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「JAMPの視線」No.239(2024年7月28日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③メディア掲載情報
④インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2024年7月28日

 今週末は子供たちと妻は近所の仲良しファミリーとキャンプに出掛け、私は東京で留守番をし、溜まっている仕事に集中する予定だったのですが、土壇場で長男の体調不良でキャンプがキャンセルとなってしまいました。とはいえ、私の仕事の段取りを急に変更することもできないため、家族の冷たい視線を浴びながら今日は朝からオフィスに出社し、いままさにこのメールマガジン執筆から取り掛かっています。なんとか夕方までには溜まった諸々の仕事に目途をつけ、晩ご飯は家族と一緒に食べたいものです。
 さて、前々回と前回のメールマガジンで資産運用会社の事業モデル転換の必要性や方向性について私見を述べさせて頂きましたが、そのような話をすると決まって「資産運用会社による投信直販事業」の是非について議論になります。投信販売残高に占める直販の比率が米国に比べて非常に低い水準にあること等から、資産運用会社の投信直販事業の伸びしろが大きいという見方があったり、最近のプロダクトガバナンスに係る議論から資産運用会社にも最終顧客の購買行動等を把握することが求められる流れがあったり等、今なお資産運用会社による投信直販事業を推す意見も少なからずあることは認識しています。
 ただ、以前から一貫して申し上げている通り、私は資産運用会社による投信直販事業の参入は悪手であると考えており、その必要性や収益性等を十分に考慮しないままに、ただただ企画担当部門の「やりたい」という気持ちのみで検討・判断をしているようにしか思えません。リテール向け商品の製造工程のみを担う資産運用会社にとって個人のお客様と直接につながりたい、事業の成否のカギを握る販売工程を自ら担いたい等の欲望は強く、「投信直販事業」の響きはそれほどまでに甘美なのでしょう。私自身も資産運用会社の事業企画・開発部門に在籍していたのでその気持ちは少なからず理解はできます。ただ、繰り返しになりますが、この事業モデルはいまや必要性も薄く、収益性や成功可能性に乏しい悪手だと考えます。
 まず、必要性の観点から申し上げると、多くの代表的な投信直販会社が登場した2000年代当時は販売会社が投信販売時にアップフロントの販売手数料を徴収するのが一般的であったことから、投信直販会社が当該販売手数料を無料とし、投信サービスを提供することは社会的にも意義は大きく、事業モデルとして差別化をする余地も大きかったことは間違いありません。ただ、ご案内の通り、最近ではアップフロントの販売手数料を徴収しない販売会社もネット証券を中心に増えていますし、委託者報酬から販売会社に支払う代行手数料の水準も低下傾向にあるなか、それら費用を撤廃もしくは低減させる手段は投信直販である必要性はありません。換言すれば、投信直販の最大の強みのひとつがもはや存在しなくなっています。
 また、当然ながら資産運用会社の強みは本業である投資運用業務であり、個人のお客様向けのマーケティング業務ではありません。最近では資産運用会社も自らSNS活用や動画配信等で個人のお客様向けのマーケティング的なことをやっていますが、ネット証券等の販売金融機関に比べて、そこにノウハウやリソース、強み等があるかというと、正直いって難しいと思います。
 様々な資産運用会社の投信商品のみならず、株式や債券等の他の幅広い金融商品を取り扱うネット証券に比べ、自社が運用する数少ない投信商品のみを取り扱うという圧倒的不利な状況を背負いながら、ノウハウやリソース、強み等の面でも決して優位性を持っておらず、個人情報取り扱いや直販システム・事務等に多額のコストをかけてそれでもなお投信直販事業で収益性や成功可能性を追求できるというのは、あまりにも楽観的な考えであるように感じます。
 このような不利な状況に最後のとどめを刺したのが、新NISA制度だと思います。今年頭から始まった新NISA制度はその大幅に拡充された内容から、今後のリテール向け投信事業はこの新NISAをいかに活用するかで全てが決まってしまうまでの破壊力を持っていることは間違いありません。ただ、少なくとも現状の新NISA制度では、個人のお客様はひとつの金融機関でしかNISA口座を保有することができません。そのようななか、取り扱い商品数が少なく、他の諸条件もあまり魅力的でない資産運用会社にわざわざNISA口座を開設しようとするお客様はどれほどいらっしゃるのでしょうか。
 いずれにせよ、前回までも申し上げた通り、資産運用会社の従来型事業モデルが限界を迎えつつあるなか、新たな事業モデルへの転換は待ったなしの急務であることは間違いありません。そこで重要なことは、どのような事業モデル案に帰着するにせよ、資産運用会社としての自社の強みは何なのか、販売工程を担う販売金融機関との役割分担はどのようにあるべきで、その役割分担で発揮できる自社の付加価値は何なのか等を正確に見極める必要があるということは共通しているように考えます。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

【ブラックストーンの国内富裕層向け投信、異例のペースで1800億円突破】
大原のコメント→
 上場株式等の公開資産を対象とする投資信託は類似の商品が氾濫し、付加価値のコモディティ化が進んでおり、この記事で取り上げられているような非公開/未公開資産を対象とする投資信託は独自の付加価値が存在することから投資家の需要も集めやすく、・・・(続きを読む)

【東証プロ市場、24年上場 最多の勢い 指定アドバイザー参入増】
大原のコメント→
 地域企業支援を通じた地域経済活性化をミッションとする地域銀行グループがVC子会社を通じた出資と指定アドバイザー機能を活用した東京プロマーケットへの上場支援を一気通貫で行うというモデルは今後増えていくように予想します。
 未上場企業への出資というと高いリターンを求める事業モデルやExitのための市場としてのグロース市場がまず想定されると思いますが、・・・(続きを読む)

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

【生保協、外貨保険で販社フォロー 永島会長「手数料変わる」】
長澤のコメント→
 金融機関代理店に支払う販売手数料については、以前は販売時に一括で支払うI字型が主流であったものが、数年前にアフターフォローを考慮してL字型変わっていった経緯にあります。しかしアフターフォローの対価としての手数料が支払われる期間が、必ずしも保険契約期間と一致しているとは限らず、手数料が支払われなくなることも乗換販売の一因になっていると思われます。今後手数料体系を見直していくとのことですが、・・・(続きを読む)

【地域銀、外貨保険でフォロー再強化 目標値変更・コスト説明】
長澤のコメント→
 最近、ゴールベースアプローチに基づく資産運用アドバイスを行っているとする金融機関が増えておりますが、顧客のゴールを十分ヒアリングしたうえで、本来長期の資産運用商品である外貨建て保険を推奨したのであれば、そもそも最初に目標に到達しやすい120%未満の運用目標額を設定すること自体に矛盾があるように思います。もし、顧客がそれほど長期の運用を望んでいないのであれば、・・・(続きを読む)

メディア掲載情報

■メディア掲載:FinTech Journal
執行役員・金融機関コンサルティング部門長の直井が「FinTech Journal」に寄稿しました。

「手数料は無料化・信託報酬は減少、ではどんな金融商品で『メシを食う』べきか?」

インフォメーション

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