型資産運用サービスを運営するための業務運営システムや業務BPOサービス等を提供する裏側の黒子の役割ではありますが、両社のご事業の成長に貢献できるよう微力を尽くしてまいります。
 過去数年にわたって証券会社やロボアドバイザー会社を含む運用会社等が地域金融機関と提携し、地方の一般生活者に投資一任サービスを提供する動きが広がっていますが、必ずしも一様にうまくいっているとは言えない状況にあると認識しています。厳しい言い方をしてしまうと、提携のプレスリリースに注目が集まるものの、実際の成果はあまり出ない「プレスリリースゴール」の事例も少なくないように感じています。私自身も前職のマネックス・セゾン・バンガード投資顧問(現・マネックスアセット)時代から地域金融機関との提携を通じた投資一任サービスの提供モデルの実現と推進を試行錯誤してきた経験から、本事業モデルの成功には、①対面提供に最適化したサービス、②地域金融機関にメリットのある事業モデル、③証券・運用会社側の営業支援体制という3点が少なくとも備わっていることが必要だと考えています(あくまで「少なくとも」という必要条件であり、十分条件ではないことは言うまでもありません)。
 例えば、地域金融機関との提携に難航しているロボアドバイザー会社やオンライン証券会社等の事例をみるとこれら3点はわかりやすいのではないかと考えます。
 まず、①についていうと、ロボアドバイザーサービス等はそもそも非対面提供に最適化したサービスとなっており、それをそのまま対面提供の現場に持ってきても、現場の営業員の方の使い勝手や付加価値の出し方等の点ではかならずしも適合しません。継続的なサポート提供に必要となる顧客管理(CRM)機能等を備えていないサービスが殆どであるように見受けられ、それではいかにトップダウンで指示が出ても、現場の営業員の方々はそのサービスを提案しようという気にはならないのも仕方ないと思われます。
 ②については、非対面前提のサービスの場合、多くは非対面提供ゆえにお客様が負担する手数料水準を低く抑えていることが多いため、対面営業で人的リソースを配賦するととても収益性が見込めなかったり、別の手数料体系を設けたとしても、メインの非対面サービスとの提供付加価値の差別化を明確に設けることができなければ、お客様の納得度が低くなってしまったりするという問題があります。加えて、多くのサービスでは、お客様の運用資金をお預かりするのがロボアドバイザー会社やオンライン証券会社等の口座であり、地域金融機関にとってはお客様の資金の社外流出となり、その点でも真剣に提携を推進するインセンティブが乏しい事業モデルになってしまっています。
 最後の③についても、ロボアドバイザー会社やオンライン証券会社等においては軽視されがちですが、重要な要素だと考えています。投信や保険商品等においても、実際に現場の営業員がお客様に提案・提供するためには、商品・サービスを統括する証券・運用会社等からの営業支援がなければ、推進は困難です。この点、そもそも主な事業モデルが非対面での商品・サービス提供というロボアドバイザー会社やオンライン証券会社等でこの点を重要だという理解を持ち始めても、実際に強みとする程までに十分にそのような営業支援機能やリソースを持つことは難しいのではないかと思われます。
 逆にいうと、旧来型のファンドラップ商品であれ、新たに広がりつつあるゴールベース型投資一任サービスであれ、証券・運用会社と提携して投資一任サービスを取り扱うことを検討しようとする地域金融機関にとっては、「少なくとも」これら3点がその提携でどれ程に満たされるのか、またそれ以外にどのような事業メリットが見いだせるのかという視点が判断軸として重要になってくると考えます。
 2015年に日本に帰国してからずっと主張していることですが、これからの日本の資産運用ビジネスは単に商品を提供するモデルではなく、より踏み込んでお客様の将来設計をサポートするゴールベース型投資一任サービスの提供というモデルに転換すること、また地域金融機関と提携した事業運営のモデルに展開するものになっていくことは間違いないと考えています。弊社・日本資産運用基盤グループは、単に裏側の支援ソリューションを提供するだけではなく、そのような事業モデル転換や地域金融機関との提携の展開も踏み込んでご支援できるように今後も努めてまいります。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

【「PayPay資金調達」開始 店のPayPay売上を事前に受取れる】
大原のコメント→
 主要金融機能のうち「資金移転(決済・送金)」機能やスマートフォンという接点の機能横展開としては、「資産運用」や「リスク移転(保険)」というよりも「資金供与(融資)」であるため、このようなサービス展開は非常に親和性が高いと思います。

【ネット証券の投信積立、クレカ上限2倍に 薄利に拍車も】
大原のコメント→
 クレジットカード積立ての上限引き上げ等は個人のお客様のサービス利便性が高まることで喜ばしいことは間違いないんですが、手数料の引き下げ競争も同時に進むことで資産運用ビジネスがますます儲からなくなっていく流れに拍車がかかることには強い懸念を持っています。
 単に手数料引き下げのみで商品・サービスの魅力を高めようとするのみならず、新しい付加価値を加えることで・・・(続きを読む)

【米ブラックストーンCEO「日本は新たな成長期に」個人向け商品拡充】
大原のコメント→
 インフレへの転換や新NISA制度の開始等の後押しを受け、家計金融資産がリスク性資産を用いた資産形成・運用に大きく移動することが期待される一方、公開資産を対象とする従来型投資運用商品は既にコモディティ化しており、サービス付加価値とビジネス収益性の両立を実現する選択肢のひとつとして非公開資産を投資対象とする投資運用商品への注目が集まっています。
 資産運用立国で海外資産運用会社の日本進出が増加することが期待されていますが、従来型投資運用商品のビジネス収益性の成長余地は比較的小さく、・・・(続きを読む)

【脱純血主義へ、日生がキャリア採用強化-半年で70人、出戻りも歓迎】
大原のコメント→
 新卒プロパー中心の組織構成は長年の関係構築を前提にしたコミュニケーションコストの抑制等のメリットはあるかもしれませな、独立心旺盛な優秀な人材が常に組織外にも活躍の場を求める傾向が強まっている昨今の状況を鑑みると、長期間にわたって同じ組織に残る人材のみを登用するリスクは小さくなく、・・・(続きを読む)

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

【脱・銀行送客モデル、事業多角化で変える企業文化】
長澤のコメント→
 一般論として、銀行が「優越的地位の濫用」には留意しつつ、顧客基盤を活用してグループ会社へ送客すること自体に問題はないものの、グループ会社、例えば証券会社の営業力、特に若手の営業員には「銀行送客」が当たり前となって、スキルが低下しているという話を聞きます。
 また、一昨年問題となった仕組み債販売では、本来証券会社の営業員が紹介された顧客の投資方針や投資経験等の属性を踏まえて仕組み債を販売することがふさわしいか判断すべきところ、収益性の高い仕組み債を販売して欲しいという銀行からの要請を断れず不適切な勧誘販売を繰り返すこととなったとされ、・・・(続きを読む)

【「もうやってます、ネット系で」店頭で勧誘するもスルー…今さらNISAキャンペーンをする地銀のつらい現状】
長澤のコメント→
 販売手数料の低さや品揃えを含む利便性を考えたらネット証券と競合することは難しいので、地域金融機関の持つアドバンテージと提供付加価値を考えると、地元での高い信用と顧客を熟知していることを武器に、顧客のライフプランに寄り添った、対面での資産運用アドバイスに注力していくほか道はないと思われます。
 こうしたことを言うと、営業員のスキルに課題があるという声も聞かれるのですが、証券会社の営業員のように相場を語り、金融商品の知識の豊富さという点では対抗できないかもしれませんが、顧客のニーズを徹底的に聴くための研修と、それを商品・サービスに結び付けることができるようなサポートツールの導入があれば、・・・(続きを読む)

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