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身体の中の鉄板とかボルトとか(その3)

電話の声は整形外科の看護師さんであった。
「紹介状は書けないとのことです」「手術をする前に患者さんにそのようにお伝えした、ということですので」と事務的に伝えるという感じであった。

他の病院で診てもらえないかと行ってみた病院で「紹介状がないと診察はできません。特に整形外科は紹介状が必要になります」と言われた。なのでどうしたらいいのかわからず、診てもらっていた病院に行って「紹介状を書いてもらえるものですか?」と聞いたのであった。

「どうしてこの病院で診てもらわないのですか」とすごく当然な質問を受付の人にされたのであるが、「全然対応してくれないですし、もう怖いので診てもらいたくないのです」と正直に言った。すると受付の人は「医師に伝えるのは、そのまま言わないといけなくなります」と言うので、「しょうがないのでそのまま伝えてもらっていいです」と答えた。

実際手術前に「手術で中に入れた金属は、取らないかもしれません」とか「中に入れた金属は、取らない方法で手術をします」とは言われた覚えがまったくなかった。
だから診察の時に2度聞いたのに、ここでも「実は中に入れた金属は取らないということで、手術をしたんですよ」とは聞いていない。ここにきてはじめて聞いたので驚きがあって、直後にもう元には戻らないという絶望感があった。

さすがに半泣きの私の声に、看護師は少し引いていて「もう一度医師と話してみます」と言って電話を切った。
私はなんだか、身体の中に金属を埋め込まれたまま縛られて、荒地に投げ出されたような気持ちになっていた。「もう元通りにならないなら、死んでしまった方がましではなかろうか」というところまで気持ちは振り切れてしまっていて、ちょうど車で親のところに行ってたので、帰り道は危なかった。

頭がおかしくなりそうであった。打ち消すにも身体の中に金属は実際にあるわけで、肩をぐるぐると動かすと、中に埋め込まれた金属が現実に盛り上がってきた。


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