「JAMPの視線」No.83(2021年8月1日配信)
次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】
目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③メディア掲載情報
④インフォメーション
JAMP 大原啓一の視点 2021年8月1日
今回のNewsPicksダイジェストでも取り上げましたが、日系資産運用会社の収益性が低下しているという日経新聞の記事が業界内で注目を集めているようです。
ただ、以前から繰り返し申し上げている通り、これまで資産運用会社を支えてきた運用商品ありきの従来型アセットマネジメント事業モデルが限界を迎え、それでもなおその状況に危機感を感じず、新しい事業モデル構築に手を打てていない現状、資産運用会社がその将来に再び大きな成長可能性を見出すことが厳しいのは仕方ない流れと言わざるを得ません。
上場株式等の公開金融資産を主要な投資対象とする運用商品を開発・運用し、その運用残高の一部を手数料収入とするという比較的単純な事業モデルに依存する資産運用会社にとって、事業の継続的な成長に必要な要素は、提供する付加価値の希少性の確保であり、かつそれをドライバーとする預かり残高の増大に尽きます。しかし、金融技術と情報通信技術が過去数十年で大きく発達し、殆ど全ての種類・地域の公開資産の取引及びカストディ等に係るコストがほぼゼロとなり、それらを投資対象とする投資運用戦略にそれ自体の希少性がなくなるなか、運用商品単独で独特な付加価値を誇るのは困難になるのはごく自然な流れです。流通する公募投信が数千本まで飽和した状況も個々の商品の希少性消失を加速させています。
一方、私はこちらの方がより業界にとって深刻な問題だと感じていますが、これまで資産運用業界は、お客様の抱える課題の解決に何が必要なのかを真剣に考えようとはせず、単に運用商品を開発・提供すれば足りるだろうという安直な発想のもと、「商品」の枠組みのなかで機能の拡充にのみ汗をかき、結果的に預かり残高、つまりお客様からの信頼感が増大しない状況に目をつぶってきてしまいました。しかも、その原因を自らの課題設定の不備に求めようとはせず、「日本の家計は金融リテラシーが低すぎる」とお客様に原因を押し付ける考えが少なからず広がっている大変情けない状況であるように見受けられ、このままではこの先もずっと資産運用業界が担わせて頂く預かり残高は増えることは期待できないと悲観しています。
いずれにせよ、結果的に、これまで資産運用会社を支えてきた従来型アセットマネジメント事業モデルは、「商品」付加価値の希少性消失とそれに伴う手数料の低下、お客様からの預かり残高の成長の鈍化という現実に直面し、いよいよもって今後の収益性が危ぶまれている状況にあります。また、これまでの「商品」ありきの事業モデルの押し付けの結果、お客様本位ではない販売行動が横行するあまり、それを取り締まるという本来的には不要な規制コストも自ら負担しなければならず、それが収益性の悪化に拍車をかけているのは皮肉な悪循環と言わざるを得ないでしょう。
これから先、資産運用会社は自らを取り囲むこのような事業環境を打破し、再び収益性の成長を取り戻すために、例えば、非公開資産への投資対象の拡充やアクティビスト的運用のような代替的投資運用手法の具備、もしくは米国ブラックロック社のようなリスク管理ソリューション提供による代替事業の展開等、様々な取り組みを講じていくでしょうし、そうしなくては生き残りを図ることはできないと考えます。弊社が主張する投資一任運用スキームの運営主体を担うことによる資産運用アドバイス付加価値のバリューチェーンの一部を提供するという事業戦略も有効な候補のひとつとして考えられると思います。
ただ、そこでどのような新しい事業モデルの構築を描くにせよ、自らを支える付加価値の源泉が何なのかを改めて整理し、それを用いてお客様のどのような課題をどのように解決するお手伝いをするのかを正確に定めることなしには、過去これまで誤って進んできてしまったように、お客様が求めていない付加価値を押し付けた挙句、その付加価値のコモディティ化に自らが苦しめられるという悪循環を繰り返してしまうように強く懸念しています。
私たち日本資産運用基盤グループは、日本の資産運用業界がお客様の課題解決に貢献する付加価値を提供し、収益性・生産性を高めることを実現して頂けるよう、単に事務的に事業開発・運営のお手伝いをさせて頂くのみならず、その前段となる課題設定のところから一緒に考えさせて頂くパートナーとしての役割を担わせて頂けるべく、引き続き努めてまいります。
News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)
2021年7月28日
【もっと安くできないの 日銀のETF保有コスト】
大原のコメント→
ETF保有者である日銀の視点からのみならず、ETF運用会社である大手資産運用会社にとっても、日銀によるETF購入の存在感は経営戦略に影響を及ぼすほどまでに非常に大きくなっています。
資産運用会社の主要ビジネスのひとつである個人向け投資信託運用ビジネスは、残高が伸び悩んでいることに加え、付加価値のコモディティ化によって信託報酬率の低減と利潤消失が不可避であり、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6051114?ref=user_121187
2021年7月28日
【国内運用会社 二重苦に 手数料減少・資金海外へ 株高でも前期6社減益】
大原のコメント→
公募投信の流通数が6,000本弱と飽和状態にあるなか、1本あたりの付加価値はコモディティ化が進み、それに伴って期待される事業利潤も消失する流れにあるのは構造的に避けられません。
これは運用力云々の問題ではなく、商品仕様や運用戦略等が類似するのであれば目に見える形で商品の差別化を顧客に示すのは困難であり、結果的に手数料水準を有意に高く維持することが不可能であるという需給要因に起因するものであると考えます。
この状況を脱するやり方としては、1)PE/VC等のような未公開資産を対象とする運用商品への拡大、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6051044?ref=user_121187
2021年7月28日
【GMOあおぞらネット銀行が異業種を取り込む「組み込み型金融」の波紋】
大原のコメント→
Embedded Financeが大きな流れとして広がっていくという予測は全く同じ意見です。顧客基盤を有する非金融事業者がサービス提供接点(ブランド)として組み入れ型金融サービスを提供し、裏側を金融機関が担うというモデルの存在感が大きくなるのは間違いないように思います。
一方、どの金融機能もEmbedded Financeに親和性があるわけではなく、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6047603?ref=user_121187
News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)
2021年7月26日
【日経リサーチ、生活者金融定点調査「金融RADAR」特別調査の2021年版をリリース 若年層のESG投資への関心が高いという結果に】
長澤のコメント→
投資経験者を対象としたアンケートとのことですが、若い人の方がESG投資に関心をもっているとのこと。ESG投資は、地球温暖化や人権問題などの長期的課題を解決していくうえで企業がいかにサステイナブル(持続可能)かを問うものであり、投資家にも中長期な投資が期待され、残りの人生が長い若い人の方が関心を持つというのはある意味自然かもしれません。
金融庁が先月公表した、サステナブルファイナンス有識者会議 報告書の中では、個人を対象とした金融経済教育において、ESG関連の金融商品の特性とともにサステナブルファイナンスの意義についても理解が深まるよう、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6045722?ref=user_6551307
メディア掲載情報
■メディア掲載:「金融ビジネス 最前線の変革者達」
第20回 ファンズ株式会社 代表取締役 藤田雄一郎氏
「フィンコミュニティで新しい金融の価値を創造する」
https://www.jamplatform.com/news/2021/07/26/2326/
■メディア掲載:「Investment Japan」への英文コラム寄稿
法務コンプライアンス担当の栃尾が「Investment Japan」に英文コラムを寄稿しました。
「What to Prepare for FIBO Registration: How to Approach the Registration Application Procedure」
https://www.jamplatform.com/news/2021/07/29/2339/
■メディア掲載:「ニッキン」でのゴールベース型ラップ事業支援ソリューションの紹介
弊社のゴールベースアプローチ型ラップ事業支援ソリューションが「ニッキン」で紹介されました。
https://www.jamplatform.com/news/2021/07/30/2343/
インフォメーション
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