見出し画像

スタッフコラム| 青春時代に出会った本

こんにちは。恵文社スタッフのPです。いつも当店をご利用いただきありがとうございます。恵文社のtwitter、instagram、そしてこちらのnoteではイベントのご案内や商品紹介などお店の情報を発信しておりますが、それらに加えて、スタッフのよりリアルな声をお届けする場として新コンテンツ「スタッフコラム」の連載をスタートいたします。

料理好き、お酒好き、アーティスト、子育てしながら...等々、当店には様々なバックグラウンドを持つ、個性豊かなスタッフたちが在籍しております。店の性格上?かどうかは分かりませんが、何か特定のものへの偏愛が人一倍強い者が多いようです。売り場ではテキパキと仕事をこなしつつ、頭の中では色々なアイデアが目まぐるしく交錯している...時もあります。

「商品を実際に使ってみたら、こうだった」「棚づくりに込めたひそかな拘り」「お店を運営する中での こぼれ話」「紹介した本の別解釈」「最近の庭の植物の感じ」などなどスタッフ目線の記事を綴ってまいりたいと思います。

マガジン「読みもの」をクリックいただくと、コラム全記事が読めるほか、スタッフごとにタグ付けもしておりますので、もし「この人、わたしと趣味が近いかも...」などと思っていただけましたら、ぜひとも応援くださいますと励みになります。のんびりとした更新頻度となるかと思いますが、どうぞお付き合いいただけますと嬉しいです。

---------------------------

<青春時代に出会った本のこと>

本が好きと公言していると、「これまで読んだ中で一番のタイトルは?」とか「最も好きな作家は誰?」と尋ねられることがままあります。最近読んだ印象的な本、再評価されている隠れた名作とかだと答えやすいのですが、一番...となると正に「自分の人生のテーマ」に迫る命題ともいえるので、なかなかに考え込んでしまいます。

ただひとつ確かなのは、新鮮な喜びをもって没頭した10代の頃の読書経験は、自己を形成する核心的な要素になっているということ。少々気恥しくはありますが、筆者の青春時代に出会った大切な本たちをご紹介させていただきます。

画像1

画像3

ルイス・キャロル『不思議な国のアリス』

少女の時にディズニーや名作劇場のアニメーションで出会った童話のうち、私はアリスが一番好きでした。不運な生まれの主人公が苦労の末ハッピーエンドを迎える夢物語よりも、なんだかよくわからない世界に放り込まれて不思議な体験をするけど、実は夢オチ。というアリスの方が、より自分に降りかかる可能性が高いような気がして親近感を持ったのかもしれません。ちなみにサンタクロースの物語を知ったときは、「どうして煙突がないのに家に来るの?」とか「そりが空を飛ぶはずないじゃん」とか親を問い詰めて、クリスマスは絵本だけの空想物なんだと気づいてしまう可愛げのない子供でした...。母親から譲り受けた、年季の入ったジョン・テニエル挿画の単行本が身体に染みついていて好きですが、こちらの写真のものは大人になってから手にしたドゥシャン・カーライの挿画の大型本(絶版です)。

その後、シュヴァンク・マイエルのアリスを観て衝撃を受け、シュールな美術へと傾倒してゆきます。

画像2

P・L・トラヴァース『風にのってきたメアリー・ポピンズ』

もっと小さな子供たちの目線で描かれた不思議の世界として、次に夢中になったのがメアリー・ポピンズでした。空に銀紙の星を取り付けたり、自分の名前(フルネーム!)が書かれた特別な風船を見つけたり、絵皿の世界に入り込んで知らない家族と友達になったり...と様々な夢のような世界を体験します。自分の周りの普通の大人たちと比べて、メアリーは若く美しく知的で有能な乳母だというのにも憧れたし、大人になったら忘れてしまう子ども時代だけの秘密の世界があるというのにワクワクしました。アリスと違うのは、メアリーの魔法の力でどれも実際に起こったことだけど、朝になると「いいえ夢だったのよ」と誤魔化されるところ。

画像4

画像5

小川洋子『密やかな結晶』
恩田陸『麦の海に沈む果実』
村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』
梨木果歩『りかさん』
ポール・ギャリコ『七つの人形の恋物語』

もう少し成長してからも、「現実と隣り合わせで存在する異世界」の物語を好んで読みました。読み返せば今でも、当時の自分の甘酸っぱい憧れや焦燥、自尊心...なんかに再会することのできる思い出深い本たちです。

多感な成長過程で出会ったからこそ、今こうして懐かしく語ることができます。これから世の中に出ていく若い皆さん、将来のことを考えたり、重大な岐路に立つとき、いつか読んだ1冊が手助けになるかもしれません。子育てや教育の現場におられる皆様は、子どもたちにそれぞれの道しるべを与えてあげてください。どうぞ本屋へ!(P)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?