見出し画像

『悪は存在しない(2023)』を観ました

濱口竜介監督の『 ドライブ・マイ・カー (2021)』が好きだったのと、この作品の石橋英子さんの音楽が好きで、サントラを繰り返し繰り返し聴いてお気に入りだったので、同じ組み合わせの今作『悪は存在しない』を観に行くことにしました。
これから観に行く予定の人は、できるだけネタバレしないように気をつけた方がいいです。私は考察や感想はシャットアウトして予告だけ見て観に行きました(ここではネタバレはしません)。


今作を上映している劇場を探してみた。きっと高知ではやってないだろうから、岡山とか松山あたりまで行くことになるかと思ってたが、なんと高知市でやっていた。そこが高知市にある『高知あたご劇場』であった。
かなり昔からある劇場だとは知っていたが、移住して高知に住んでから一度も行ったことがなかった。どちらかというと誰にでもわかりやすい作品を上映していると思っていたので、かなり尖った作品といえる今作をやっていることに驚いた。
車だと駐車場がないので、近くの駐車場に止めないといけない。それが面倒なのでバイクで1時間くらいかけて行った。場所はJRの高知駅から歩いて数分の場所で、近くには有名な商店街とかがあるようなとこなので、車で行くと駐車場を探す必要がある場所だ。

高知市の『高知あたご劇場』

『高知あたご劇場』はかなり味のある建物であった。劇場の外の看板は手作りっぽくて、シネコンタイプの映画館にはない懐かしい感じがあって嬉しい。中には売店もあり、上映より30くらい前に建物の中に入ったら、上映している作品の音がかなり大きく聞こえていた。ということは逆に、ここで話せば劇場内にも聞こえてしまうくらいの作りなのであろう。

『高知あたご劇場』の中の売店

見終わって、確かに最後には面食らいました。ちょっと知らない土地に、ポンッと一文無しで投げ出されたような感覚になりました。でもそこから「どうしてこういうことになったのだろう」と今見たお話をさかのぼって行くと、作品がここまで描いていたものは、ちゃんとこのお話のテーマの上にすべてちゃんと置かれていたようで、腑に落ちました。
ちょうど私は、「わかるように作らないと伝わらない」とか「わからないと観てもらうこともできない」みたいな世の流れみたないなことを考え過ぎて、少しうんざりしていたところがあった。
例えばかつて私が映画館で見た『火まつり(1985)』(DVDか配信を強く希望)なんかは、最後の主人公である北大路欣也の行動にあっけに取られて、その説明もなしにお話は終わってしまい、結果今でも「あれってなんであんなことしたのだろう」と気になってる。もう見てから何十年も経っているのに。

『高知あたご劇場』のスクリーン。映像も綺麗だし音もしっかり出ていました。

それぞれの作品の中でキャラクターは存在していて、時にはこちらの理解を越えたような行動をするようなこともある。そんな動きに対して私らは「おかしい」とか「理解できない」などと言ってもどうしょうもないわけで「キャラクターがそのように動いてしまった」というだけのことである。だからそれを見ている私たちは、それをそのまま受け入れるしかないだろう。
今作はなんだか、気がつかないうちに失われそうになっていたものを思い出させてくれたような感じがした。それがとても大事なものであったってことを、思い出させてくれた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?