「JAMPの視線」No.236(2024年7月7日配信)
目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③メディア掲載情報
④インフォメーション
東京では今日は東京都知事選挙でしたね。昨日午後に小学校4年生の長男を塾のテストに送っていく時に、「お父さんとお母さんは誰に投票するかもう話し合った?」と聞かれたので、「ん?誰に投票するかとかは話さないなあ」と答えたところ、「なんで話さないの?うちの家族にとっても大事なことなんじゃないの?」と返され、うまく反応できませんでした。確かにニュースを見ながら政治の話をしたりはするのですが、選挙の時に誰に投票するかまでは相談したりはしていませんでした。子供のひと言で考えさせられることが増えてきていることを感じる今日この頃です。
さて、先週発行のニッキン新聞の一面で大手銀行系資産運用会社が自社の投資運用商品の検証や不芳ファンドの状況改善策の公表等の取り組みが進んでいるという記事が掲載されていました。金融審議会の市場制度WGでの議論等を受けてのプロダクトガバナンス高度化の一環と思われますが、このような取り組みが資産運用業界において進むことは素晴らしいと感じます。
ただ、大手資産運用会社が運用する投資運用商品の数が膨大になり過ぎている現状、不芳ファンドの検証と状況改善策の先にはそれら不芳ファンドの償還を通じた投資運用商品の絞り込みが必要という意見も散見されますが、どうも数の絞り込み自体が目的になってしまってはいないかという懸念も個人的には感じます。プロダクトガバナンス高度化の最終的な目標は、資産運用会社にとってのお客様である投資家に良質の投資運用商品をいかに適切に届けるか/提供するかということであり、商品の絞り込みはその過程には必要かもしれませんが、それだけでは十分ではありません。
パフォーマンスや商品性が優れている投資運用商品であっても、販売金融機関での取り扱いがなされずに残高が小さいままに留まる、つまりお客様に適切に提案・提供されていない商品は少なからず存在しているのがいまの日本の資産運用業界の現状と思われますが、例えばそのような状況をどう改善するかまで取り組まなければ中途半端に終わってしまうように懸念します。単純に取り扱う投資運用商品を絞り込むだけでは資産運用会社の預かり残高は減少するのみであり、絞り込んだ後の良質の投資運用商品の残高を増大させ、事業メリットがある取組みへと発展させなければせっかくの前向きな取り組みも持続可能なものとはなり得ません。
その意味で、足もと進みつつあるプロダクトガバナンス高度化の取り組みは、「プロダクト」という表現は冠しつつも、本質的には資産運用業界の事業モデルをいかに再構築するのかという問題なのだと考えます。お客様が必要とする資産運用計画はどうあるべきか、その計画遂行に用いる投資運用商品は何が最適なのかという視点を持たず、ただ販売金融機関の営業員が売りやすい商品を求められるままに提供することに注力し、流行のテーマや資産クラスに特化した投資運用商品を提供してきたのがこれまでの日本の資産運用業界の一般的な慣行でした。プロダクトガバナンス高度化の取り組みでは、こうした販売金融機関との関係を見直し、お客様に最適な資産運用計画とその部品としての投資運用商品を製販一体で提案・提供する、そんな事業モデルの再構築が求められているのだと思います。
昨年11月に可決された改正金商法で義務化された「顧客の最善の利益義務」(日本版Best Interest Policy)の導入を受け、単にプロダクトに留まらない視点の取り組みが今後も各所で進むことを心より祈念しますし、弊社・日本資産運用基盤もゴールベース型資産運用支援サービス等の提供を通じ、その動きに貢献してまいりたいと思います。
【ブラックロック、英データ会社プレキン買収 32億ドル】
大原のコメント→
上場株式等の公開資産を投資対象とする伝統的投資商品のコモディティ化と運用報酬率の低下等が進むなか、非伝統的投資商品(オルタナティブ投資商品)への需要が高まっており、その領域で「Home of Alternatves」をコンセプトとし、インフラソリューションを提供するPreqinの存在感も大きくなっていくことが予想され、非常に面白いディールだなと感じます。
惜しむらくは、この大きな流れはグローバルで明らかなものであるにも関わらず、Preqinのような企業を買収しようとする日系金融機関が存在せず、・・・(続きを読む)
【自民党の茂木敏充氏、スタートアップ支援「非上場株投信で」】
大原のコメント→
投資信託協会で投資信託への未公開株式の組み入れルールの整備が行われる等、いわゆる「クロスオーバー投資」を認める投資信託への関心が高まっており、一部の運用会社で組成の準備が進んでいると耳にします。
成長資金を必要とするスタートアップ企業にとっても上場後も長期的な保有が見込まれる資金の出し手の増加は歓迎されるものですし、投資家にとっても新しい投資機会の発掘は利益につながるものと思われます。また、投資運用商品のコモディティ化と手数料水準の低下に苦しむ資産運用会社にとっても・・・(続きを読む)
【金融庁、仕組み預金の販売管理態勢に課題 リスク性商品検証で報告書】
長澤のコメント→
今回新たに注目された仕組み預金については、金融庁のモニタリング対象先の主要行と地域銀行における23年度上期の販売額は1200億円程度と、一時払い外貨建て保険の同時期の販売額2兆円と比べれば小さいものの、多くの銀行で販売が停止されている仕組み債の代替として販売されているとしたら、以前の仕組債のように、当初想定されていない顧客層へ販売が広がり、苦情の増加につながることを懸念して、金融庁としては予め芽を摘むといった意図があるのかもしれません。
仕組み預金は特に「預金」と名がつくので、顧客は仕組み債以上に預入元本が喫損すると思っていない可能性もあり、より丁寧な説明が求められる商品であると考えます。
■コラム公開:コンプライアンスチームの連載noteの公開
新興・海外資産運用会社の立上げ等の支援を提供している弊社コンプライアンスチームがnoteに第45回目の記事を公開しました。
「「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案」の概要について(シリーズ4)」
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