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「JAMPの視線」No.196(2023年10月1日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③お知らせ・ニュースリリース
④メディア掲載情報
⑤インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2023年10月1日

 先週末は妻がご近所の公園仲間のママ会で不在にしていたため、8歳と3歳のふたりの息子と3人で晩ご飯は少し離れた駅の駅前にあるサイゼリヤに食べに行きました。サイゼリヤは久しぶりに行ったのですが、改めてそのコストパフォーマンスの高さに驚愕しました。白ワインをデキャンタ(大)で注文しつつ、3人で好きなものをたらふく食べたのですが、お会計は合計で税込み2,650円とあまりの安さにレシートをダブルチェックしてしまいました。過去2年ほど物価が上昇しているなか、このコストパフォーマンスの高さを維持しているのは素晴らしいですね。子供たちが大食いになりつつあるなか、家計に優しいサイゼリヤは我が家のヘビーローテーションになりそうです。
 さて、共同プレスリリースでも公表させて頂き、各種メディアでも報道頂きましたが、弊社が三菱UFJ信託銀行と共同で運営する日本版ファンド・マネジメント・カンパニー(FMC)ソリューションがいよいよ稼働開始となり、第1号案件として肥後銀行の100%子会社である九州みらいインベストメンツ様に採用頂き、共同で機関投資家向け私募投信の運用を開始しました。本ソリューションを活用することで、九州みらいインベストメンツ様は、自ら投信委託業ライセンスを登録したり、運営負担の重い投信計理システム等を保有したり、専門人材を多く採用したりする必要なく、比較的負担が少ない形で投信ビジネスに取り組んで頂くことが可能となります。
 まさに、岸田首相が先月下旬にNYで「資産運用会社が投資運用に集中できるような事業基盤の提供が重要である」旨の講演をされていましたが、弊社の日本版FMCソリューションを活用頂くことで、資産運用会社は自らが強みとする投資判断・運用工程に集中することができ、全体として最適な役割分担で効率的に投信ビジネスを営むことが可能となります。これから「資産運用立国」諸政策のもとで新興・海外資産運用会社が日本の資産運用市場で新たに投信ビジネスに参入する際の「基盤」として活用頂けることに加え、今回の九州みらいインベストメンツ様の文脈でいうと、地域銀行グループが自らの投資運用機能を高度化し、自行グループ内のリソースを最大活用して資産運用ビジネスに取り組むなか、効率的な事業運営スキームとして広がるという可能性も展望しています。
 一点だけ足もとの各種メディアでの報道やそれに対する業界内外の反応に対して意見を申し上げると、今回のスキームで採用する「投信基準価額の一者計算」の取組みは、もちろん日本の資産運用業界の長年の非効率な業界慣行を打破する画期的なものであり、それを実現させる三菱UFJ信託銀行の専門性や挑戦の姿勢等はパートナーながら素晴らしいと感じるものの、資産運用ビジネスの非効率性の解消という点では、日本版FMCソリューションが提示する新たな事業運営スキームがメインであり、「投信基準価額の一者計算」はあくまでそのスキームの効率性を更に補強するための施策であるということを取り違えてしまうと、今後の資産運用ビジネスの効率化の取組みの方向性も混乱しかねないということです。
 私が長年にわたって強く主張させて頂いておりますが、日本の資産運用ビジネスの非効率性の大きな要因のひとつとして、日本ではアセットマネジメントとファンドマネジメントが混然一体のものとなってしまっており、それらが別のビジネスとして独立して運営されている欧米諸外国と比べて非効率になってしまっているという状況があります。即ち、資産運用会社の強みであり付加価値創出の最大の源泉は投資判断・運用というアセットマネジメント工程であるにも関わらず、それを投資信託というスキームでお客様に提供しようとすると、自らファンドマネジメント工程まで担わなければならないところに日本の資産運用業界の非効率性や参入障壁の高さの原因があると私は考えています。
 弊社と三菱UFJ信託銀行が提供する日本版FMCソリューションは、アセットマネジメントとファンドマネジメントのビジネスを明確に切り分け、資産運用会社の役割を投資判断・運用に限定して集中してもらうという「基盤」を提供するところを主眼としています。「投信基準価額の一者計算」は、弊社と三菱UFJ信託銀行が担うファンドマネジメント工程を効率化するための施策に過ぎず、アセットマネジメントとファンドマネジメントの切り分けという私たちが今回の取組みで最重要と位置付けるところに直接関係するものではありません。
 これから日本が「資産運用立国」として資産運用ビジネスを大きく成長させようとするなかでは、このようにアセットマネジメントとファンドマネジメントを区別して事業戦略を組み立てる視点が重要であり、アセットマネジメント事業に集中したい資産運用会社は日本版FMCソリューションを活用し、自らは過去経緯等もあってファンドマネジメントまでも担うという判断を行なう資産運用会社は「投信基準価額の一者計算」を採用してその事業運営負担を可能な限り効率化する等、その事業戦略に応じたリソース配賦の判断が重要になると考えます。
 ちなみに繰り返しになりますが、今回の取組みのメインは日本版FMCソリューションであり、「投信基準価額の一者計算」はそれを補強する位置づけであるとは言うものの、「投信基準価額の一者計算」の標準化の実現の意義が非常に大きいことは言うまでもなく、高く評価されてもされ過ぎることはないと考えます。メディア報道等では今回の「投信基準価額の一者計算」の実現を弊社と三菱UFJ信託銀行が成し遂げたというトーンで紹介頂くことはありますが、弊社は単に三菱UFJ信託銀行の一者計算パッケージサービスをユーザーとして利用させて頂くだけの立場であり、その実現の手柄を誇るべき立場にはありません。正当に評価されるべきは弊社ではなく、実現の主体となった三菱UFJ信託銀行であり、これまでパイロットファンドで実証実験等を共同で取り組んできた野村アセットマネジメントやSBIグループ、研究・実証実験支援を行ってきた投資信託協会等の業界関係者の皆さまであることは、最後に改めて敬意とともに付言させて頂きます。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

2023年9月23日
【楽天証券、新NISAの取引手数料を無料化 米国株式・海外ETFも】
大原のコメント→
 SBI証券及び楽天証券の株式売買委託手数料の無料化や新NISA移行を目前にして、金融機関の手数料引き下げ競争が激しさを増しているように感じます。
 ただ、株式等売買委託に代わる新たな付加価値と収益源泉を業界として明確に確立できていない状況であり、その意味においてこの手数料無料化の動きが業界全体に一気に普及するということは考えにくいように思います。
 一方、水が高いところから低いところに流れるように、一部の証券会社ででも手数料無料化が実現された世界においては、利用者が手数料無料の証券会社に移動する流れは避けられないということも感じます。
 後追いにはなるものの、資産運用アドバイス付加価値の提供による新たな事業モデルの構築が早期に進み、・・・(続きを読む)

2023年9月24日
【「岸田に投資を」第3弾 運用立国へ国内勢の育成急務】
大原のコメント→
 資産運用業の事業モデルは単純化すると損益分岐残高までいかに早く運用受託残高を積み上げるかというものであり、その意味で負担コストを低減し、損益分岐残高を引き下げる効果のある登録プロセスの簡素化やコンプラ・バックオフィス業務の外部委託に関する規制緩和、(枝葉の議論にはなるものの)投信基準価額の「二重計算」の解消等は重要な取組み施策だと考えます。
 一方、これら施策は確かに損益分岐残高の引き下げには効果的であるため、新興・海外資産運用会社の新規参入の促進には一定の効果はあるものの、これら施策だけで損益分岐残高までの運用受託残高の積上げ確度が高まるわけではなく、十分ではないとも思われます。
 個人向け資産運用商品の商流に新興運用会社が参入するのが困難であったり、年金基金等の機関投資家が新興運用会社への運用委託に消極的であったりするなか、コストの引き下げが見込めたとしてもビジネス獲得が見込めなければ、・・・(続きを読む)

2023年9月26日
【三菱UFJ投資信託、投信コスト低減へ 価格の二重計算見直し】
大原のコメント→
 弊社・日本資産運用基盤グループの子会社のJAMPファンド・マネジメントが三菱UFJ信託銀行と共同で開発・提供する日本版ファンド・マネジメント・カンパニー(FMC)ソリューションの第1号案件として、肥後銀行の子会社である九州みらいインベストメンツ様と私募投信を設定しました。
 当該ソリューションは、日本で初めて基準価額の一者計算を標準装備しており、投資判断・運用を担う資産運用会社と投信委託業務を担うJAMPファンド・マネジメント、投資計理業務等のバックオフィス業務を担う三菱UFJ信託銀行の3社が、重複ない形で役割分担を行なうことで、効率的な投信商品の運用が可能となります。
 記事にも紹介されている通り、地域銀行が自行グループ内で資産運用会社を設立する動きが再び進もうとするなか、自ら投信委託業ライセンス登録を行ない、・・・(続きを読む)

2023年9月27日
【楽天証券、ロボアド最大手と提携 預かり資産拡大狙う】
大原のコメント→
 昨日の敵は今日の味方。SBI証券と関係が良くなかったFOLIOがSBIグループ入りしたり、ウェルスナビが楽天証券と組んだりと、資産形成世代向けオンライン資産運用サービスはますます戦国時代の色彩を強くしてきていますね。
 株式売買等委託手数料の無料化等で失われる収益源の代替の確保に各社がそれだけ必死だという表れなのだと感じます。

2023年9月27日
【国内初、基準価額の「1者計算ファンド」を設定=業界の慣行見直し、海外勢の参入容易に-三菱UFJ信託と日本資産運用基盤など】
大原のコメント→
 2015年に日本に帰国してからずっとゴールベースアプローチ型ラップサービスの普及に取り組んで来ていますが、日本資産運用基盤という資産運用業界の「基盤」の会社として実現したい一丁目一番地は、実はこの基準価額の一者計算を標準装備した日本版ファンド・マネジメント・カンパニーソリューションでした。
 27歳から35歳までの学びの7年半をヨーロッパで駐在させて頂いた自分的には、アセットマネジメントとファンドマネジメントは別のビジネスとして成立しているのが当然で、・・・(続きを読む)

2023年10月1日
【変わる証券の街「兜町」 新興金融プレーヤーが集積】
大原のコメント→
 平和不動産が兜町・茅場町エリアで展開する金融スタートアップコミュニティ「FinGATE」に本拠を構えるスタートアップ企業の経営者として、過去数年でこのコミュニティが充実してきたことを実感しています。
 弊社がFinGATE BASEに入居したのは2018年秋のことですが、それから入居スタートアップ企業数が増えてきただけでなく、界隈の再開発も並行して進み、オフィスビルやカフェ、レストラン等が充実し、・・・(続きを読む)

2023年10月1日
【富山銀、執行役員を外部から登用 専門人材そろえ業務高度化】
大原のコメント→
 富山銀行様は弊社も有価証券運用事業のご支援でご一緒させて頂いておりますが、中沖頭取のリーダーシップのもと、積極的に外部の専門人材の採用や弊社のような外部知見の活用等を進められている印象を持っています。
 地域金融機関業界も他の金融業態と同様に大きな変化を求められる局面に差し掛かるなか、これまであった「純血主義」を脱却し、積極的に外部人材・知見を活用する姿勢が求められることは言うまでもなく、・・・(続きを読む)

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2023年9月24日
【80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態】
長澤のコメント→
 こうした小規模な証券会社の顧客は、昔からの顧客で以前は株取引を活発に行っていたのかと思われますが、本来であれば一定年齢を超えてきたところで、取引を制限するとか、家族の同席を求めるなどのルールが存在するものですが、経営陣主導でルールを緩めたのであれば、ガバナンスが形骸化していると言われても仕方がないかと思われます。
 手数料の無料化が進み販売手数料に依存したビジネスモデルの持続性が懸念される中、規模の大小に関わらず、経営者がしっかりした経営理念を持ち・・・(続きを読む)

2023年9月24日
【三井住友・三菱UFJ、新卒で専門人材育成 採用枠拡大へ】
長澤のコメント→
 市場運用やIT関連のコース別採用は以前からあったかと思いますが、三菱UFJ銀行の「カスタマーサービス」コースに注目しています。
 記事にあるように「支店営業をせずに希望の部門で働けるのは大きい」と話す人がいるように、支店営業を、そこで実績を上げて法人営業部門や本部で働くためのワンステップとして捉えている銀行員が多いのは否めない事実かと思います。一方、リテール部門でしっかり実績を積むことで、・・・(続きを読む)

2023年9月25日
【金融庁、「隔月分配」けん制 新NISAへ趣旨強調】
長澤のコメント→
 分配型商品は高齢者を中心にニーズが根強い面があるということを全く否定するものではありませんが、以前ある証券会社で運用提案の際に顧客の分配金ニーズを確認する取り組みを強化したところ、分配金よりも値上がり益を望む顧客のニーズが顕在化したとの記事を読んだことがあります。
 顧客のニーズといっても、販売員の聞き方にも左右され、例えば年1回しか貰えないのと、毎月貰えるの、どちらがいいでしょうか、と聞かれたら、取り敢えず、貰えるものは貰っておこうという気になるのが一般投資家かと思います。分配金を使わずに再度投資をした場合、NISAの場合普通分配金にも税金はかかりませんが、・・・(続きを読む)

2023年9月28日
【金融庁、外貨保険販売にメス 不十分な説明・報酬是正も】
長澤のコメント→
 外貨建て一時払い保険を含むいわゆる貯蓄性保険は、リスク性金融商品の中でも、契約期間が長いという特徴や、相続や生前贈与などを目的として契約するケースが多いことから高齢顧客が多いという特徴があり、そのため、募集時に十分な説明が必要であることに加え、契約後のフォローアップの必要性・重要性は他の商品と比べても非常に高い商品です。
 また、記事にあるように「顧客の最善利益」を図ることが義務化される予定であることを踏まえれば、販売金融機関は単に苦情の発生を抑えるだけではなく、当該保険を提案し、契約してもらうことが、顧客のライフステージ・ライフプラン・資産状況等からみて、・・・(続きを読む)

2023年9月28日
【三井住友銀行、運用者をDSアセットに転籍 成果で厚遇】
長澤のコメント→
 メガバンクであれば、既にグループ内に投資信託等を運用している資産運用会社があるので、こうした人材を転籍させることは比較的容易で、過去には証券会社に異動先の報酬体系で転籍させるといったこともあったかと思います。
 一方、地域金融機関においても、最近、資産運用会社を設立する機運が高まっていますが、新たにフル装備で会社を立ち上げるとなると、投信計理システムの導入や事務担当者等の確保にコストがかかることになり、本来の目的である運用専門人材の確保・育成や投資哲学の具現化に必ずしも注力しにくいのではないかと思われます。こうした状況を金融庁のプログレスレポートでは、本邦では「事務」と「運用」が同一組織内で一体的に運営され、・・・(続きを読む)

お知らせ・ニュースリリース

■地銀有価証券運用に関するWebミニセミナーの開催について
9月13日(水)に開催した地銀有価証券運用事業に関するWebミニセミナーの資料・動画を公開しました。

「有価証券運用セミナー~地域金融機関が抱える課題と今後の展望~」

https://www.jamplatform.com/news/2023/09/15/4109/

メディア掲載情報

■メディア掲載:ニッキンでの弊社ソリューションの紹介

弊社日本版ファンド・マネジメント・カンパニーソリューションの提供開始について「ニッキンONLINE」でご紹介を頂きました。

「三菱UFJ信託銀・JAMP、私募投信の一者計算実現 肥後銀子会社が採用」

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