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「JAMPの視線」No.200(2023年10月29日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③メディア掲載情報
④インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2023年10月29日

 お蔭さまで毎週日曜日夜に配信させて頂いている弊社・日本資産運用基盤グループのメールマガジン「JAMPの視線」も今回で200回目の配信となりました。2020年1月から配信を開始させて頂いてから3年10か月が経ちましたが、証券・資産運用会社や地域金融機関を取り巻く事業環境は厳しさを増しており、当時予想していたほどのスピード感ではないものの、従来型事業モデルからの転換や再編・合併等が少しずつ進み始めているように感じます。
 証券・資産運用業界の利潤消失の流れは先月末・今月頭のSBI証券及び楽天証券のブローカレッジ手数料無料化によって引き返せない転換点を通過してしまい、業界の継続的な付加価値創出を支える新たな事業モデルへの転換が進んでいない現状でその転換をどのように受け止めることができるのか、懸念は小さくありません。ブローカレッジ事業モデルからアセットマネジメント事業モデルへの転換を掲げる金融機関も散見されますが、新NISAへの移行を前に投資信託の信託報酬の引き下げ競争は過激さを増しており、そこにはもはや大きな利潤が存在しないのは明らかなように思われます。それら従来型事業モデルの先にあるべきゴールベースアプローチに基づく資産運用計画アドバイス事業モデルへの転換は残念ながら今なお業界全体として定着したとは言い難く、その事業モデルへの転換が十分に進むまでにまだまだ時間がかかると思われるなか、現在の証券・資産運用会社の多くが生き残るための再編・合併等を強いられることになるでしょう。ブローカレッジ手数料無料化という歴史的な転換点と同じタイミングでマネックスグループが祖業からの撤退を開始したのは決して偶然ではありません。
 また、地域金融機関を取り巻く事業環境を見ると、従来型銀行事業モデルの前提を破壊したゼロ金利政策にようやく終わりが見えたことは明るいニュースであることは間違いなく、その収益性は少しずつ改善に向かうことが考えられます。但し、地域金融機関が本拠とする地方経済そのものが少子高齢化や過疎で先細っていく流れにあることや、民間企業部門が資金余剰の状況にあり、資金貸出しへの需要が大きく伸びる成長余地がそれほど大きく見込めないこと等を考えると、金利環境が変わったからといって従来型銀行事業モデルに再び依拠するような経営判断は現実的では無いと思われます。地域金融機関が自らのパーパスを見直し、地方経済活性化と自らの成長を両立することができる新たな事業モデルを開発しようとする動きが過去数年で進んでいますが、そのような取り組みは今後も継続することが予想されます。この金利復活の局面の数年間で「かつて銀行だった」と呼ばれるような存在に将来的になることができる打ち手をいかに講じられるかがカギになると思われます。
 最後に、足もと急速に議論が進んでいる「資産運用立国構想」実現への取組みも2020年1月当時は存在しなかったものです。個人金融資産の預貯金への偏りの是正やこれからの日本経済をけん引する基幹としての資産運用業の産業化等は当時から急務であり、民間のみならず政府も主体的に関わる形で「産業政策」の設計が必要だと個人的には考えていたこともあり、昨年からの岸田政権の取組みは待ちに待った動きです(正確には、東京都等が主導する「国際金融都市構想」等の取組みは当時からあったものの、資産運用業の「産業政策」の設計には当然ながら関連法制の改正や年金基金を所管する厚生労働省等との連携が必要であり、国レベルでの主体的な関与が必要だと考えていました)。この動きについては、まさにいま議論が進められており、年末までに政策パッケージが策定され、来年以降に具体的な動きになってくると予想されますが、日本の資産運用業が基幹産業として成長するかどうかの重要な転換点であり、弊社や私自身も可能な範囲で議論に貢献させて頂きながら、その進捗を関心を持って見守りたいと思います。
 次の大きな節目となる300回目の配信は2025年秋頃になると思われますが、その時にこうした状況がどのようになっているのか今から楽しみでなりません。その時には弊社・日本資産運用基盤グループも私個人も今まで以上に金融・資産運用業界に貢献できているよう研鑽に努めたいと思います。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

2023年10月25日
【投資信託購入、クレジットカード払いの上限10万円 新NISA対応】
大原のコメント→
 クレジットカード決済による投資信託購入については、身の丈を超えた投信購入や積立て設定等を行なうことに対する投資家保護施策が適切に講じられることを前提とすると、利用者の利便性向上に資することであり、良いと考えます。
 ただ、この議論が金融庁・金融審議会で行われている資産運用立国に関するタスクフォースで「立国」構想の実現のために必要な中心施策として議論されるべきものなのかについては疑問を感じます。

2023年10月26日
【金融庁、運用業の参入規制緩和 管理業務など委託しやすく】
大原のコメント→
 日本の資産運用業界の大きな非効率のひとつは、アセットマネジメント業務とファンドマネジメント業務の区別が曖昧で、これらの分業がなされていないことだと長らく強い問題意識を持っています。
 金融審議会タスクフォース等で議論されている資産運用ビジネスに関わる諸業務の外部委託の是非・可否の議論はこれらの区別をなされた上で行われるべきと考えていますが、先週行われた第2回タスクフォースでは日本版ファンドマネジメントカンパニーの必要性についての議論が行われたようであり、・・・(続きを読む)

2023年10月28日
【ビッグモーター問題、カルテル疑惑を機に損保メガ体制構造点検へ】
大原のコメント→
 今事務年度の金融庁の注力領域は何よりも「資産運用立国」構想の実現のための諸施策策定と実行だと考えていましたが、降ってわいたようなビッグモーター問題で損害保険業界の不正に対する調査・処分というものも出てきました。
 もちろんそこで不利益を被っている金融サービス(損害保険)の利用者がいるのであれば早急に対応しなければならないとは思いますが、・・・(続きを読む)

2023年10月28日
【【メルカリ】稼ぐ・買う・投資を丸抱え。したたかすぎる経済圏】
大原のコメント→
 主要金融機能のうち資金移転(決済、送金)と資金供与(融資)は当該機能が対象とする主たる経済活動が物品・サービスの購買であり、その意味で残りの2つのリスク移転と資産運用とは異なり、メルカリサービスに親和性が高いという特徴があるため、メルカリが決済や与信、そしてクレジットカードサービスに展開することには違和感はありません。
 また、後払いサービス等の与信とは異なり、クレジットカードは直接的にメルカリサービスでの決済に用いるのみならず、生活のなかで利用シーンが最も多い決済・与信サービスであり、・・・(続きを読む)

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2023年10月20日
【横浜銀行やりそな銀行など、保険窓口販売の商品絞り込み】
長澤のコメント→
 大手地銀等で窓販用の保険の商品数を絞り込んでおり、その理由の一つとして、取扱数が多すぎると、販売員が適切な説明ができずに顧客の不利益となる恐れがあるからとのことです。金融庁も、金融機関に対するモニタリングの結果として、「自社で取り扱っているリスク性金融商品の数が多く、営業現場で商品性の理解が十分に進まないため、顧客に対しても最適な商品説明・提案ができていなかった。また、顧客の総資産を把握した上で最適な提案を行うため、ライフプランシミュレーションツールを導入したものの、営業現場は十分に活用していなかった。」などと、かなり厳しい評価を下しており、それを受けた動きかと思います。
 時々通勤電車の中で、新商品と思われる投信や保険のパンフレットを一生懸命勉強している姿を見かけ大変だなと思うことがあるのですが、・・・(続きを読む)

メディア掲載情報

■メディア掲載:「金融ビジネス/これからの「顧客本位の業務運営」」
第22回 景気探検家・エコノミスト 宅森昭吉氏
「マーケットエコノミストが情報を伝える時に最も大切にしていること」

インフォメーション

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