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「JAMPの視線」No.240(2024年8月4日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2024年8月4日

 ちょうど17年前の8月4日に私は当時働いていた日系資産運用会社の英国駐在員としてロンドンに赴任しました。ロンドン拠点での上司がヒースロー空港まで迎えに来てくれたのですが、その日の晩ご飯をご一緒している時に「君が想像している以上に人生が大きく変わると思うよ」と言われたことを今でも覚えています。その時は「大げさなことを言う人だなあ」と感じただけでしたが、振り返ってみるとこの27歳の8月4日を境に本当に人生が大きく変わったと思います。着任早々に始まった世界的な金融危機の混乱のなか、赴任期間が結局は7年半にも及んだこと、現地で妻と出会って結婚したこと、ゴールベースアプローチの概念に出会い、会社を辞めて起業したこと等、赴任前は想像もしなかった人生を送ることになりました。8月4日を迎えるたびに、あの日の夜にホテルの近くのインディアンレストランで言われた言葉を思い出します。人生って本当に面白いなあと感じます。
 さて、そんなしみじみした思い出の振り返りも吹き飛ぶようなマーケット環境になっていますね。2日(金)単日の日本株市場の下落幅が大きいことはもちろん、7月11日からの半月強の期間で考えると日経平均株価指数の下落幅は約15%にも達します。普段は日次の金融市場の変動にはあまり関心のない私ですら一昨日の為替市場と株式市場の変動に関するニュースにはドキドキしましたので、マーケットに対峙されている業界関係者の皆さまのご心労はいかばかりかと拝察します。
 そんな状況のなか、今年から始まった新NISAで投資や資産運用を開始した一般生活者の方々が足もとの市場変動による損失で肝を冷やしてしまい、保有する投資信託を売却する等、せっかく始めた投資や資産運用をやめてしまうのではないかと懸念する見方が広がっているように思われます。現にインターネットやSNS等では「NISA初心者に試練」といったタイトルの記事が散見されますし、オンライン証券会社のコールセンターに対して「どうすれば良いのか」「相場の回復はいつになるのか」という問い合わせが多く寄せられているとも報じられています。ただ、比較的短期的な時間軸での儲けを目的とする「投資」であっても市場下落に対してバタバタと保有ポジションの売却に動くことは合理的な行動でないことは改めて言うまでもありませんし、ましてや遠い将来の備えのための「資産運用」の場合には、そのような行動を正当化する合理性はほぼ無いと言って良いでしょう。
 このような時こそゴールベースアプローチという考え方やその実践をサポートするアドバイザーの存在価値を示す好機であると考えます。現代ポートフォリオ理論は前提として全ての投資家が合理的であることを想定していますが、そのように100%合理的な投資家は現実世界には存在しません。一般の投資家(生活者)は短期的な市場変動に対して非合理的な行動を取ってしまう傾向があることを考えると、その非合理性をなるべく抑制し、資産運用の目的を実現することをサポートするような技術を組み込んだサービスを提供することが必要となります。この人間の非合理性に対応するための理論が行動ファイナンス理論であり、ゴールベースアプローチという考え方及びそれに基づく資産運用アドバイスサービスには「メンタルアカウンティング」や「サリエンス」、「ナッジ」等の行動ファイナンス理論に基づく技術が組み込まれていますし、それらを提供するアドバイザーの伴走も用意されています。
 即ち、今回のような大規模な市場変動時に人間の非合理性が露呈しやすいことを考えると、行動ファイナンス理論に基づいて設計されたゴールベースアプローチ型資産運用アドバイスサービスの真価が問われるのは今まさにこの局面なのではないでしょうか。
 ゴールベースアプローチの世界で使い古された例ではありますが、2008年のリーマンショック時の投資家の行動をまとめた米国SEI Investments社のレポートによると、ゴールベースアプローチの考え方を取らない投資アドバイスをしていた顧客は60%が市場下落を受けて株式等の保有資産を売却したのに対し、ゴールベースアプローチの考え方に基づくアドバイスをしていた顧客は75%が特に何もせず、20%は保有資産を積み増すという行動を選択したと言います。足もとのこの局面でも、弊社・日本資産運用基盤がご支援している金融機関のゴールベース型投資一任サービスのお客様に対しては、アドバイザーの皆さまが同様の合理的なアドバイスを提供することが期待されます(なお、面白いことにSEI Investments社のレポートによると、ゴールベースアプローチの考え方を取らない投資アドバイスをしていた顧客のうち20%はその後にゴールベースアプローチ型アドバイスへの切り替えを選択されたということで、今回の市場変動が日本でのゴールベースアプローチの広がりの後押しになるかもしれないなあということも感じています)。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

【三井住友DS、中国で初の株式私募投信 現地投資家向け】
大原のコメント→
 あまり注目されていないように感じますが、このような日系資産運用会社の外-外ビジネスの拡大はこれまでできていなかったことであり、日本の資産運用業界の新たな展開可能性のひとつを示していると感じます。
 私自身も日本株運用戦略をEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域で機関投資家向けに販売するという仕事に携わり、内-外ビジネスの難しさを骨身に染みて理解していますが、・・・(続きを読む)

【野村アセットマネジメント、非上場株含む投資信託 個人も購入可能】
大原のコメント→
 公開資産を投資対象とする投資信託の数が飽和状態にあり、投資信託商品の付加価値のコモディティ化と信託報酬の低減に歯止めが止まらないなか、このように投資対象に未公開資産を加えることにより、独自の付加価値を提供し、高めの信託報酬を正当化する取り組みは今後増えていくと予想します。
 投資家にとってこれまでアクセスできなかった投資機会にアクセスする手段を提供することは望ましいと思いますし、個人的には、今回の野村アセットの新商品の商品性がそうであるように、・・・(続きを読む)

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

【地域銀、2割が円建て保険増予想 生保の商品開発加熱】
長澤のコメント→
 金融庁のレポートによれば、昨年度上期販売額における外貨建てと円建ての比率は、主要行ではほぼ半々、地域銀行では6:4程度と、以前に比べ円建ての比率が高まっていましたが、その後の予定利率の上昇もあり、足元ではさらに高まっているかと思われます。
 外貨建て保険が売れていたのは、内外の金利差によりますが、同レポートによると、多くの外貨建て保険が乗換販売により中途解約され、顧客が十分な運用成果を得ていないという実態も報告されており、・・・(続きを読む)

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