言葉で説明しないシナリオと映像で表現する監督によって作られた、言葉では表現しにくい傑作と思います。
ザラついた映像にバービーボーイズの曲(『翔んでみせろ』)がかかると、想定外の化学反応が起きて頭がクラクラする。
脚本の加藤祐司さんの作品は全部で3作(『教祖誕生(1993)』とか)くらいしかない。見えないもの描こうと挑んでいるような感じがして、彼の書いた作品をもっと観たい。
相米慎二監督のこの作品と同じ年に作られた『ラブホテル (1985)』(脚本:石井隆)を夜に部屋を暗くして観ると、水中に沈んでいくようで最高に心地いいです(ロマンポルノ作品です)。
思春期に思う「こんな世界まとめて全部ブッ壊れてしまえばいいのに」という気持ち。「自分をいじめてる奴や、見て見ぬふりするクラスの奴らや、知ってってなにもしない教師が、みんなみんなゾンビになればいいのに」とか強く強く朝方まで願っても、登校すればいつもどおりの日常が続いてく。そんな絶望感があった私には、今作はあまりにも深く突き刺さったのでした。
(2023年6月現在、Amazonプライム・ビデオで観れるようです)