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「JAMPの視線」No.183(2023年7月2日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③お知らせ・ニュースリリース
④インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2023年7月2日

 先週6月28日は私の誕生日でした。毎年同じことばかり言っておりますが、自分でも信じられないことに、44歳になりました。いわゆる幸せ(4あわせ)の年ですので、きっと幸せ三昧の1年になると思います。新たな1年間も自分らしく頑張っていきたいと思いますので、どうぞ引き続きよろしくお願い致します。
 さて、5月半ばからプログレスレポートで取り上げられた我が国の資産運用業界が発展するに際しての課題に関して、10回にわたって私の私見を徒然と述べさせて頂く連載企画をさせて頂いています。終盤の第8回となる今回は、「金融システムベンダー悪者論」という切り口で感じるところを述べさせて頂きます。
 今回のプログレスレポートでは、「公販ネットワークの互換性確保への対応」という章タイトルでこれまで当局からの公の問題意識としてはあまり指摘されてこなかった資産運用業界のシステムインフラの寡占及びそれによる非効率化について踏み込まれており、多くの資産運用業界関係者を驚かせたように感じています。今回の指摘は、章タイトルにある公販ネットワークや資産運用会社の投信計理システムに留まっており、投信等の資産運用商品の販売金融機関側の投信窓販システムや証券総合口座システムの同様の問題にまでは触れられていなかったものの、これまで多くの業界関係者が業界の効率化・発展を阻む重要な問題として認識していながらも手をつけられてこなかった所謂「The elephant in the room(部屋の中の象)」問題に切り込んだということで、非常に画期的なものだったと感じています。
 資産運用会社側の観点でみても、投資助言・代理業者が500社弱存在する一方で投資信託委託業者が100社弱しか活動していないという状況の原因の大きなひとつに高額の投信計理システムがあるということは業界関係者であれば半ば常識として共有されている認識ですし、投信等の資産運用商品の販売金融機関側の視点においても、NISA等の制度対応等の度に金融システムベンダーのみが儲かって、金融機関側の費用負担側が大きく、また、地域銀行グループにおいて銀行・子会社証券のシステム統合を行なおうとしても、システム内の顧客情報の移管に数十億のデータ移管費用を求められる等の事例があったというクレーム的なご意見も少なからず耳にしますので、ここにメスが入ると、日本の資産運用業界の効率化・発展が進む可能性は大きいと思います。その意味で、岸田政権が掲げる資産運用業界の抜本的改革のなかには、この辺りの寡占解消や効率化等も含まれているのではないかと考えています。
 この点、今回のプログレスレポートで金融庁という「お上」が金融システムベンダーの寡占化等に対して問題意識を持っていることを明らかにしたことで、足もとにわかに改めて「金融システムベンダー悪者論」、つまり、大手金融システムベンダーの存在が資産運用業界の発展や効率化の阻害要因であり、それらシステムベンダーが全て悪いのだという意見が多く聞かれるようになってきているように感じられます。ただ、私はこの「金融システムベンダー悪者論」には個人的にやや違和感を感じています。
 確かに、一部の大手金融システムベンダーが資産運用関連の基幹システムの提供を市場的に寡占していることにより、そのサービス提供費用に競争が働かなかったり、他社の公販ネットワークとの接続性が広がらなかったり等の弊害が出ているのは事実かもしれませんが、一方でそれら大手金融システムベンダーがこれまでの日本の資産運用業界の業務を裏側で支えてきたことは事実ですし、何よりも市場競争性を規制するルールの枠内で適正に事業を展開してきたこともこれまた事実かと思います。そのような諸事実に目を背けながら、金融・資産運用業界が全体として儲けにくくなってきているにも関わらず、金融システムベンダーだけが儲かっているということに対するやっかみ的な感情で非難をするのは少し違うのではないかという気もしています(私自身もその辺りは時々やっかみ的な感情で議論をしてしまうのですが)。
 もし政府や金融当局がそれら金融システムベンダーの事業活動が市場公正性に反すると考えたり、資産運用業界の発展や効率化を阻害すると見なしているのであれば、公正取引委員会等による何らかのアクションを働きかけたり、新たに非金融事業者である金融システムベンダーに対する規制を設ける等をすることにより、業界全体の最適化を図るべきであり、そのようなアクションを起こさずして、自らの事業の成長やそのための戦略を講じてきた金融システムベンダーを非難するのは少し違うように感じます。換言すると、政府や当局がこれまで「The elephant in the room」問題を放置してきた失策に過ぎないのではないかと感じています。
 いずれにせよ、責任がどちらにあるのか等はともかく、一部の金融システムベンダーによる寡占とそれによる非効率が資産運用業界の問題であることは衆目の一致するところであり、その問題に今回のプログレスレポートが切り込んだことは非常に大きな意味があると考えています。公正取引委員会等によるアクションや何らかの規制行動等が適切なのかどうかはわかりませんが、今回の問題提起をきっかけにこの「The elephant in the room」問題への取組みが業界全体として進むことを期待しています。

(追伸)今週のNews Picks ダイジェストでも記事のひとつで取り上げましたが、事務年度最終日である6月30日に金融庁が公表した「リスク性金融商品の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について(2022事務年度)」については、その踏み込みに少なからず驚きました。国民の資産形成に資するビジネスモデルの構築・運営が困難な地域金融機関等は預かり資産ビジネスからの撤退も選択肢とすべきであろうと明記したことは、先般の千葉銀行等への行政処分等とあわせて、この7月以降に地域銀行の預かり資産ビジネスの方向性を大いに変革するものだと感じています。どこかで本メルマガでも整理をさせて頂きたいと考えています。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

2023年6月26日
【資産運用立国へ独立系資産運用会社の育成を-自民・中西財金部会長】
大原のコメント→
 資産運用業界の地位向上が経済政策の柱の一つとして位置づけられていることは業界の人間として嬉しく感じます。
 一方、「資産運用業が証券の子会社という位置付けから脱し切れていない」という問題意識が存在するのであれば、金融庁の組織体制においても監督局内に業態ごとに設置されている課について、・・・(続きを読む)

2023年6月28日
【ほけんの窓口、住宅ローンの相談開始 伊藤忠系】
大原のコメント→
 生命保険商品市場が飽和状態にあるなか、ほけんの窓口社をはじめとする保険代理店は一般生活者のライフプランに応じたマネープランの総合的なアドバイザーとしての付加価値を提供する事業モデルに移行することを模索しており、今回の住宅ローンの相談のみならず、今後は資産運用サービスの提供等にもアドバイスの対象を拡大することが見込まれます。
 一方、従来の金融機関がこれまで投資信託販売等の金融商品の提案・提供に終始してきたところ、足もと資産運用サービスはゴールベースアプローチ型の資産運用サービスの提供に移行しつつあり、保険代理店では投資信託販売というよりも、・・・(続きを読む)

2023年6月29日
【スタートアップ初の健康保険組合、24年設立へ 360社加入】
大原のコメント→
 以前に創業・経営していた会社は証券会社グループの子会社という立ち位置だったので証券業健康保険組合に加盟できていたのですが、いまは全国健康保険協会なのでサービス面がちょっと見劣りするというのが正直な印象です。
 今回紹介されているスタートアップ企業向け健康保険組合は当面の間の財務状況はどうなのか、サービス面が全国健康保険協会に比べてどうなのか等は気になります。

2023年6月29日
【広島空港、「距離のハンディ」どう克服 民営化2年 - 日本経済新聞】
大原のコメント→
 広島は仕事でも頻繁に訪問する都市のひとつなのですが、行き方に迷う都市でもあります。広島の中心地へのアクセスもバスで1時間くらいかかりますし、濃霧で欠航することも少なくないということもあり、結局はお尻が痛くなるのを我慢しながら、普段は新幹線を使っています。ここのアクセスが良くなると相当便利なのになといつも感じます。

2023年7月1日
【金融庁、投資商品販売から「撤退」提案 業績評価を検証へ】
大原のコメント→
 金融庁は、事務年度最終日となる昨日6月30日に「リスク性金融商品の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について(2022事務年度)」を公表し、地域銀行等による金融商品の販売実態の調査結果とそこでの課題、今後のモニタリング・対話方針等を明らかにしました。
 本記事で述べられている通り、岸田政権が掲げる「資産所得倍増計画」のもと、一般生活者の岩盤預金を資産運用へと移行させる方針が軸と定められ、・・・(続きを読む)

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2023年6月30日
【保険、銀行窓販7年ぶり5兆円超え 昨年度 - 日本経済新聞】
長澤のコメント→
 外貨建て一時払い保険については、本日公表された金融庁のレポートによると、営業員の業績評価において円建てより外貨建てに対して高い評価を与えている金融機関は、そうでない金融機関に比べ、外貨建て保険の比率が高い傾向にあるとしています。
 他の金融機関に比べ比率が突出して高いというのは、果たして顧客に最適な商品を提案した結果だったのか、疑問を抱かざるを得ず、業績評価体系については金融庁も指摘してきたにも関わらず、・・・(続きを読む)

2023年7月1日
【金融庁、投資商品販売から「撤退」提案 業績評価を検証へ】
長澤のコメント→
 昨年の同レポートでは、プログレスレポートと共に、仕組み債に対してかつてないほど厳しく問題点を指摘したことを受け、多くの販売会社が個人向け仕組み債の販売を停止し、先月には一部金融機関に対して業務改善命令が出されたのは記憶に新しいところです。
 こうした中、地銀系証券会社には、仕組み債販売への収益依存度が高いところが多く、業務を継続すべきか真剣に検討しているところもあるのではないかと思われます。しかしながら、来年には新しいNISAも始まり、更なる資産運用の裾野の拡がりが期待される中で、老後資金や資産承継などに漠然と不安を抱いている人は多く、・・・(続きを読む)

お知らせ・ニュースリリース

■取締役の異動について
 株式会社日本資産運用基盤グループは、6月30日開催の定時株主総会及び臨時取締役会において、以下リンクの通り取締役を選任するとともに、代表取締役を選定しました。

インフォメーション

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