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「JAMPの視線」No.182(2023年6月25日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③お知らせ・ニュースリリース
④メディア掲載情報
⑤インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2023年6月25日

 昨日24日の午後に野村證券の平成15年入社組の同期会が入社20周年記念ということで開催されました。私は新卒入社は野村総合研究所だったのですが、リサーチ枠入社ということでもう一人のリサーチ枠採用の同期とともに入社式翌日の4月2日から1か月ほど野村證券の研修合宿に出向となったこともあり、野村證券の皆さんに同期扱いをして頂いており、昨日もそのご縁で同期会に参加させて頂きました。参加した約40名の大半は現在も野村證券で働いている一方、他の金融機関に転職したり、私のように自分で起業したりという人間もおり、外見は20年前と大きく変わらないものの、それぞれのキャリアを積んできたのだなあとしみじみ感じました。でも、同期っていいものですね。
 さて、先月5月半ばからプログレスレポートで取り上げられた我が国の資産運用業界が発展するに際しての課題に関して、10回にわたって私の私見を徒然と述べさせて頂く連載企画をさせて頂いています。第7回となる今回は、「運用と事務の分離を通じた生産性向上」という切り口で感じるところを述べさせて頂きます。
 今回のプログレスレポートでは、長くにわたる業界慣行で投資信託委託会社(資産運用会社)と受託銀行の双方で同様の手法で投資信託の基準価額が計算されているという所謂「基準価額の二重計算問題」について取り上げられており、この計算を受託銀行による一者計算とすることで、資産運用会社は資産運用に係る工程に集中することができ、生産性を向上させることができるという問題提起がされています。
 この論点は業界においても長くにわたって議論をされているものですが、技術的な側面で語られることが多いものの、資産運用業に係る各主体が付加価値創出のためのどの工程に注力し、対価を得るべきなのかという意味で本質的な論点であると感じています。私が日本資産運用基盤という会社を約5年前に立ち上げたきっかけのひとつも、過去に創業した個人向けのゴールベースアプローチ型ラップサービスの会社において、私たちが注力したかったのは個人向けのサービス開発・運用や顧客接点での付加価値提供であるにも関わらず、投資信託という仕掛けを活用するために高額な投信計理システムの購入や事務担当チームの採用・運営等、サービス差別化につながりにくい工程に労力や費用等をかけなければならないという状況に疑問を感じたことにあります。
 資産運用会社がお客様や社会に対して提供できる最大の付加価値は投資判断やその判断に基づく執行等を含む投資運用といった工程にあり、それ以外の投資信託設定・運営や投資信託事務等の工程が必ずしも付加価値やサービス差別化に直結しないのであれば、自らそれら工程を担うのではなく、外部の専門会社に委託をするというのが経済学にいう「比較優位の原則」を持ち出すまでもなく当然の考えであろうと思います。日本資産運用基盤を創業した時、私がまず取り組みたいと思ったのはこのような視点で資産運用会社の事業生産性を向上させるような仕掛けを提供するインフラの構築・運営でした。
 その意味で、資産運用会社の事業生産性を向上させるための仕掛けとして、今回のプログレスレポートでは「投信基準価額の一者計算」の重要性が説かれていますが、私は投資信託委託会社にとってのその重要性・有効性等には全面的に同意はしつつも、投資信託委託会社のみならずより広い意味での資産運用会社にとって必要な仕掛けとしては、「日本版ファンド・マネジメント・カンパニー(FMC)」の存在をより大きくするということがあると考えています。
 私が長く駐在していた欧州においては、ルクセンブルグやダブリンがその中心地でありましたが、日本でいうところの投資信託のようなファンドの設定・運営を専門とするFMCが多く存在しており、それらFMCが外部の資産運用会社にファンド内の金融資産の投資運用を委託することを中心に、基準価額の計算やアドミニストレーターへ、金融資産の受託管理はカストディへ、ファンドの販売及び販売事務はディストリビューターへ委託する等によって、それぞれの主体がそれぞれ専門的に担う機能や強みに特化して役割分担をし、全体としての生産性を高めながらファンド事業を行なうということが一般的です。別の表現でいうと、彼の地においては、ファンド・マネジメントとアセット・マネジメントは明確に区別され、前者の機能はFMCが担い、後者の機能は資産運用会社が担うという業界構造になっています。それゆえに金融都市ロンドン等では、有能なヘッジファンドマネジャーが2‐3人でヘッジファンドを立上げ、ファンドの設定・運営は外部FMCに任せつつ、自らは投資判断や投資運用に専念するということができています。
 翻って、日本においては、上記表現を用いると、ファンド・マネジメントとアセット・マネジメントが明確に区別されないまま一体的に運営されているため、投資信託事業を営もうとする資産運用会社は、自ら投資信託委託業のライセンス登録をし、投資信託事業に係る全ての工程の責任を担わなければならないという非常に「重い」業界構造になっています。日本で新しい資産運用会社の参入が滞っていたり、投資信託事業の生産性が高まらないのは様々な理由があると思われますが、より根本的な理由のひとつとして、日本にはFMCという業態が存在せず、ファンド・マネジメントとアセット・マネジメントが一体的に運営されているという業界構造があると私は考えています。
 昨年6月に弊社がグループ子会社として設立したJAMPファンド・マネジメントは、日本で専門的にFMC事業を営む「日本版FMC」であり、ルクセンブルグやダブリン等のFMCと同様に、投資信託委託業を自ら営まない資産運用会社に対してFMC機能を提供することにより、それら資産運用会社と連携して投資信託商品を設定・運営することをミッションとしています。この取り組みの先に、新しい資産運用会社の参入を活性化したり、個々の投資信託事業の生産性を高めたりすることで、日本の資産運用業界全体の生産性向上に貢献することを目指しています。
 なお、この「日本版FMC」であるJAMPファンド・マネジメントは投資信託委託会社ですが、その投資信託委託会社としての事業生産性を高めるための施策として、上記「基準価額の一者計算」の標準装備を予定しております。同社はちょうど今月半ばに金融商品取引業のライセンス登録を完了し、これから投資信託協会の加入や保管振替機構との契約等の準備を経て、今年夏以降の事業稼働を目指して準備をしている過程ですが、投資信託計理システムを自ら購入する必要がない等、事業生産性に対するその効果の大きさを既に実感し始めています。
 私自身の過去の経験や弊社の足もとの取組み等の卑近な話が多くなってしまい恐縮ですが、いずれにせよ今回のプログレスレポートで提言されたように「運用と事務の分離を通じた生産性向上」は資産運用業界の今後の更なる発展のためには非常に重要なものであり、これから業界全体として議論が改めて深まり、少しずつ実現していくことを期待しています。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

2023年6月19日
【日本証券業協会、転職時の顧客情報持ち出し禁止 11月から新規則】
大原のコメント→
 本規則は証券会社から証券会社への転職ということもあろうかと思いますが、ここ数年で増えている証券会社からIFA事業者(金融商品仲介業者)への転職に対応する新規則ということもあると思います。
 また、IFA業界が拡大するに伴い、IFA事業者から他のIFA事業者への転職というのも増えてきており、そこでの顧客を引き連れての転職ということも散見され、・・・(続きを読む)

2023年6月20日
【金融庁、改正金商法が成立せず 開示見直しなどに遅れも】
大原のコメント→
 関連各所との折衝も終えたうえで予定されていた金融関連法案の成立・改正が実現しないということは極めて稀なことと思われ、金融機関等での実務への影響はもとより、先週16日に閣議決定された「骨太の方針」等で示された資産運用立国等の方針とその実行計画への影響も懸念されます。
 秋の臨時国会等でのリカバリーは十分あり得ると思われますが、金融・資産運用業界のTo Beに向けた動きにとって躓きにもなるものであり、ネガティブな影響の最小化を期待します。

2023年6月22日
【米プルデンシャル幹部「保険と資産運用の融合、潮流に」】
大原のコメント→
 「資産運用」も「リスク移転(保険)」も主要な4種類の金融機能のうち、将来の資金需要に備えるという点で共通していますが、前者は確度の高い将来の目的に備えるのに対し、後者は不測の事態に備えるものであったり、前者は利用者自らの現在の資金もしくはキャッシュフローを原資とするのに対し、後者は他の利用者の資金も原資にしたり等、その用途や機能、付随する税制優遇等も異なっています。
 日本人はどちらかというと保険商品を用いた将来の備えに偏っていますが、今後は資産運用との組み合わせの適正化が進むと思われ、・・・(続きを読む)

2023年6月22日
【お客さまの資産運用をサポート=ゴールベースアプローチサービスで伴走-証券ジャパンの綿川社長に聞く】
大原のコメント→
 QUICKと弊社が金融機関向けに提供するゴールベースアプローチ型ラップ事業支援サービスについて、2023年2月からサービス提供を開始されている証券ジャパンの綿川社長のインタビュー記事がJIJI Financial Solutionsで掲載されました。

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2023年6月21日
【ETFにアクティブ型 野村や三井住友DS、秋にも上場 - 日本経済新聞】
長澤のコメント→
 アクティブETFの市場が拡大するメリットとしては、金融庁がプログレスレポートなどで指摘している以下のような課題の解決にも資するのではないかと考えます。
 まず、運用会社は、新しい投資信託を開発した場合、系列の販売会社向けの専用商品として(若しくは販売会社を絞った形で)販売することがありますが、その商品が売れると他のグループの運用会社や販売会社は、二番煎じの投資信託を設定することがよくあります。こうした類似の投資信託が増えることは、それぞれが運用力を競うというメリットはあるかもしれませんが、一方、投資信託の本数が増えてしまい、非効率な運用となってしまう要因の一つではないかと考えています。こうした問題に対して、ETFの場合は株式同様に取引所で取引できるので、系列に関係なく、良い運用をしている商品に資金が集まり効率化が促されるのではないかと思います。
 次に、ETFの場合は販売会社に間接的に支払う代行手数料は含まれないので、投資信託に対して金融庁が指摘する販売会社のアフターフォローの頻度等に応じた代行手数料の設定とはなっていないという問題がなく、・・・(続きを読む)

2023年6月21 日
【新NISAの投信1000本公表 24年始動、毎月分配は除外】
長澤のコメント→
 運用業界からは新NISAの成長投資枠の「投信の条件が厳しすぎる」との声があるとのことですが、これは、毎月分配型やレバレッジ型が対象外になったからというより、デリバティブの使用をヘッジに限るとし、外債投信などで通常の運用に使われるようなデリバティブまで除外されたからと認識しています。デリバティブを使えないとなると、株式や債券の現物を全部揃える手間とコストがかかり、運用成績が悪化することもあるようです。この点についてはまだ決着していないとも聞き、・・・(続きを読む)

2023年6月21日
【新NISAの「成長投資枠」、対象ファンド995本を公表 投信協】
長澤のコメント→
 運用業界からは新NISAの成長投資枠の「投信の条件が厳しすぎる」との声があるとのことですが、これは、毎月分配型やレバレッジ型が対象外になったからというより、デリバティブの使用をヘッジに限るとし、外債投信などで通常の運用に使われるようなデリバティブまで除外されたからと認識しています。デリバティブを使えないとなると、株式や債券の現物を全部揃える手間とコストがかかり、運用成績が悪化することもあるようです。この点についてはまだ決着していないとも聞き、・・・(続きを読む)

お知らせ・ニュースリリース

■グループ子会社の金融商品取引業登録完了について
 日本版ファンド・マネジメント・カンパニー機能の提供を行なうJAMPファンド・マネジメントが投資運用業及び第二種金融商品取引業の登録を完了致しました。

メディア掲載情報

■メディア掲載:JIJI Financial Solutionsでの弊社ソリューションに関する記事掲載
 弊社とQUICKが金融機関向けに提供するゴールベースアプローチ型ラップ事業支援サービスについて、2023年2月からサービス提供を開始されている証券ジャパンの綿川社長のインタビュー記事がJIJI Financial Solutionsで掲載されました。

「お客さまの資産運用をサポート=ゴールベースアプローチサービスで伴走-証券ジャパンの綿川社長に聞く」

インフォメーション

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