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DIFFICULT TO CURE - RAINBOW

 レインボーのアルバム『DIFFICULT TO CURE』、邦題はアルバム1曲目のタイトルを取って『アイ・サレンダー』だ。1981年発表。

 あるレンタルCD店で流れた、その"I Surrender"を聞いて、一発で虜になってしまったアルバムで、僕にとっては人生を変えた3枚のアルバムのうちの1枚だ。(ちなみに、1枚は以前紹介したイングヴェイ・マルムスティーン『ODYSSEY』だ)

 レインボーは、ギターのリッチー・ブラックモアのバンドと言っていいわけだが、彼が自分の思うようにバンドを運営した結果、次々とメンバーチェンジが行われ、それに伴って音楽性も大きく変化している。

 この『DIFFICULT TO CURE』では、ドラムのコージー・パウエルが脱退し、後任としてボビー・ロンディネリが加入。ヴォーカルがグラハム・ボネットからジョー・リン・ターナーに交代している。

 大仰で壮大、ファンタジックな歌詞をロニー・ジェイムス・ディオが朗々と歌い上げる初期レインボーサウンドから、グラハム・ボネット時代のポップでコンパクトな楽曲に移行したスタイルを引き継いだ雰囲気のアルバムだ。さらに、がなり立てるようなパワフルなグラハム・ボネットの歌声から、ときに甘くて、艷やかなジョー・リン・ターナーのヴォーカルに代わったことで、さらにポップでキャッチーな音作りがなされている。

 しかし、一方でリッチー・ブラックモアのギタープレイは存分にブラックモアスタイルを発揮し、彼らしいメロディアスなフレーズと、自由奔放なソロプレイにあふれている。リッチーのギターにハードロック的な要素を求めるファンにも聴き応え十分なバンドサウンドがここにはある。

 さて、一聴して気に入ってしまった"I Surrender"だが、これは英国ポップシンガーとして活躍し、多くのミュージシャンにその楽曲を取り上げられているラス・バラードのペンによるものだ。グラハム・ボネット時代の"Since You Been Gone"もポップさの極みで人気を得ていたが、"I Surrender"も、それに負けず劣らずポップで甘く切ないメロディアスな曲調が特徴だ。この曲はジョー・リン・ターナーが歌わなければその本領を発揮しない。

 2曲目"Spotlight Kid"は、冒頭の目まぐるしく奏でられるリフが印象的なスピードチューンだ。なおかつ、ディープ・パープル時代を彷彿とさせるクラシカルなソロパートもファンにはたまらない。今聞いても凄い、ハードロックの名曲である。

 アルバムはこの後も、哀愁と爽やかさの同居した"Magic"、情感たっぷりのギターが心を打つインスト"Maybe Next Time"、ブルージーさを基調にしつつアップテンポに攻めてくる"Can't Happen Here"など名曲揃いだ。

 そして、アルバムラストを飾るタイトル曲"Difficult To Cure"。これは、ベートーヴェン『交響曲第9番・歓喜の歌』をアレンジし、バンドサウンドとして演奏したインスト曲である。まぎれもなくクラシックの有名曲であるのに、まるでリッチーが作った曲であるかのようにレインボーなりの解釈で演奏される様は、リッチー・ブラックモアの目指す音楽とは何なのかを意識させてくれる。まさにアルバムの有終の美を飾る大作だ。

 ところで、このアルバムと、イングヴェイ・マルムスティーン『ODYSSEY』でヴォーカルを担当しているのがジョー・リン・ターナーだったことは、本当にただの偶然だったのだが、今思うと自分の好みの方向性が極めて単一的だったのだなと笑ってしまう。

 というわけで、人生を変えた3枚のアルバムの2枚目のお話は以上。3枚目についてはまたいつか。


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