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【GⅠ血統史】2024年大阪杯はロードカナロア産駒ベラジオオペラが優勝!

画像元:TARGET frontier JV

2017年にGⅡからGⅠへ格上げされた大阪杯。GⅠ昇格後8回目となる2024年はロードカナロア産駒のベラジオオペラが混戦を制した。1957年に「大阪盃競走」の名称で創設された本レースだが、Mr. Prospector父系の勝利は史上初である。

ロードカナロアは2012、13年スプリンターズS、香港スプリント連覇の偉業を成し遂げた最強スプリンター。その卓越したスピードは短距離5勝の母レディブラッサムから受け継いだものであり、さらにはその父Storm Catに由来する。安田隆行厩舎流のトレーニングの助けもあっただろうが、デビュー前からトモのボリュームは群を抜いていた。また、母が持つSecretariat=Syrian Seaの3×4全きょうだいクロスに由来する柔軟性も大きな特徴で、安田記念での末脚勝負にも制したことは競走馬としての幅の広さを証明する走りでもあった。産駒の息の長い活躍や距離適性の幅の広さはこの柔軟性があってこそで、ダノンスマッシュ(2020年香港スプリント、2021年高松宮記念)からアーモンドアイ(2018年桜花賞、オークス、秋華賞、2018、20年ジャパンC、2019年ドバイターフ、2019、20年天皇賞秋、2020年ヴィクトリアマイル)まで幅広いカテゴリーの一流馬を輩出している。

母の父ハービンジャーはその父Dansili譲りの素軽いフットワークが持ち味。ただ、トモや繋が緩いため短距離適性は低く、顔の大きさや筋肉量から超長距離適性が高いとも言えない。したがって、芝2000m前後で息の長い末脚を生かす競馬がベストで、阪神芝2000mはその持ち味を生かしやすい舞台のひとつだ。また、ハービンジャー自身のデビュー戦は3歳4月と遅く、頭角を現したのは4歳になってから。産駒が挙げたGⅠ8勝もすべて3歳11月以降のもので、成長スピードは晩成傾向といえるだろう。

牝系はアイドリームドアドリームに遡る一族。エアシャカール(2000年皐月賞、菊花賞)、エアメサイア(2005年秋華賞)がGⅠ制覇を果たしており、3代母エアデジャヴーも1998年クイーンSを制すほか牝馬三冠でも③②③着と堅実な走りを見せている。べラジオオペラはロードカナロア×ハービンジャーというこれまでの大阪杯勝ち馬とは少々異なる配合形だが、日本の主流適性抜群の牝系の支えがあってこそのGⅠ制覇だったといえるだろうか。

画像元:TARGET frontier JV

2着馬ローシャムパークとはキングカメハメハ、ハービンジャー、サンデーサイレンス、ノーザンテーストなどが共通。序盤のレース運びこそ違ったが、血統面も含めてなかなか見どころのある叩き合いだった。


≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」、「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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