フィンテック はメガバンクの牙城を崩せるか

日経新聞によると、スマホを使って融資や預金などの金融サービスを提供するデジタルバンクが、世界全体で2020年末時点で4年前の4倍の400社と急増しているとのこと。

世の中的には、これらフィンテック とも呼ばれる企業が既存銀行の収益を侵食しているという話しが出ているが、実際には既存銀行を脅かすだけのフィンテック が果たして本当にいるのか少し考察したい。

まず、メガバンクの収益構造は、主に個人向けのリテール部門、法人向けのホールセール部門、海外支店などのグローバル部門、有価証券運用などの市場部門で構成されている。

これら各部門の業務純益、すなわち一般的な企業の営業利益ベースで、各部門のシェアは以下の通り(2020年度三井住友FG決算報告より抜粋)

・リテール:14%
・ホールセール:29%
・グローバル:26%
・市場:29%

すなわち法人向けであるホールセール部門とグローバル部門が全体のおよそ6割を占めている。
したがって、メガバンクの主力事業であるこれら法人向けサービスを侵食するようなフィンテック が現れないとなかなか既存の銀行には敵わない。

それでは、現状フィンテック と呼ばれる企業はどのような企業か。

たとえばマネーフォワード、フリー、ファルスナビなど個人向けが多く、メガバンクの主力事業である法人向けサービスをターゲットにしたフィンテック 企業はいないと言える。

海外では、クラウドファンディング、kabbageやOnDeckなど中小企業向けの融資サービスを展開しているフィンテック 企業もいる。AIを活用した自動審査で最短6分で融資が実行されるなど革新的だ。日本では、中小企業向けのAI融資などは既存銀行自身が取り入れ始めており、フィンテック 企業が展開しているわけではない。

それではどのようなサービスがメガバンクの主力事業である法人向けサービスの牙城を崩すだけの革新的なサービスとなり得るか?

日本では資金需要の乏しい企業が多く、融資以外では販路拡大のため取引先の紹介ニーズが最も高く、ついでに財務内容改善支援、人材育成。そして受けたいサービスはないとする割合も一定程度いる。

すなわち、上記のような経営改善支援、その施策の一つである販路拡大や人材育成などのコンサル的な付加価値を提供し、融資も出すなど経営改善を一気通貫で、よりスピーディーに、より有利な条件で、ユーザビリティの高いサービスを提供することが、既存銀行の牙城を崩す戦略となるのかもしれない。

これらのサービスを本当に実現できるのか?
経営改善とは、簡単に言うと売上をあげてコストを下げることである。売上拡大は、販路拡大など企業情報を活用すれば、自動的に販路の見込み先などは提供できるはず。コスト削減については、会計データを活用すれば何にお金が使われているのかは一目瞭然であり、その費目に対するコスト削減施策は、今やデジタル化などいくつかあるはずである。

したがって、既存銀行の牙城を崩すだけのフィンテック サービスは、これら企業情報のデータ化と会計データの活用できるだけの資本力があれば実現できるはずである。

もちろん言うは易しだが、既存のフィンテック 企業の中で資本力のある企業であれば、十分可能なのではないだろうか。たとえばSBIなどこの手の新規サービスは積極的である。是非ともメガバンクの牙城を崩せるようなフィンテック 企業が出てくることを期待したい。

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