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「JAMPの視線」No.181(2023年6月18日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③メディア掲載情報
④インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2023年6月18日

 一昨日6月16日(金)に公表された政府の「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針)」及び「新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画2023改訂版」において資産運用業等の抜本的改革が盛り込まれたことを受け、具体的な政策プランはこれから年末にかけての検討・策定作業のなかで明らかになることを待つ必要はあるものの、先だって公表された「資産運用業高度化プログレスレポート2023」で整理された我が国の資産運用業界の課題に対する諸政策による対応ロードマップが示されることになると思われ、プログレスレポートへの関心は業界全体として引き続き高く推移しているように感じます。
 さて、先月5月半ばからプログレスレポートで取り上げられた我が国の資産運用業界が発展するに際しての課題に関して、10回にわたって私の私見を徒然と述べさせて頂く連載企画をさせて頂いています。第6回となる今回は、「市場インデックスに関する問題提起」という切り口で感じるところを述べさせて頂きます。
 今回のプログレスレポートでは「インデックスプロバイダー間の競争促進」というテーマで市場インデックスに関する問題提起がなされており、資産運用業界の業務システムインフラに関する問題提起と同様に、これまでにない視点での切り込みが驚きを持って受け止められたように感じています。ただ、いずれの論点も資産運用業界が産業としてこれから発展していくに際して、付加価値提供の役割分担をどのように行ない、成長の果実をどのように分配するかという点で共通しており、これまであまり注目されていなかった資産運用会社以外の裏側のプレイヤーの役割やその収受する果実の適切性等を問うものであり、重要な問題提起であると考えています。
 まず、資産運用商品・サービス運営における市場インデックスの使用については、プログレスレポートでも取り上げられているように、インデックスプロバイダーに支払う使用料の存在感の大きさに係る論点があると思われます。資産運用業界におけるパッシブ運用の存在感が大きくなり、並行して信託報酬等の引き下げ競争が激化するなか、資産運用商品・サービスの付加価値の大部分を担う資産運用会社と比べて、インデックスプロバイダーが得る使用料の大きさは果たして適正なのだろうかという点は、特に日本において疑問に感じます。本来であれば、資産運用会社間の競争によって信託報酬等の引き下げを通じた過度な報酬水準の適正化が果たされるのと同様に、市場インデックス及びそのプロバイダー間の競争を通じた適正化が期待されるべきです。
 例えば、米国バンガード社は、自社のパッシブ運用ファンドの一部において、ベンチマークとして使用していたMSCI社の市場インデックスをFTSE社等のものに切り替えるという意思決定を2013年頃に行ないました。バンガード社の当該意思決定については、数年経ってから現地の担当チームにその意思決定の背景やプロセス等をヒアリングさせて頂いたことがあるのですが、資産運用商品としての付加価値や事業面での影響、一方で期待されるコスト削減効果等を精査し、最終的にファンド受益者や会社事業へのメリットを最大化する判断をしたプロセスに感銘を受けたことを記憶しています。その点、プログレスレポートでも指摘されている通り、日本では資産運用会社がそのようにコスト低減を目的に市場インデックスやそのプロバイダー間の比較をし、変更の意思決定をするということがあまり無いように思われ、競争を通じたコストの適正化が業界全体として行なわれていないように感じます。
 また、市場インデックスの選定は、パッシブ運用におけるコスト削減のためのみならず、アクティブ運用等においても、投資家に対して提供する付加価値の最大化のためにより積極的な判断として行なうべきであるという視点もあろうかと思います。
 これも卑近な個人的経験からのお話で恐縮なのですが、私が2010年代にヨーロッパ・中東地域の機関投資家向けに日本株運用戦略の営業活動に従事していた際、向こうの機関投資家からは「なぜ当該戦略はTOPIXをベンチマークに使用しているのか」「他のMSCI社やFTSE社が提供する日本株市場インデックスと比べてのTOPIXの優位性や貴社が期待することは何か」等の質問をしばしば投げかけられました。特に、海外機関投資家は運用ポートフォリオのうちグローバル株式部分はMCSI株式指数等で統合的に管理しており、そのなかで日本部分だけ他地域との接合性が薄いTOPIXを使用する特別な理由は何かという問題意識があり、場合によってはMSCI Japanへの切り替えを強く要望されたりすることもありました。この点、日本の資産運用業界においては、機関投資家の側から「なぜTOPIXをベンチマークとしているのか」という質問を受けることはほぼ無く、積極的に運用付加価値を高めるためにベンチマーク等に使用する市場インデックスに拘るという視点はあまり無いように感じています。
 金融庁がプログレスレポートの本セクションの結びでいうように資産運用会社自らが市場インデックスの開発に乗り出すということの必要性までは無いとは感じるものの、上記のような視点で資産運用会社が自らの資産運用商品・サービスで使用する市場インデックス及びそのプロバイダーの選定をしっかりと行なうことを通じ、提供付加価値の最大化に努めることの必要性は大きいと思いますし、業界全体としても市場インデックス間の適正な競争を促進したり、新たな市場インデックスやプロバイダーの育成等を行なったりすることは重要であろうと考えます。
 (追記)また、プログレスレポートで市場インデックス間の競争や新たな市場インデックスの育成等を重要と掲げるのであれば、つみたてNISAの対象ファンドの要件として金融庁が一部の代表的な市場インデックスの使用を定めているというのは整合的ではないと思いますし、そもそも当該要件の必要性には疑問を感じています。 

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

2023年6月11日
【新しい資本主義、転職・起業で成長底上げ 労働市場改革】
大原のコメント→
 今回発表された「新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画 2023改訂版案」では、本記事でも取り上げられている労働市場改革やスタートアップ企業支援等で社会全体のリソースを成長産業の育成に傾ける政策が注目されていますが、資産運用業界の地殻変動を促す取組みも個人的に注目しています。
 「資産所得倍増計画」の施策のひとつとして新NISA制度への移行が既に打ち出されていますが、これまで岩盤的に預貯金に置かれていた個人金融資産の大部分を株式市場等へ移動させるとともに、資産運用業界の改革・高度化を通じ、それら資金を効率的に成長産業の育成に傾けるという意味で・・・(続きを読む)

2023年6月12日
【LINE、証券から撤退 株式部門を野村証券に移管】
大原のコメント→
 LINEという顧客接点を最大活用して証券・資産運用サービスを提供するのであれば、ゼロから証券会社を立ち上げるのではなく、金融商品仲介業スキームを用いた軽めのビジネスモデルを設計すべきだったと考えます(これはLINE銀行にも同じことが言えますが)。
 銀行・証券サービスを提供することと、銀行・証券を自ら保有することは別の話であり、事業設計を行なう数年前のタイミングで今回の結論はある程度は予見できたように感じます。

2023年6月13日
【FVC、株主提案の取締役全員を選任-会社案否決で経営陣交代】
大原のコメント→
 フューチャーベンチャーキャピタルは地域金融機関等と連携して地域ファンド等を運営するインフラを提供する事業会社として、地域金融機能の活性化において存在感を発揮していた素晴らしい会社だったと思います。
 昨年の株主総会で経営陣が交代になったのは資本市場で上場する会社として致し方ないものだったかもしれませんが、今年もまた経営陣が交代になっている状況を見ると、・・・(続きを読む)

2023年6月14日
【消費者ローンの伸び最大に スマホで「借りすぎ」に懸念】
大原のコメント→
 主要金融機能である「資金移転(決済・送金)」「資金供与(融資)」「リスク移転(保険)」「資産運用」のうち、遠い将来の経済活動に備えるための金融機能である「リスク移転(保険)」「資産運用」とは異なり、「資金移転(決済・送金)」「資金供与(融資)」は現在もしくは比較的近未来の経済活動に向けての機能であり、その利用に金融専門家のサポート等は必要なく、その意味でスマホ接点に親和性が高いと考えています。
 携帯電話キャリア等の事業者が金融サービスの提供に取り組んでいますが、保険や証券・資産運用サービスでの事業化・収益化に苦しんでいるのは、直近のLINE証券の事業撤退を例にあげるまでもなく、散見されるところです。
 一方、決済や送金、本記事で取り上げられているような少額融資等はスマホ接点に親和性があることに加え、・・・(続きを読む)

2023年6月15日
【金利0.3%の新デジタルバンク「Habitto」始動】
大原のコメント→
 スマホアプリ起点の本サービスが普及するかどうかはまだわかりませんが、少なくとも自ら銀行・証券・保険会社をゼロから創業するのではなく、金融サービス仲介業スキームを用いて軽くするという事業スキーム設計については正しい方法であろうと感じます。
 個人のお客様との接点での付加価値提供に注力するのであれば、裏側の金融機能(含む事務・システム)のところは既存金融事業インフラを活用するのが最善であり、・・・(続きを読む)

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2023年6月12日
【千葉・武蔵野銀の処分勧告=「仕組み債」説明不足―監視委】
長澤のコメント→
 今回の勧告を読みますと、ちばぎん証券については、金商法第40条第1号の適合性原則に抵触する業務運営の状況にあるとされ、千葉銀行と武蔵野銀行は、内部管理体制に不備が認められ、結果として、ちばぎん証券の適合性の原則に抵触する業務運営にも繋がっているとし、金商法第51条の2に該当するとされております。
 金融庁が適合性の原則違反で行政処分を出せば2004年3月以来の2例目とのことです。これに関しては、金融審議会「市場ワーキング・グループ」において、適合性の原則は包括的な行為規制であり、当該義務違反は殆ど認定されず法規範性を発揮できていない可能性がある(19年12月同事務局資料)と、・・・(続きを読む)

2023年6月13 日
【銀証間の顧客情報共有、追加緩和に影 千葉銀行処分勧告で】
長澤のコメント→
 リテール金融における銀証連携は、それ自体に問題があるわけではありません。銀行と証券会社それぞれが資産運用提案を行うと、自社の預り資産についての部分最適になりがちなのに対して、銀証が適切に連携のうえ、それぞれの強みを発揮し、顧客のライフプランを踏まえた資金運用プランの提供と継続的なフォローアップを行うことができれば、顧客の最善の利益に資することができると考えます。ただしその際には、例えば銀証間で顧客のリスク許容度の考え方を統一し、それに紐づく販売可能商品を共有したり、業績評価の考え方を共有したりすることで、・・・(続きを読む)

2023年6月13日
【関西みらいFG、本部からの業績目標廃止】
長澤のコメント→
 例えばリテール金融商品販売に係る業績評価体系については、目標設定としては銀行全体の収益目標額をトップダウン的に商品毎、支店毎に振り分ける方法が一般的ですが、記事にあるようなボトムアップ的に支店が自主的に目標を設定する方法は、現場を知る支店長が、地域マーケットの特性に応じた目標を設定することができるため、地域にそぐわない目標項目に対して無理やり数字作りを行うなど非効率的かつ顧客本位ではない営業をする必要がなくなる反面、意欲的な計画を立てようと無理をする支店長が出る、自分で建てた計画なので目標達成に対するプレッシャーが高まるといった面にも留意する必要があろうかと思います。
 また、こうした目標を評価する軸としては、収益評価重視か、預り資産残高重視かという切り口がありますが、それぞれ一長一短あり、目標設定と評価方法というマトリクスの中で、・・・(続きを読む)

メディア掲載情報

■メディア掲載:「金融ビジネス/これからの「顧客本位の業務運営」」
第20回 衆議院議員 小森卓郎氏
「資産運用立国実現に向けてのロードマップ」

インフォメーション

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