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恵文社一乗寺店 9月の本の話 2024

こんにちは。書籍フロアの韓です。

9月の書籍売上ランキングと、おまけの本の話。
今月もよろしければどうぞお付き合いください。



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1位 オカモトレイコ『星禽 二十八 Chinese ZOOdiac』

動物と人間の関係性について思考をつづけるイラストレーター / デザイナー・オカモトレイコさんの第五作目が今月1位にランクイン。今作のテーマは、占星術にも用いられる中国の伝統的な星座であり、天の領域を示す「二十八宿」。

星座の成立理由とは全く関係なく、星禽(せいきん)と呼ばれる動物シンボルが当てられました。なぜ星座のシンボルとして動物をあてはめたのか、星座と占星術の成立、他国の歴史、日本との関係性や中国の文化を交えながらそのルーツを紐解いていきます。

現代の十二星占いに近い「三世演禽法(さんぜえんきんほう)」で自分の星宿を割り出せる運勢のページや、巻末には星禽の詳細 / 特徴と、星座としての位置や意味について紹介するページも。古来から読み継がれてきた書物を彷彿とさせるようなブックデザインも素晴らしい一冊。


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2位 ギータ・ヴォルフ 文 / トゥシャール・ワイエダ&マユール・ワイエダ 絵
青木恵都 訳『たね』(タムラ堂)

この絵本のテーマは「たね」です。といっても科学的な図鑑ではありません。
生きているのか死んでいるのか分からない一粒のたねが、
ある時、芽を出し、成長をはじめる。その神秘的な力についての考察です。

たねは奇跡です。
豊かな未来への可能性を無限に秘めています
神秘的とも思えるたねとはいったい何なのでしょう。
本書は、たねの力をあますところなく追求した驚くべき絵本です。

ポップアップ形式(「たねとは何か」)、アコーデオン形式(「たねの旅」)、
絵本形式(「たねと女性」)、折りたたみ形式(「たねと宇宙」)の4つの章が
一冊の本の中に綴じ込まれた、画期的な造本とデザイン。
シルクスクリーン印刷によるハンドメイドの素朴な味わい。
先住民族のワルリ画アーティスト、ワイエダ兄弟による緻密で美しい絵。
このような本がこれまであったでしょうか。
本書は、まさに私たちの新しい未来へ向けたメッセージと言えるでしょう。

(出版社より)

『夜の木』や『世界のはじまり』など美しいハンドメイド絵本で知られる南インドの小さな出版社、Tarabooks(タラ・ブックス)による新刊『Seed』の日本語版が今月2位にランクイン。


インドの小さな工房で、手漉きの紙にシルクスクリーンで印刷され、製本も全て手作業で行われています。シリアルナンバー入り。



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3位 小原晩『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』

まだまだ勢い衰えず。作家・歌人として活躍の場を広げる小原晩(おばらばん)さんによる初のエッセイ集が今月3位に。

東京での生活を20編、関西に来てからの日々のことを3編収録。社会人一年目の夏、仕事をサボり食べた唐揚げ弁当のこと、亡くなった父と最後に食べた回転寿司、眠れない夜を少し明るくしてくれるおまじない、愛してやまない喫茶店で頬張るシナモントースト、目も眩んでしまうような恋のこと、女三人で始めた同居生活のこと…。自由で、まるで映画の短編集のようでもあり、ときどき足が止まってしまうけれど、それでも続いていく日々を愛したくなるようなエピソードが続きます。

本書ですが、11月にいよいよ商業出版化されるそう。続報をどうぞお楽しみに。



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4位 『月のうた』(左右社)

見上げたらすごい満月だったみたいにいま気づいてるわたしの答え

伊藤紺

試されることの多くて冬の街 月よりうすいチョコレート噛む

鯨井可菜子

あかるくて冷たい月の裏側よ冷蔵庫でも苺は腐る

平岡直子

どのページを開いてもあらわれる、どこかの誰かがみている、わたしの記憶にだけのこる「月」。あかるい月、遠い月、儚げな月、こわい月、やさしい月…。100名の歌人による月のうたを収録した短歌アンソロジーが今月4位に。月面を彷彿とさせる紙クロス、箔押しとインク印刷を組み合わせた装丁は前作『海のうた』につづき、脇田あすかさんによるもの。


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5位 『生 = 創 × 稼 × 暮』

「あなたが生きるとき、創ること・稼ぐこと・暮らすことのバランスをどのように保っていますか。」

他者と比べず、自分ひとりの歩き方を探ること。自分が何者であるのかさまざまな角度から見つめ直すこと。四つ葉クローバーアーティスト、製パン店主、詩人、文筆家、花屋、書店員など19名のつくり手による、問いとその答えをおさめた回答集が5位にランクイン。生きる、生活を営むうえで見失ってしまいがちな些細なヒントをたっぷりとおさめます。

北海道森町を拠点に活動を行うひとり出版社「かくれんぼパブリッシング」より。



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今回のおまけ話。

絵本コーナーに面陳で並んでいて「あれは…」と目があった一冊。当店スタッフ・原口が仕入れたという『くもの巣とり』のご紹介です。

学校にこっそりと住みついている、あんないきものやこんないきもの。その中でも今回主人公となるのは「くもの巣とり」と呼ばれる痩せ気味の大男。彼の仕事は、学校中につくられた蜘蛛の巣を夜な夜な取り除くこと。なんですが、ただ巣を払うだけでなく、部屋に巣をつくってしまった蜘蛛に対しての気遣いもすばらしいんです。

「やあ、ちびぐもさん、ちっちゃなくもの巣をつくりましたね。
でも、ここにくもの巣をつくるとこまるんですよ。だって、そうでしょう。
ここは校長先生のへやで、おきゃくさんもいらっしゃいます。
そのおきゃくさんが、てんじょうにはっているくもの巣を見たら、この校長先生は、へやをきちんとおそうじしてもらっていないとおもうでしょう。」

「ちびぐもさん、この校長先生のへやには、あまり虫がとんでこないよ。
だからそら、そこの窓のそとにあるかえでの木にでも巣をはりかえてごらん。きっとたくさんの虫がつかまるから。」

ときにはさみしがりな蜘蛛にも出会います。外の庭に放したはずが、また教室に巣をつくっていて…。事情を聞いたくもの巣とりは、とあるメッセージを黒板に残すのです。

どんなメッセージを残したかは読んでからのお楽しみ。

そうして夜の学校を回ってたくさんの蜘蛛の巣を払い、ときには悩み相談にまで乗り…。平和がおとずれた学校で、くもの巣とりはそのまま校長先生の部屋にある大きな戸だなへ戻り、眠りにつくのでした。

どこかふしぎな妖気といいますか、妙に惹きつけられる穏やかさと愛らしさが漂います。うちにも来てくれないものか…と思ってしまうのは余談。蜘蛛の巣って、一晩のうちに立派なものができていたりしますよね。(調べると、わずか30分〜1時間でよく見る円形の巣が作られるらしいですよ)
眠る前、枕元でくすくす笑いながら読むのも良さそうな絵本のご紹介でした。


それでは、来月の話もどうぞお楽しみに。



(担当:韓)


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