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【種牡馬四季報】JRA 2024年スタートダッシュと新種牡馬解説

競馬オタク・坂上明大が
四半期ごとに国内外の種牡馬事情を解説していきます。


~リーディングサイアー~

昨年総合4位のキズナが順調に賞金を積み上げて、暫定リーディングサイアーの座に就いている。特に3歳世代が一線級での活躍を見せており、スプリングSのシックスペンス、共同通信杯のジャスティンミラノ、クイーンCのクイーンズウォークと3頭が重賞勝ち。そして、集計期間後の皐月賞ではジャスティンミラノがキズナ産駒の牡馬として初のGⅠ制覇を果たし、さらに賞金を積み上げる形となった。現3歳世代は初年度産駒が2歳時に勝ち星を量産した直後に付けられた世代で、繁殖牝馬の質が上がったのが好調の一因だろう。ただ、4歳世代もコンクシェルが中山牝馬Sを勝っているほか、サヴォーナが日経新春杯で2着、アサカラキングが阪急杯で2着と健闘。また、5歳世代のパラレルヴィジョンもダービー卿CTを制しており、多路線での堅実な活躍はキズナ産駒の大きな強みだろう。

昨年総合2位のロードカナロアはキズナにリードを許すも2位を堅持。根岸Sをエンペラーワケアが制したほか、クロミナンスが日経賞で2着、ベラジオオペラが京都記念で2着に好走している。さらに、集計期間後にはべラジオオペラが大阪杯を制し、首位キズナとのデッドヒートを繰り広げている。今年は最優良後継種牡馬サートゥルナーリアの初年度産駒のデビューが控えており、今後の種牡馬リーディングがどう変動するのかが興味深いところだ。

3位は昨年総合9位のエピファネイア。こちらも同期キズナと同様に3歳世代が重賞で活躍しており、フェアリーSをイフェイオンが、京成杯をダノンデサイルが、きさらぎ賞をビザンチンドリームが制している。また、古馬では日経新春杯をブローザホーンが、小倉大賞典をエピファニーが制しており、勝ち上がり率に対して重賞勝利数が多いこともデビュー初期から変わっていない産駒傾向だ。

4位は昨年のリーディングサイアードゥラメンテ。シルクロードSのルガル、フラワーCのミアネーロが重賞を勝っており、昨年の菊花賞馬ドゥレッツァも始動戦の金鯱賞で2着と好走した。ドゥラメンテ産駒は今年の2歳がラストクロップで、昨年や一昨年のセレクトセールでは高額で産駒の争奪戦が行われていただけに、高額取引馬の活躍に期待したいところ。

5位には昨年総合11位のドレフォンがランクイン。昨年のダート部門で2位につけているようにダートが主戦場であることは間違いないが、阪神大賞典2着のワープスピード、きさらぎ賞2着のウォーターリヒト、フェアリーS2着のマスクオールウィンなど芝重賞でも6度馬券に絡んでおり、今年は芝の上級条件での活躍が目立っている。

2010年代の日本競馬を牽引してきたディープインパクトキングカメハメハは7位、9位。産駒の現役馬は減ってきたが、ディープインパクト産駒からは京都記念のプラダリア、金鯱賞のプログノーシス、キングカメハメハ産駒からはフェブラリーSのペプチドナイル、日経賞のシュトルーヴェなどが活躍している。

昨年ランク外からトップ20入りしたのは18位ミッキーアイル、20位マジェスティックウォリアーの2頭のみ。GⅠシーズンに入るとランキングにも大きな変動がありそうだが、今のところ新興勢力の台頭は見られない。

~芝・リーディングサイアー~

JRA暫定リーディング首位のキズナが芝部門でも1位を獲得。昨年は芝が6位、ダートが5位とダートの方が順位が高かったが、現時点では芝が1位、ダートが10位と芝での活躍が目立っている。特に前述の通り3歳世代の活躍は素晴らしく、今年は昨年以上に芝での活躍が見られそうだ。

ロードカナロアは昨年の4位から2つ順位を上げて暫定2位につけている。2~3勝クラスの条件戦を中心に堅調に賞金を稼いでおり、集計期間後にはべラジオオペラが大阪杯を制した。

3位エピファネイアは昨年9位から順位を大きく上げての好調ぶり。総合リーディングの項でも書いた通り3歳世代の活躍が目立ち、2024年の賞金シェアの41.7%を3歳馬が占めている。

4位ディープインパクトは昨年2位から順位を2つ落としてこの位置に。かつてこのカテゴリで一強を誇ったディープインパクトも、ラストクロップの4歳が期間内に僅か4頭が4走したのみでは賞金の稼ぎようがない。とはいえ、5歳は期間内に2億5358万円(7勝)を、6歳は1億4304万円(2勝)を稼いでおり、まだまだ日本の芝競馬では大きな影響力を持つ大種牡馬だ。

5位ハーツクライも昨年の4位からランクを1つ落とす形。ラストクロップの3歳世代に重賞連対馬が出ていないのが残念だが、古馬路線では6歳のチャックネイトがAJCCを、4歳のソーダズリングが京都牝馬Sを制しており、晩成種牡馬らしい息の長い活躍を見せている。

ほかのリーディング上位馬ではゴールドシップが昨年11位から順位を3つ上げて8位にランクイン。ゴールドシップ産駒は産駒全体の収得賞金ランキング上位6頭がすべて牝馬という牝馬偏重のフィリーサイアーだが、今年の3歳世代は毎日杯をメイショウタバルが制すなど牡馬の活躍馬も少しずつ出てきているようだ。

外国産種牡馬では10位にハービンジャーが、15位にDark Angelがランクイン。Dark AngelはLethal Force(2013年ダイヤモンドジュビリーS、ジュライC)、Harry Angel(2017年ジュライC、スプリントC)、Battaash(2017年アベイドロンシャン賞、2019、20年ナンソープS、2020年キングズスタンドS)という3頭の欧州最優秀スプリンターを輩出するなどヨーローパの短距離種牡馬として成功を収めたトライマイベスト系種牡馬で、高松宮記念を制したマッドクールは日本での初のGⅠ馬になる。マッドクールは血統構成も非常に良く、引退後も種牡馬として楽しみな良血馬だ。

~ダート・リーディングサイアー~

僅差ではあるが、昨年2位のドレフォンが順位を1つ上げてダート部門の暫定王者となっている。好調ぶりが目立つのが2世代目の4歳世代で、期間内に52走して12勝、勝率23.1%という素晴らしい成績を残している。集計期間内にはJRAでのダート重賞が4つしかないため重賞タイトルは手にしていないが、サンライズフレイムの根岸S3着など堅実な活躍を見せている。

昨年1位のヘニーヒューズは現在2位。フェブラリーS3着のセキフウが代表産駒だ。現21歳で産駒数も減ってきているため、今後は徐々に順位を下げそうか。ただ、後継種牡馬アジアエクスプレスが14位にランクインし、新種牡馬モーニンも昨年のNAR2歳リーディングで首位を獲得。後継種牡馬がしっかりと実績を積んできているため、ヘニーヒューズ父系は今後も繋がっていきそうか。

3位ロードカナロアは昨年の4位から順位を1つ上げ、4位シニスターミニスターと入れ替わる形に。ロードカナロア産駒では3連勝で根岸Sを制したエンペラーワケアが代表馬。シニスターミニスターは代表産駒の1頭であるドライスタウトの左前繋部浅屈腱炎による長期離脱が痛いところだ。

父系別では上位10頭中4頭がKingmambo系、Storm Cat系とA.P. Indy系とサンデーサイレンス系が2頭ずつ。上位20頭でも18頭が上記4系統で、この4つが現在の日本のダート主流系統といえそうだ。

~新種牡馬 日本➀~

・ルヴァンスレーヴ
全日本2歳優駿、ジャパンダートダービー、マイルCS南部杯、チャンピオンズCとダートGIを4勝し、2018年には最優秀ダートホースに輝いたシンボリクリスエス直仔。いとこにJBCクラシック、川崎記念連覇、チャンピオンズCのチュウワウィザードなどがいるオータムブリーズ牝系に属する。Northern Dancerの血を6代目に1本しか持たない配合形は大きな魅力で、サンデーサイレンスの血が3代目であることからも、繁殖牝馬を選ばないダート中距離種牡馬として期待の一頭だ。

画像元:TARGET frontier JV

・サートゥルナーリア
ホープフルSと皐月賞のGI2勝、有馬記念でも2着がある超良血馬。母シーザリオは現役時代にオークスとアメリカンオークスを制した名牝で、繁殖牝馬としてもエピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアという3頭のGI馬を出している。兄2頭が種牡馬としても成功しているため、本馬にもロードカナロアの最有力後継種牡馬として大きな期待がかかる。本馬自身は父母父にStorm Catが入る分、3/4同血の兄リオンディーズよりも瞬発力に優れた馬だったが、その分繁殖牝馬によってはダート適性が強まる仕掛けにも繋がりかねない。リオンディーズと同じくNorthern Dancerの血を抑えつつ、Mill ReefやRiverman、Sir Ivorなどで芝中距離向きの柔軟性を強化したいところだ。

画像元:TARGET frontier JV

・ゴールドドリーム
フェブラリーS、チャンピオンズC、かしわ記念連覇、帝王賞とダートGIを5勝し、2017年には最優秀ダートホースにも輝いたゴールドアリュール直仔。2歳から7歳まで大きな怪我もなく走り続け、5代母Specialに遡る良血馬でもある。ダートの名種牡馬ゴールドアリュールは後継種牡馬が確立していないだけに、良血である本馬とクリソベリルには大きな期待がかかっているだろう。現役時代にはダートの1600mから2000mで活躍。母父フレンチデピュティの影響が強く、産駒もダートのマイル前後が主戦場となりそうだ。

画像元:TARGET frontier JV

・モズアスコット
安田記念とフェブラリーSという芝とダートのマイルGIを制した二刀流のFrankel直仔。イギリス産の父とアメリカ産の母という欧米混血馬で、種牡馬としても組み合わせる繁殖牝馬次第で芝馬もダート馬も出せる万能種牡馬だろう。距離はマイル以下が主戦場か。

画像元:TARGET frontier JV

・ナダル
2020年アーカンソーダービーを制したアメリカ産の輸入種牡馬。父はシンボリクリスエスと同じRoberto→Kris S.の父系に属するBlameで、父の母母はNureyevの3/4同血Bound。また、母父PulpitはTapitの父として有名で、日本ではパイロがダートのGⅠ馬を複数頭輩出している。父と母父が優秀で、日本の繁殖牝馬との組み合わせも良さそう。雄大な馬格を誇り、小柄な繁殖牝馬の種付け相手として馬産地では重宝されているようだ。骨太の大型馬が多く、ダート戦が主戦場だろう。

画像元:TARGET frontier JV

・タワーオブロンドン
2019年スプリンターズSを制したRaven's Pass直仔。近親に英愛ダービー馬ジェネラスや皐月賞馬ディーマジェスティなど活躍馬多数のDoff the Derby牝系に属する。北米で勢いがあるElusive Quality父系だが、父Raven's PassはクイーンエリザベスⅡ世Sも制した芝ダート兼用馬で、Dalakhani×Sadler's Wellsの母との組み合わせから本馬自身は芝のマイル~中距離向きの配合形。芝短距離で2度のレコードタイムを記録していることから長距離馬を出す可能性は低そうだが、母との組み合わせ次第ではマイル~中距離の活躍馬が出ても不思議ではないだろう。

画像元:TARGET frontier JV

≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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