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「JAMPの視線」No.238(2024年7月21日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2024年7月21日

 今週末は小学校4年生の長男の野球チームのコーチ(補助)として親子で夏合宿に参加してきました。2日間にわたって35度以上の炎天下で野球漬けになったことに加え、夜は夜でバーベキューや花火、肝試し、コーチ陣&保護者の夜中までの部屋飲み等のイベントも盛りだくさんで、頭が空っぽになるまで楽しく疲れ果てました。軽めの熱中症と日焼けと筋肉痛で文字通りフラフラになっており、明日から問題なく日常生活に戻れるか不安いっぱいです(先ほど自宅に戻ってきてから倒れこむように爆睡してしまい、こうしてメールマガジンを書くために何とかギリギリの時間に起き上がることができたことは我ながら信じられません・・・)。
 さて、先週のメールマガジンで資産運用会社が収益性低下の負のサイクルから脱却するために従来の事業モデルから転換する必要があり、その方法としては正当な対価(値段)がつけられる追加的な付加価値を創出し、運用報酬水準の引き上げを実現できるサービス・事業モデルを構築することと、既存の事業モデルの枠内でのコスト削減ではなく、事業工程のアンバンドル化までも踏み込んだ事業モデルの再構築による事業効率性の向上の2つがあるということを書かせて頂きました。今回はその辺りを具体的に補足させて頂きたいと思います。
 まず、前者については、既に日本の資産運用業界でも具体的な取り組みが進みつつあるように、プライベートアセットを投資対象とする/投資対象の一部に組み入れることやパブリックアセットを投資対象としながらもアクティビスト的運用手法を採用したりすることで、これまでに無い付加価値を提供しようとする施策がひとつ考えられます。提供するのはこれまで通りのポートフォリオマネジメント付加価値でありながらも、投資対象や投資運用手法にプライベート性を加えることにより、付加価値のコモディティ化を避けることが可能となります。従来のアクティブ運用商品に比べるとスケーラビリティの点で課題はあると思われますが、政府のスタートアップ振興政策や東京証券取引所のPBR改革施策等の間接的な後押しもあり、こうした取り組みは今後は日本の資産運用会社の間でも広がっていくのではないかと予想しています。
 また、弊社が以前から普及に努めているゴールベース型ラップサービスへの取り組みも資産運用会社の事業モデル転換の文脈のなかで広がっていくことを予想しています。資産運用会社として単にポートフォリオマネジメント付加価値を提供するのみならず、最終顧客である投資家がそのポートフォリオマネジメント付加価値をどのように利用し、それぞれの目標(ゴール)を実現するのかという資産運用計画の策定や継続的なサポートまで踏み込んだアドバイス付加価値をも提供することで、そこに新たな対価の源泉を見出そうとする取り組みです。昨年末に改正された金融商品取引法で顧客の最善の利益原則(日本版Best Interest Policy)が法制化されたり、資産運用会社が販売会社の業務工程にまで踏み込むことを促すような「顧客本位の業務運営の原則」へのプロダクトガバナンスに係る補充原則の追加が金融審議会で提言されたりしていることもあり、従来のファンドラップの運営主体であった証券会社や信託銀行に加え、今後は新たな事業モデルへの転換を模索する資産運用会社もゴールベース型ラップサービスに参入することが増えてくることは間違いないように思います。
 一方、このようなトップライン側にインパクトのある事業モデル転換に加え、事業運営費用を削減し、事業運営の効率性を向上させるようなボトムライン側にインパクトある事業モデル転換も重要になります。政府の資産運用立国実現プランで取り組みが進む資産運用会社のミドルバックオフィス業務の外部委託の促進や「基準価額の一者計算」の取り組み等はこのような視点で資産運用会社の事業運営に係る費用を削減しようとするものだと位置づけられるでしょう。
 ただ、既に日本の資産運用会社においては投信計理業務等を中心とする業務の外部委託はこれまでも活用されてきていますし、既存の資産運用会社がこれから「基準価額の一者計算」に転換したとしても大きな費用削減が進むかというと正直なところそこまでの効果は見込めないのではないかという印象もあり、従来の事業モデルの枠内でのコスト削減には限界があると感じています。即ち、事業運営の効率性を大きく向上させるためには、事業モデルをアンバンドル化したうえで、自社が担う工程の取捨選択を行なうことにより、抜本的に事業モデルを再構築する必要があるという問題意識を持っています。
 具体的な施策例としては、弊社が昨年末から三菱UFJ信託銀行とともに推進している日本版ファンドマネジメントカンパニーの活用がひとつ考えられます。新しく日本で投信ビジネスを立ち上げようとする新興・海外資産運用会社のみならず、既存の投信委託会社も日本版ファンドマネジメントカンパニーのソリューションを活用し、運営する投信商品の委託者としての役割を移管し、自らは投資助言もしくは投資一任業者として投資運用判断等の業務工程に集中することで事業運営の効率性を大きく高めることが考えられます。また、Finatext等が提供しているBaaS(Brokerage as a Service)ソリューションを活用し、直販投信会社が業務負担が大きい直販業務工程を切り離すということも事業モデルの抜本的見直し手法のひとつとして考えられるでしょう。セゾン投信や三菱UFJアセットがFinatextのBaaSソリューションを用いて既にこのような事業モデル見直しを実現しています。
 いずれにせよ、資産運用会社が従来の事業モデルの限界を迎え、収益性の低下に直面しているというのは今に始まったことではなく、問題なのはここに至るまで資産運用会社がいまだに従来の事業モデルからの転換に道筋を見い出せていない&殆ど手を打てていないことだと個人的には感じています。待ったなしの状況のなか、足もと進む様々な追い風も活用しながら、日本の資産運用会社が新たな事業モデルへの転換をスピード感を持って進めることができるよう祈念します。弊社・日本資産運用基盤グループもその取り組みをサポートできるように努めてまいります。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

【インタビュー:対面で富裕層ビジネス、新興企業オーナーなど重視=SBI証副社長】
大原のコメント→
 オンライン証券事業モデルが手数料無料化で収益性が大きく低下するなか、対面接点での付加価値提供による新たな収益源の探索に動くというのは自然な流れだと思います。
 ただ、記事にあるような富裕層顧客、特に企業オーナー層向けサービスにおいては、単なる証券ブローカレッジサービスのみならず、投資銀行業務的なサービス提供も不可欠になり、・・・(続きを読む)

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

【信金、「仕組み貸出」増加 融資残高底上げ手段に】
長澤のコメント→
 今年1月の報道では、地域銀の「仕組み貸出」増加に対して、金融庁が警戒を強めているとありましたが、信用金庫においても同様の貸し出しが増えているとのことです。
 以前も書きましたが、こうした取引自体は昔からあり、仕組み債に投資するのと類似の経済的効果ですが、時価評価が不要である点や中小企業向け貸出の実績になるといったことに加え、通常国債担保のため発行体(貸出先)の信用リスクがないというのが魅力かと思われます。内包するオプションがステップアップコーラブルなどであれば、・・・(続きを読む)

【高齢母が買わされた仕組み債、溶けた教育資金 損賠訴訟】
長澤のコメント→
 個人向け仕組み債は、地銀などに対して行政処分が出たこともあり、販売停止とする金融機関が増え、新規の販売は大幅に減少しています。足元では、金融庁は、仕組み債同様にデリバティブを内包する仕組み預金、特に外貨償還特約付預金について注目しており、リスク特性を理解していない懸念がある者にも販売しているとして警鐘を鳴らしています。
 仕組み預金は「預金」と名がつき、銀行本体での販売となるので、顧客は仕組み債以上に預入元本が喫損すると思っていない可能性もあり、・・・(続きを読む)

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