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「JAMPの視線」No.109(2022年1月30日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③メディア掲載情報
④金融専門人材募集情報
⑤インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2022年1月30日

米国の大手ロボアドバイザー事業会社であるWealthfrontがUBSに買収されることを1月26日に発表しました。日本の金融業界には直接の影響を及ぼさないディールではありますが、私自身も過去に個人向けロボアドバイザー事業会社を立ち上げ、経営していたこともあり、当時思い描いていた同事業の展開や足もとの金融・資産運用業界の動向を重ね合わせつつ、所感めいたものを述べさせて頂きます。
まず、1点目として、これは欧米や日本といった地域に関らず、従来型資産運用会社とロボアドバイザー事業会社は今後急速にその境目を曖昧にし、その過程で今回のディールのように両者がその経営や事業運営を融合させる展開は避けられないだろうということです。従来型資産運用会社の視点で考えると、これまでの主要顧客に提供してきた商品・サービスの内容やその提供手法が今後長期的に持続可能ではなく、デジタルネイティブ世代に対しては新たなアプローチが求められていることは、他の消費財・サービス業界の状況を鑑みても、明らかであり、ロボアドバイザー的なサービスやアプローチの採用は不可欠となっています。ただ、その新たな事業展開は、単に新たな顧客接点を用意し、サービスを特別に開発するのみならず、人材採用や組織構築、事業運営方法等の全てを新たな事業モデルに最適化することが必須であり、従来の延長線上にそれを位置づけることは困難です。従って、今回のUBSによるWealthfrontの買収のように、インオーガニックな事業モデル再構築が重要な選択肢となってきます。一方、ロボアドバイザー事業会社の視点で考えると、確かにそのサービスやデジタルアプローチは、従来の資産運用会社が取り込むことができていないデジタルネイティブ世代を中心に新たな顧客層の取り込みということでは長けているかもしれませんが、その顧客あたりの預かり残高は比較的小さく、それゆえに個々の顧客に提供し得る工数ならびに付加価値の内容も限定的にならざるを得ないという限界はあります(Wealthfrontは有価証券担保ローンサービスの提供等の施策を講じていたようですが)。更に、後述の通り、資産運用業界のパラダイムは既にポートフォリオ(商品)ではなく、継続的なアドバイスに移行しつつあり、そこでのサービス付加価値のバリュエーションを増やそうとすると、対面チャネルでのサービス提供に実績やノウハウを有する従来型資産運用会社との連携を必要とせざるを得ません。それゆえ、従来型資産運用会社とロボアドバイザー事業会社は、それぞれがそれぞれの事業成長を求めるなかで、事業領域の越境とその手段としての融合が今後さらに増えていくことを予想しています。
また、2点目として、今回のディールで示されたWealthfrontの企業価値が14億米ドル(約1,600億円)という金額だったことに対して、「安い」という印象を持った業界関係者が多かったように見受けられます。確かに、2008年の創業から15年弱で顧客数は約47万人、預かり残高は約3.1兆円の規模という成長スピードや足もとのFinTechスタートアップ企業(特に決済系等)のバリュエーションを考えると、桁が少ないように感じられることもわからなくはないように思います。どちらかというと、FinTechスタートアップ企業というよりも、従来型資産運用会社の企業価値評価に近いのではないかというような印象でしょうか。ただ、こちらについては、Wealthfrontやロボアドバイザー事業全体の顧客数・預かり残高の成長スピードというよりも、多くのロボアドバイザー事業会社を含む資産運用事業領域の先行きに対する悲観的な見通しがより大きく、そのなかで利益成長に対する評価が限定的に留まったように感じています。つまり、私がいつもお話させて頂いている通り、資産運用事業領域においては、従来のポートフォリオ(商品)ありきのサービス付加価値の提供は既にコモディティ化しており、かつそこでの競争はレッドオーシャン化しているため、今後その領域での事業利潤は枯渇が避けられない流れにあります。新しいパラダイムにおいては、ポートフォリオ(商品)ではなく、顧客が体感する付加価値を伴うゴールベース型の継続的なアドバイスにこそサービス付加価値があり、利潤も存在します。残念ながら、多くのロボアドバイザー事業会社は、いまだロボ・ポートフォリオ・アドバイザーに留まっており、利潤枯渇の崖に向けてチキンレースを繰り広げているという意味では従来型資産運用会社と変わることはないとも言えます。今回のWealthfrontのディールは、同社がそのパラダイム転換を単体でうまく乗り切れなかったゆえの評価額であったように個人的には感じています。
いずれにせよ、今回のWealthfrontとUBSのディールは、過去10年ほど金融・資産運用業界で進んできた事業モデルのパラダイムシフトを、新旧プレイヤーの融合というイベントや、そのディールの評価額というモノサシで、改めて明示的に示したということが言えるように思います。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

2022年1月22日
【四半期開示、見直しへ 短期の利益追求懸念で―金融庁】
大原のコメント→
株式市場(証券取引所)の価格発見機能を最大限に発揮するためには、年度開示よりも頻度が多い半期や四半期ペースの業績開示があった方が良い等のメリットがある一方、事業に直接関係ない業務・コスト負担が大きい、短期的な業績動向にとらわれる等のデメリットもあり、難しい問題だと思います。
資本主義社会においては、資本(株式)市場の機能を充実させ、参加者に厚みを持たせることが、ひいては社会に便益をもたらすという考えが総体としてあるため、上述のようなデメリットは資本市場に参加する個社が負担する当然のコストと整理する考えもあるかもしれませんが、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6603781?ref=user_121187

2022年1月23日
【楽天証券、投信のポイント付与厳しく 手数料薄く重荷に】
大原のコメント→
オンライン証券による口座開設や投信等購入に対する見返りとしてのポイント付与は若年層を中心とする新規顧客の開拓には大きな効果を上げている一方、それら若年層顧客の殆どが小口の取引を中心としていることに加え、足もとの投信手数料の低下・無料化の流れを受け、そこからの期待収益(LTV)はポイント付与コスト(CPA)に見合うものでは無くなっています。
これはポイント付与による顧客開拓を行なっているオンライン証券のみの問題ではなく、対面証券会社であれ、証券・資産運用手数料による利潤獲得が非常に難しくなっているなか、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6606282?ref=user_121187

2022年1月26日
【地銀で急増、仕組み債 ノックインで元本割れも 金融庁が問題視】
大原のコメント→
先日の弊社メルマガ内でも述べさせて頂きましたが、仕組債の全てが否定されるべきではないという考えもあり、お客様のニーズや活用方法によっては確かにそうかもしれないと思う一方、それが本当に一般生活者のお客様の資産形成・運用に資する提案なのか、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6618390?ref=user_121187

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2022年1月26日
【地銀で急増、仕組み債 ノックインで元本割れも 金融庁が問題視】
長澤のコメント→
記事中に金融庁幹部の発言として、「早期償還した場合、仕組み債を再購入すると新たな実質手数料が発生するため、事実上の回転売買だ」といった指摘がありました。こうした状況は顧客の実質的なコスト負担の問題は当然ながら、販売している金融機関においても、特定顧客からの収益への依存が高まる一方、顧客基盤や残高の増加にはなかなか結び付かず、そのうち、10年に1回程度起こる相場の急落時に損した顧客が離れていくといった結果になりかねないと思われ、金融機関経営の持続性においても熟慮すべきかと思います。
 こうした指摘をすると、投信の手数料が下がる一方の環境下、外貨建保険も駄目だ、仕組債も駄目だ、では一体何を売ったらいいのかという声が聞かれますが、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6618390?ref=user_6551307

2022年1月26日
【運用のアドバイザー、誰が味方か 見えづらい顧客目線】
長澤のコメント→
金融機関のアドバイザーか、独立系のアドバイザーか、どちらにすべきか一概には言えないと思いますが、アドバイス自体に対するニーズは徐々に高まっていると日々感じています。
 金融庁が昨年行った顧客意識調査の公表データを使い、一定の金融資産(預貯金など金融資産500万円以上)を持つ回答者に絞り、投資未経験者の「資産運用を行わない理由」を調べてみました。すると、半数近く(複数回答)が「資産運用に関する知識がないから」との回答で、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6609281?ref=user_6551307

2022年1月29日
【仕組み債、リスク大きく】
長澤のコメント→
昔、証券会社の営業員から、仕組債は月末近くでは売りたくないという話を聞いたことがあります。理由を聞いたら、その会社では、月末時点の時価評価を顧客に知らせるルールになっているのですが、購入後、日も経っておらず、相場も変わっていないのに、時価が大きく下がっている理由を聞かれるのが辛いからとのことでした。
 販売価格には販売会社や組成会社の収益が入っていますので、買った瞬間に時価はこの販売価格を下回るのは当然なのですが、記事にあります「コストの高さ」と「投資家が負うリスクに対してリターンが低すぎること」は表裏一体の関係ですので、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6632751?ref=user_6551307

2022年1月30日
【生保各社、外貨建て保険の解約手数料見直し 住友は廃止】
長澤のコメント→
外貨建保険では、中途解約時に市場金利に応じた運用資産の価格変動を解約返戻金額に反映する目的で、市場価格調整(MVA) を導入している商品が多くあります。その計算式を細かく見ると、例えば「当社の定める率」等として、0.2~0.3%程度の「タイムラグマージン」がチャージされておりますが、金融庁との議論を経て今回廃止や引下げを行うとのことです。
 MVAについては、最近でこそ、保険会社のHPに説明ビデオを掲載しているところがありますが、この「タイムラグマージン」までしっかり説明しているところはないのではないでしょうか。商品パンフレットを見ると、確かにMVAの計算式は載っていますが、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/6635494?ref=user_6551307

メディア掲載情報

■メディア寄稿:ファンド情報へのコラム寄稿
弊社代表の大原が「ファンド情報」の「Insight」コーナーにコラムを寄稿しました
「ゴールベースアプローチを見極めろ」
https://www.jamplatform.com/news/2022/01/24/2787/

■メディア掲載:「Investment Japan」への英文コラム寄稿
法務コンプライアンス担当の岩淵が「Investment Japan」に英文コラムを寄稿しました。
「New Rules on the Retention of the List of Beneficial Owners」
https://investmentjapan.jp/guide/3297/

金融専門人材募集情報

日本資産運用基盤グループが採用をご支援している金融機関の人材募集情報です

1)資産運用コンサルティング会社 - 資産運用コンサルティングマネージャー候補/前職を考慮して検討
https://www.jamplatform.com/hr/job/2711/

2)大手本邦金融機関 - アクチュアリー/~1,300万円(賞与別途)
https://www.jamplatform.com/hr/job/2778/

3)大手資産運用会社 - 人事マネージャー/800~1,200万円
https://www.jamplatform.com/hr/job/2663/

4)マルチアセットの運用業務 - チーフファンドマネージャー/前職を考慮して検討
https://www.jamplatform.com/hr/job/2665/

5)大手コンサルティングファーム - リスクアドバイザリーコンサルタント/~1,500万円
https://www.jamplatform.com/hr/job/2599/

6)大手生命保険会社 - 運用部門マネージャー/~1,400万円
https://www.jamplatform.com/hr/job/2569/

7)大手コンサルティングファーム - 管理部門マネージャー/1,200万円くらいまでを想定
https://www.jamplatform.com/hr/job/2769/

8)独立系資産運用会社 - 法務コンプライアンスヘッド/想定ベース給与1,000万円
https://www.jamplatform.com/hr/job/2730/

9)独立系金融機関 - コンプライアンスマネージャー/想定~1,200万円(賞与別途)
https://www.jamplatform.com/hr/job/2785/

10)大手外資系金融機関 - グローバルRMマネージャー/想定~3,000万円(賞与別途)
https://www.jamplatform.com/hr/job/2763/

ここに掲載している情報以外にも多くの人材採用ご支援をさせて頂いています
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インフォメーション

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