社員のストレス軽減法~平本智章

環境面のストレス対策ではなく、社内の上下関係から生まれるストレスを解消する仕組みづくりを行なっている企業があります。

例えば、京セラグループでは、稲盛和夫名誉会長が創業時代から行なっている「コンパ」制度があります。いわゆる“飲み会”なのですが、京セラの場合は社内でのオフィシャルな飲み会をコンパといいます。

たとえば、決起集会や会議のあとなどに酒を飲んでまじめに仕事の話をします。バブル期以降は社員の懐具合に配慮して、社内に40畳規模の和室を設置し、いつでもコンパが開けるようにしています。

いわゆる「飲みニケーション」との違いは、会社の施設内で公的に上司と直接飲み交わすことで、経営者と社員の目的の共有化を図っている点にあります。

こんな話があります。1984年京セラが通信事業(第二電電)に参入した際、経営方針説明会のあとのコンパの席で、稲盛氏が一つひとつの部ごとの席を回り、こう言いました。「京セラはセラミックが時流に乗ったから話題になったと世間ではいわれている。だが、ここまでこられたのは経営哲学があったからだ。この経営哲学があれば第二電電も絶対に成功する。君たちには歴史の証人になってほしい」。

当時、社員のあいだでは「なぜうまくいっているのに通信などに参入するんだ」という不安感が満ちていました。そんなとき、創業者が差し向かいで考えを話していったわけです。定期的な飲み会が開かれていたからこそ、経営者の考え方が社員に浸透したといえます。こうした取り組みは、「会社がどこに向かっているのかわからない」といった大企業の社員でよく見られるストレスを軽減させる手立てになるでしょう。

ストレスの根本的な原因を見つけ取り除かなければ、結局、局所療法のモグラたたきに終わってしまいます。今後はストレスのたまらない環境づくりが企業の成長を支える大きな要因になりそうです。


平本智章

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