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日本未公開の中国映画(ネタバレ注意)

知り合いが「観たい映画があるんだけど」と言うので、探してみることにした。
しかし「日本未公開なんだけど」ではかなり難易度が上がる。

今時日本未公開なんて珍しいと思う。かなりどこの国でも行けるパスポートの国である日本なので、映画のソフトもかなりの数を見ることができる。
なにゆえに未公開なのかが問題だ。

「日本の描かれ方が問題らしい」という。戦争の時の話で日本兵の描かれ方がかなりヒドいらしい。
エロすぎるとか、そういう理由での未公開はほぼなくなって、今ではヘアーならぬ性器らしきもの(作り物だったり)が映っていても、場合によっては修正されないでそのまま公開されたりすることもある(『ボーダー 二つの世界』です)。

「中国映画で内容は南京事件だ」という。これはかなりデリケートな話になる。虐殺はあったなかったの論争の事件で、日本としてはそんなことなかったと言い、中国としては兵士だけでなく市民もたくさん殺されたと言う。
中国での原題のタイトルは『金陵十三釵』で英題は『ザ・フラワーズ・オブ・ウォー/ The Flowers of War』である。

「英語も中国語もわからんので、日本語字幕で見たい」ということであるが、こうなるとDVDレンタルはない。海外の配信にはあっても「あなたの国からは見れません」となる。それに日本語字幕はまず入らない。
観た人のレビューなんか見るとかなり内容はキツいらしくて、日本兵士が少女に暴力をふるうシーンは見てられなかったとか書いてある。

でもお話としては、戦争だけでなくしっかりドラマがあるようだ。
戦争中の南京の話で、修道院に逃げ込んだアメリカ人役はバットマン(ノーラン監督版)のクリスチャン・ベイルだし、遊郭の水商売の女たちが少女たちの隠れている修道院に入って来るなんて、展開がどうなるのか見てみたくなる。

さてタイトルの『金陵十三釵』で検索すると出てきた。Youtubeにあるようだ。
( https://www.youtube.com/watch?v=uwLdh1T5rQo )

でも日本語訳は無理だろうなと開いてみたら、字幕が選べた。歯車みたいなところをクリックして日本語を選んでみた。それでも自動翻訳でよくあるのが、ずっと魔法の呪文みたいな文字が並ぶというケース。期待していなかったがそこそこまともに日本語訳が表示された。しばらく見てるとそれなりにおかしい訳は出てくる。「それを私たちのために見るするのは可能でしょうか」となんかおかしいではあるが、わからなくもないレベルである。
でもこれでもよく見つけたと私は言いたい。映像も粗くないので「かなりキレイに見られる映像」である。私は確認のために作品を見はじめた。

やはり日本兵の行動は極悪非道であった。市民とわかって銃で撃つなんてことは決してやらないようにと、日本でしっかりと指導するべきであったと思う。修道院で少女を見つけた時の「隊長こちらにいいものを見つけましたよ」という獲物を見つけた肉食動物みたいな行動は、ツラすぎて見ていられない。
こんなのが私と同じ日本人とは認めたくないが、でも同じ日本人なので「これがあなたたち日本人の正体なのだ」と言われているような気持ちになる。こんな映像は日本人の99%は見たくないのではなかろうか。「他の国では公開されていて、日本だけ未公開」というのも納得である。

しかし映像もお話もよくできてはいる。日本兵の情け容赦ない行動を見せることで、修道院の少女たちが助かるか助からないかの緊迫感が増すし、無駄に極悪非道な行為を何度も見せるようなこともしない。
モラルのかけらもない末端の部隊がいるが、上層部の日本兵(渡部 篤郎)は「ヒドい行為して申し訳なかった」と修道院のみなに謝罪する。でもこの上層部の日本兵が修道院の少女たちを守ってくれるのは、日本軍の勝利パーティーで唄を歌わせるためであって、会場に行ってもっと上の日本兵の命令があれば、こんな少女たちなんて守ってくれるわけがないのである。きっと小動物のようにズタズタに引き裂かれるのが想像できる。映画としてはちゃんと作られている作品なのかもしれない。

戦争作品で、ナチスドイツの兵隊のヒドい行為を「それでも人間か」とか「そんな行為は許されるはずがない」なんて熱くなって見たりしてたけど、これって自分が同じ国民でないからそう思えたのであって、同じ国の兵隊がやっていたら、私なんかはツラすぎて直視できないのであった。

中国映画史上最高額となる製作費6億元(約78億円)を投じた超大作(wikiより)ということは、中国が自分の国の政治的な思想を植えつけることを目的とするプロパガンダ映画という可能性もある。こうなると、そのまま内容をとらえるのも注意しないといけないかもしれないと、警戒してしまう。

なので「こういう作品こそ日本人が見るべき」なんてことは言えないのである。もう少し描き方を考えてくれないと、ほとんどの日本人はこの作品を見るの無理なんではなかろうか。
日本人が太平洋戦争でどんなことをしたのかは、学校の授業でしっかりやって欲しいほど大事なことであるとは思うのですけれど(海外に出て知らないのは恥ずかしい)。どう教えるかの方針すら決められない状態で止まっているように外からは見えるから。そんなだから、こういう作品が出てくるのかもしれないです。

知り合いは「どういう映画なのか見てみたかった」だけだったのでした。


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