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「JAMPの視線」No.226(2024年4月28日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2024年4月28日

 実はここ1か月ほど体調が良くなく、お医者様から休養と禁酒を指示されましたので、3週間ほどノンアルコールで過ごしています。仕事関係の会食も控えさせて頂いたり、ご一緒させて頂いてもお茶で失礼させて頂いたりしております。まだ体調は万全とは言えないものの、お蔭さまで寝つきは抜群に良くなり(そして心なしか妻の機嫌も良くなり)、以前よりも疲れはだいぶ取れてきたように感じます。早くばっちり快復し、美味しくお酒を飲めるようになりたいものです。
 さて、今年に入ってからずっと下山進氏の「勝負の分かれ目」「2050年のメディア」という2冊の著作を繰り返し読んでいます。下山氏はメディア業界の構造変化や興廃を綿密な取材をもとに鮮やかに描くことで定評のあるノンフィクション作家であり、これら2冊もコンピューターの浸透やインターネットの登場等の技術革新によってメディア業界がどのように変化をしたのかを圧倒的な取材力と臨場感ある筆致で描き切った読み応えのある作品です。ただ、私自身はこれらを「メディア業界の変遷」という視点ではなく、「変化を迫られた業界において、従来型大企業と新興企業がどのように生き残りをかけて戦い、そして勝敗が決したのか」という視点で興味深く読んでいます。もっと端的にいうと、「なぜ多くの従来型企業は技術革新等の環境変化に対応できないのか」「新興企業はその変化のどこに成長機会を見出し、どのように従来型企業に勝利し、結果として市場を獲得したのか」「変化に対応できた従来型企業は何をしたのか」等という視点です。
 私たちが事業を営んでいる証券・資産運用業界も、今まさにインターネットの登場に端を発する技術革新や業界構造の変化、ゲームルールの変化等を受け、業界のあり方がガラガラポンで大きく変わろうとしています。そのような環境で新しいサービスや事業モデルの開発等を通じ、新たな市場の開拓と独占を目指す新興企業もあれば、表面上は変化の必要性に同意を示すものの、今なお旧来の事業モデルからの脱却をためらい、変化から目を背けているかのような金融機関も少なくないように感じます。まさにクレイトン・クリステンセンが提唱した「イノベーションのジレンマ」に直面し、もがき苦しんでいるのが現在の証券・資産運用業界といえるでしょう。
 「2050年のメディア」の一節(文庫版P221)に、ウォール・ストリート・ジャーナルの元編集長で同紙の有料デジタル化を成功させたゴードン・クロヴィッツ氏が日本経済新聞社の幹部に勉強会を開催した際のシーンが描かれています。少し長い引用にはなりますが、非常に興味深いものですので紹介をさせて頂きます。

(引用開始)
 クロヴィッツのもとには、事前に事務局が幹部たちから集めた質問があらかじめ送られてきていた。その中で目をひいたのは「有料デジタル版を始めることで紙の部数が減らないだろうか?」という質問だった。
 2008年当時、新聞社が一番心配していたのがこの「カニバリズム」問題だった。仮に有料デジタル版の部数が増えても、それが紙の読者が移行しているだけだったらば、売上もあがらず、販売店は損害をこうむり、いいことはないのではないか、という心配だ。
 それに対してクロヴィッツはこう答えている。
 「紙の部数は有料デジタル版を始めようが、始めなかろうが、減っていく。このことだけは動かせない事実だ。とするならば、他社のデジタル版に食われるよりも、自社のデジタル版に食われた方がいいではないか。未来は紙にはない。デジタルは今後もっと利益を生むようになる
(引用終わり)

 私が色々な金融機関とお話をさせて頂く際に多くの経営陣の方とお話をさせて頂くのはまさに同じことです。金融商品の販売という商品依存の従来型事業モデルから得られる収入が中長期的に減っていくのは間違いなく、より踏み込んだ継続的アドバイスの提供によるサービス型事業モデルへの転換が必要という見方には多くの方々が異論ないように見受けられます。それでもなお、短期的な収益を支える従来型事業モデルの優先度を高くせざるを得ず、事業モデル転換への打ち手が遅れてしまう、半身になってしまうことに皆さま苦しまれているように感じます。メディアの「未来は紙にはない」、それでは私たち証券・資産運用業界の未来はいったいどこにあるのでしょうか。
 「人間社会において唯一確実なものは変化である。自らを変革できない組織は明日の変化に生き残ることはできない」というピーター・ドラッカー氏の言葉は有名ですが、今ほど証券・資産運用業界に生きる私たちが変化への対応を強く求められている局面は無いと感じます。弊社・日本資産運用基盤自身も直面するこの業界の大きな変化にどのように立ち向かい、付加価値を創出し、生き残れるかを常に試行錯誤しています。それとともに、資産運用事業「基盤」として、金融機関の皆さまが変化に立ち向かうための事業モデル改革のご支援のお役に立てるように知恵を絞っております。引き続きご指導を頂きますようお願い申し上げます。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)

【三菱UFJアセット、投信直販を刷新 フィンテック活用】
大原のコメント→                                  
 大手資産運用会社による投信直販事業は以前からもそして何故か今なおも興味を持って検討する動きが見られますが、当然ながら個人顧客へのアプローチに強みが無く、商品の品ぞろえの点でもオンライン証券等に比べて優位性が乏しい資産運用会社に勝ち目がないのはもとより自明なことと考えます。
 この状況は今年頭に移行した新NISA制度で顧客ひとりあたりNISA口座ひとつしか開設できないという制約を受け、ますます困難になっており、・・・(続きを読む)

【有力スタートアップ132社、2年で雇用5割増 日経調査】
大原のコメント→                                      
 私が初めて起業し、1社目の金融スタートアップを立ち上げたのは2015年初でしたが、その時と比べるとスタートアップ業界への人材の流入は各段に増加したことは実感しています。
 当時は(特に金融業界からは)人材を採用するのは容易ではなく、候補者の方のご家族と面談をし、事業内容やリスク等も詳細にご説明させて頂くのが稀ではありませんでしたが、そのようなことは今はあまりありません。

【厚労省、企業年金の成績開示へ 他社と比較、利益向上狙う】
大原のコメント→                                    
 代表的なアセットオーナーである企業年金基金の運用に直接の効果がある施策ではありませんが、運用成績の開示を通じて投資運用戦略やプロセス等へのガバナンス強化と間接的な効果としての投資運用能力の向上や新興運用会社への運用委託の活性化等も期待されると考えます。
 昨年末に策定された資産運用立国実現プランがスピード感をもって進められており、・・・(続きを読む)

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

【生保協、外貨保険ガイドラインを説明 来週にも全銀協会員各行に】
長澤のコメント→
 今回のガイドライン改正は、金融庁の外貨建て一時払い保険に関するモニタリング中間報告と同日に公表されたことから、金融庁と擦り合わせを行い、その問題意識を反映したものになっています。
 内容を見ると、「顧客の最善の利益の義務化」といった最近の法律改正の反映、想定顧客の明確化や販売後の事後検証並びに他の金融商品とのリターンやコスト等の比較情報の提供などのプロダクトガバナンス関連事項のほか、最近金融庁が問題視しているターゲット型保険におけるフォローアップの際の留意事項、手数料体系と提供役務の合理性などが盛り込まれています。
 従前は販売金融機関に対する指摘が中心であったものが、・・・(続きを読む)

 【投資の終活、相続・認知症への備え 証券会社も支援策】
長澤のコメント→
 先日の日経新聞に、相続により都市部の金融機関に預金が移動するとして地域金融機関が危機感を強めているといった記事がありましたが、証券会社の場合も相続人が投資に関心がなければ有価証券を売却して預金化して引き出されてしまうという危機感は同様かと思います。せっかくの投資資金が預金になってしまうことは、・・・(続きを読む)

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