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「JAMPの視線」No.180(2023年6月11日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③メディア掲載情報
④インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2023年6月11日

 4月21日に公表された「資産運用業高度化プログレスレポート2023」で取り上げられた我が国の資産運用業界が発展するに際しての課題に関して、10回にわたって私の私見を徒然と述べさせて頂く連載企画をさせて頂いています。第5回となる今回は、「外部委託運用や独立・非独立等の運用会社あるべき論」という切り口で感じるところを述べさせて頂きます。
 資産運用会社のあるべき論が語られる時、外部委託運用の有無やその依存度/程度、金融グループ内の非独立系の会社か独立系の会社か等で色々な意見が存在しますが、今回のプログレスレポートで提起されている問題意識や今後の方向性等は、資産運用ビジネスの実態に即した現実感あるものであるように思われ、私は個人的に共感するところが多かったように感じます。
 まず、海外資産のアクティブ運用で外部委託を活用することについては、あたかもそのこと自体が悪であるようなインハウス運用原理主義的な意見も一部で耳にしますが、今回のプログレスレポートで整理されているように、資産運用会社が魅力的な資産運用商品・サービスを提供するための「必要性」や自らの資産運用能力を高度化する「機会」や「効果」というメリットは小さくないと私は感じています。パッシブ運用や定量的手法を用いたアクティブ運用等であれば日本から海外資産の運用を行なうことも十分に可能でしょうが、定性的手法に基づくアクティブ運用を行なう場合には、情報通信技術の発達によってひと昔前に比べると前提となる投資運用環境は整備されたとはいえ、日本からそれを行なうことには限界があり、海外拠点等において高度な投資運用・リスク管理体制をゼロから構築するコストや収益性等を鑑みると、そこで外部の資産運用会社への業務委託を活用するというのは、当然ありうべき判断であろうと考えます。
 ただ、プログレスレポート内で論じられている通り、外部委託運用の依存度が高まるにつれ、自社内のインハウス運用の機能やリソース等が先細るリスクがある等、デメリットも存在することは認識したうえで、個々の資産運用会社として、また更にこれは飛躍した視点かもしれませんが、日本の資産運用業界全体として、最適なバランスを模索し、インハウス運用の機能や人材育成等に努める必要があろうかと思います。資産運用サービスの付加価値は投資運用に係る工程のみから構成されるわけではなく、その他のリスク管理や事務、販売等の工程からも構成されているとはいえ、やはり最も大きな付加価値工程が投資運用に係るものであることは間違いなく、そこを外部に過度に委ねることは、当該工程の機能低下のみならず、事業収益面でのうまみを逃すことによる個社及び業界全体の競争力低下等にも長期的につながってしまうということになりかねません。
 次に、資産運用会社が独立系か非独立系かという論点についても、これはあくまで資産運用業界内の一部に過ぎないものを私が過敏に反応し過ぎているだけかもしれないものの、あたかも独立系資産運用会社こそが善、つまり顧客本位であり、非独立系資産運用会社はその点で劣後しているという意見があるように感じていますが、今回のプログレスレポートは、この論点についても原理主義的な見方に偏らずに、実態に即した現実感ある整理がされているように感じています。
 即ち、今回のプログレスレポートでは、金融グループ内の子会社として存在する非独立系の資産運用会社は、「グループ全体の経営方針や人事・報酬制度の適用等、運用戦略や体制が親会社の意向に左右されることがあり、グループ全体と顧客との間で利益相反が生じ易い」というデメリットが存在することは認めつつも、それゆえに非独立系は独立系資産運用会社に劣後していると短絡的に結論することなく、だからこそ金融グループ内の資産運用会社の課題として、グループ内の独立性を確保するような取り組みを行う必要があるとの方向感が示されています。日本の主要な資産運用会社の多くが金融グループ内の子会社資産運用会社であり、海外と比べて独立系資産運用会社の存在感が小さく、業界全体としてその数や存在感を高める必要があるという問題意識には全く異論はありませんが、その問題意識と「非独立系資産運用会社=悪(顧客本位ではない)」という見方は異なるものだという違和感をいつも感じている私としては、非常に真っ当な意見だと受け止めました。
 もちろん、今回のプログレスレポートでのこのような現実感ある問題提起や対応の方向性、それを受けての私の所感の表明に対しては、様々に異なる考えや意見があると思いますし、あってしかるべきだと考えます。ただ、今回の問題提起等を受け、業界全体として「資産運用会社のあるべき姿とは」という議論が活発化するととてもいいのではないかなあと思います。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

2023年6月6日
【セゾン投信、中野会長の退任が波紋 顧客離れの懸念も】
大原のコメント→
 今年4月に公表された「資産運用業高度化プログレスレポート」でも資産運用会社の経営陣の選任理由についてはより充実した開示が必要との指摘がありましたが、セゾン投信のようにお客様との距離が非常に近い創業者兼CEOが退任する場合には、より丁寧なコミュニケーションが求められると考えます。
 株主であるクレディセゾンや日本郵便にはそれぞれの判断があったのだとは思いますが、お客様の大切な資金をお預かりし、運用する立場の資産運用会社を所有するのであれば、・・・(続きを読む)

2023年6月8日
【金融庁、千葉銀行と傘下証券処分へ 仕組み債で監視委勧告】
大原のコメント→
 昨年から大きな動きとなっていた地域銀行等による一般生活者への仕組債販売問題への当局の対応については、今後は地域銀行としてどのような資産運用サービスの提供を行なっていくのかという検討・実行等の次フェーズに入っていくように思います。
 私見ですが、利回りを重視して余裕資金を投じる「投資商品」と将来の生活資金を備えるための「資産運用サービス」は区別して取り扱われるべきと考えており、地域銀行等の金融機関が期待されるのは前者の「投資商品」の販売というよりも一般生活者に伴走する「資産運用サービス」の提供であり、・・・(続きを読む)

2023年6月9日
【阿波銀、阿波おどりの夏目前 行員が練習開始】
大原のコメント→
 大学時代に阿波踊りサークルに入っていたこともあり、20代の頃は毎年のように8月12日から15日は阿波踊りに参加するために徳島を訪問していました。
 コロナ禍で全国的に夏祭りも自粛モードになったりもしましたが、コロナ終息を受けてこのような夏祭りも再び盛り上がることが期待され、そこでは本記事のように地域金融機関が自らも楽しみつつ、支援の主体になると素晴らしいなと感じます。

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2023年5月31日
【投資信託「多すぎ」にメス 野村アセット、30年に本数半減へ】
長澤のコメント→
 投資信託の本数が多く、かつ、規模の小さいものが多いことから、非効率となっているのではないかという指摘は以前からあり、金融庁のプログレスレポートでも、運用会社の努力に任せるだけでなく、販売会社の協力も期待するとしています。
 確かに償還や併合となると顧客の意向も関係するので一筋縄ではいかないのですが、本数が増えてしまう根本的要因は、そもそもの設定数が多い(多かった)というところにあるのではないかと思っています。
 投資信託の販売会社は、他社でヒット商品が出ると、自社の系列若しくは親密な運用会社に類似のファンドを組成してもらい販売すると聞きます。その理由が、ヒット商品を仕入れさせてもらえないからなのかどうかは、鶏が先か、卵が先かの話のようですが、・・・(続きを読む)

2023年6月4日
【資産運用「全然しない人する人」で"7800万円"差も】
長澤のコメント→
 持ち家か、賃貸かの永遠の論点は別にして、金融商品での資産運用に関して言えば、NISAのモデルとなった英国の個人貯蓄口座(ISA)は、日本より15年早く1999年に導入されたこともあり、資産残高が100万ポンド(1ポンド=170円換算で1.7億円)を超える「ISAミリオネア」が、2,000人超いるそうです。
 ISAも当初は時限措置であったものが恒久化され、非課税枠が拡大されたことにより普及が進んだことを踏まえれば、今回のNISAの抜本的改革により日本でも普及が進むと思われ、例えば新しいNISAでは夫婦で使えば3,600万円まで元本が非課税となるので、・・・(続きを読む)

2023年6月8日
【金融庁、千葉銀行と傘下証券処分へ 仕組み債で監視委勧告】
長澤のコメント→
 一般に地方銀行が証券子会社を作る目的は、銀行顧客のうち、リスク許容度の高い顧客が大手証券会社に流れることによる収益機会の流出を防ぐことだと思いますが、そのような顧客は既に証券会社と取引をしており、目論見通りの顧客は想定より少なかったとも聞きます。
 そうした状況でも証券子会社は親銀行から早期黒字化を求められ、銀証連携の掛け声の下、金融機関の都合で、本来仕組み債の販売先として想定していた顧客層とは違う、例えば退職金の運用を求める顧客や、債券と聞いてリスクを過小評価してしまうような顧客に販売対象が拡がっていったことが想像されます。
 現在、国会で審議されている金商法の改正案が成立すると、従来の誠実公正義務に加え、顧客の最善の利益を踏まえた販売を行うことが義務化されます。記事によると2021年度の地方銀行(証券会社)による仕組み債の販売額は約6400億円とのことですが、果たして顧客にとって最善の選択だったのか疑問となるようなものも、・・・(続きを読む)

メディア掲載情報

■メディア掲載:「金融ビジネス/これからの「顧客本位の業務運営」」
第19回 株式会社WealthLead代表取締役 濵島成士郎氏
「投資助言業+金融商品仲介業で新しい金融サービスを実現する」」

■コラム公開:コンプライアンスチームの連載noteの公開
新興・海外資産運用会社の立上げ等の支援を提供している弊社コンプライアンスチームがnoteに第32回目の記事を公開しました。
「第32回 『金融商品取引法の一部を改正する法律案」について」

インフォメーション

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